異世界転々忍法戦記   作:濁酒三十六

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凶襲予兆

 尋問を終え、弦之介と朧はそのまま部屋で軟禁となった。二人には申し訳ない気持ちだがレベリス王国、パレッティア王国との冒険者サミットに向けた準備がある。カイルはダミアンとサミットに向けた資料作成に追われる事になり、そして鬼門衆の襲撃を想定した防衛と聖女護衛も考えなくてはならない。

 カイルからも今回の件で聖を連れて来た本当の理由はアルベルトと共に聞かされていた。王都に来賓としている

 ソルシエ王国公爵令嬢カタリナ・クラエスを巻き込む危険を少なくする為である。彼女の護衛には聖とは違った形で異世界転移をした過去の時代の忍者である牙神獣兵衛を付けていた。

 彼は敵である謎の忍者集団…鬼門衆と転移する以前から強い因縁を持ち、その実力も敵の忍者を一撃で屠るものであった。性格は武骨ではあるが人情に熱い人物で身柄は国王責任によるもの…言ってしまえばスランタニアの客将扱いとなっていた。

 

「そうか。しかしオボロと言う娘は分からないがゲンノスケなる者は傭兵団団長の話ではかなり腕が立つらしい。」

「…弦之介さんに戦ってもらうん…ですか?」

 

 聖としてはあまり良い話ではない。鬼門衆の力は王都…アシュレイ邸襲撃の際に直に戦い知っていた。蜂を操り多くの命を奪った鬼門八人衆の一人…蟲蔵。獣兵衛の話では転移以前に戦い首を斬り落としたと言っていたが彼は生きてスランタニアを襲い聖を連れ去ろうとした。目的は聖女で手段を選ばず人の命を何とも思っていない。

 あの時聖の魔力に当てられ宿主である蟲蔵と蜂との繋がりが切れなければ彼女は連れ去られ、アシュレイ邸にいた者からは多くの犠牲が出ていただろう。此処には蟲蔵を倒した獣兵衛はいない。スランタニアの第三騎士団、クラウスナー傭兵団の強さは知っているが忍者の強さがあまりにも異質だと聖には感じた。鬼門衆の蟲蔵に至っては魔力が一切感じられなかったのである。

 

「アシュレイ邸を襲った集団は確かに強かった。しかしジュウベイキバガミも恐ろしい手練れであった。もしかすればあのゲンノスケも…。」

「でも、彼等に私の件は関係ありません。それに彼に何かあれば朧さんが悲しみます!」

「…セイ、誰かが傷つき悲しむのは騎士団傭兵団、私達も同じだ。もし君が私の前から消えてしまったら…私は悲しいよ。」

 

 傍らにいたアルベルトに諭されると聖は自身の周りへ配慮のなかった言葉を後悔する。騎士団傭兵団にも守るべき愛する人がいるのだから…、そして聖もまた、アルベルトには傷ついて欲しくはない。

 

「ゲンノスケとオボロには既に協力の了承を貰っているが、レベリス、パレッティア両国の冒険者ギルドは後数日でクラウスナー領に到着する。せめてジュウベイの勘が外れる事を祈りたい。」

 

 カイルは資料に目を通しながらそう愚痴る。聖とアルベルトもそう願いたいが、鬼門衆の非情な戦術を思考すると毒には毒、忍者には忍者と考えるのが妥当なのかも知れない。運が良いのかスランタニア、クラウスナーに忍者の異世界転移者がまるで用意された(・・・・・・・・)かの様にいてくれている。

 二度目の鬼門衆との衝突はクラウスナー領にいる内にあると覚悟を決めるべきなのであろう。

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