異世界転々忍法戦記   作:濁酒三十六

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機獣凶襲!

 弦之介と朧が軟禁されている部屋はとても静かで朧は疲れたのか元々部屋にあったベッドで寝てしまっていた。弦之介は椅子をベッド脇に置いて座り、朧の寝顔を覗き込む。凛々しいその顔は朧と同じ安心して心身休まったかの様な少し緩んだ笑顔であった。

 

(日本で朧殿と自刃(・・)し、最期を迎えたかと思えば異国…否、異世界に流されて再び目を覚ますとはな…。だが…)

 

 弦之介は思いふける中、ドアの外から“コン、ココン、コン。”…と奇妙なノック音がした。弦之介はドア越しに手をあて、小さな声で「甲賀。」と呟くと向こう側から「卍。」と返ってきた。

 

「“蛍火”より連絡、“鬼門衆集結”との事。恐らく今夜、城を襲撃してきまする。」

「分かった。なれば出陣致す。…朧殿を頼む。」

「御意。」

 

 すると部屋の中の弦之介の気配が消え、廊下から一人の弦之介と同じ衣装を着た兵士が入って来て兜を脱ぐ。短い髷に美形だが細い狐目にのっぺりした顔…甲賀卍衆の一人如月左衛門、何と髪が長くなりその顔を弦之介と変わらぬ顔に変えた。

 

(既に城内には敵が忍び込んでいる筈、蛍火も伏兵を忍ばせたとは言っていたが…。)

 

 彼が朧を護衛しているのは蛍火も知っている以上は裏切る事はない筈だが、彼女は左衛門を心底憎んでいる。左衛門もまた彼女を心から信頼するのは出来ずにいた。

 そして深夜、クラウスナー城の周辺はレオンハルトを団長とした傭兵団とスランタニア第一第三騎士団が蟻の子も通さない護りを固めていた。傭兵団団長のレオンハルトは城門上より前方を見据え、 敵の有無を確認する。

 

「今日もいい夜であってくれよ。…ん?」

 

 ふと、少し遠目に幾つかの火が灯ったかと思えば6つの円筒管の様な物が尻から火を噴いて此方に飛んで来た。

 

「マジか、敵襲!!」

 

 レオンハルトが叫び、部下が鐘を思い切り木槌で叩き警報を鳴らした。騎士と傭兵達は城門に集まるが飛んで来た円筒管は城門と周辺に命中し、大爆発。その爆発に巻き込まれて十人近くの騎士傭兵が吹き飛んだ。城壁も凄まじい爆風と衝撃で砕け飛び破片が凶器となって傭兵騎士達に降り注ぎ、クラウスナー城門は阿鼻叫喚で包まれた。

 破壊された城門上より軽傷ながらも大剣を持ち上げ急ぎ降りてきたレオンハルトは城門前の惨状に息を呑む。数名の騎士と部下の傭兵が手足を失い、それ以上に損壊が激しい死体もあった。

 

「何だ今のは…、魔法で飛ばした爆弾か!?」

 

 爆発する円筒管で予想外の被害を受け困惑するレオンハルトだがドスドスドスと思い何かが走る音が聞こえるが辺りは転がる死体と爆煙と爆発で発生した火以外に視界に入らず、彼は何度も首を振り周囲を見渡す。走る音が間近で止まりレオンハルトは神経をギリギリまで研ぎ澄ますが、足音の主は彼の真ん前に姿を現した。

 まるで透明になっていたのか、姿を現したソレは六足に真っ直ぐで穴の開いた牙を持ち背の高い彼より2倍近く高く全長は尾も含めれば更に大きかった。

 

「何だコイツ、鉄で出来た魔物か?アイアンゴーレム!?」

 

 魔物…と呼ぶには余りに無機物的で敵意があるのかすら解らないが、先程の攻撃がこの魔物?によるものなら倒すだけである。 レオンハルトは近くにいた動ける部下に生きている負傷者を城内に運ぶ様指示を出し、城門の前に立ちはだかり、鉄の魔獣に大剣をかざした。

 

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