レオンハルトが鉄の魔物の左脇に回り込み大きく大剣を力一杯に振り下ろす。だが鉄の魔物の左中脚が上がりその大剣を止めた。
「ちっ!」とレオンハルトは舌打ちして後ろへ退き間合いを取るが魔物が頭を彼に向け四本の穴の開いた直牙から激しい音を立て弓矢よりも速い弾丸を何十発と撃ち出す。四連装機関銃である。即座に回避する彼だが数発を腹部と右股を撃ち抜かれて倒れ、大剣からも手を放してしまう。
「ぐあっ!?」
レオンハルトはその場に動けなくなり、鉄の魔物は身体をレオンハルトに向け、“センサー”が彼をロックオン、機関銃の“銃口”を捉えた。
レオンハルトは死を覚悟したその時、複数の声が『ファイアーボール!!』と唱えた声が響いて何発もの火球が鉄の魔物に命中した。騎士団に同行していた宮廷魔導師達である。その内に部下の傭兵がレオンハルトにポーションを飲ませる。
「大丈夫ですか団長!?」
「ふう、危なかった。ありがとよ、お前が魔導師を連れて来てくれなきゃ死んでたぜ!」
レオンハルトは部下に礼を言って大剣を拾うと大声で魔導師達に指示を出す。
「魔導師、グランドランスだあっ!!」
すると宮廷魔導師達は即座に反応、一斉に『グランドランスッ!!』と詠唱し、魔導師達の足元から鉄の魔物に向かって無数の岩石突角が列を成して突き進み、魔物の装甲を突き破り、串刺しにしただけでなく突角の槍衾に持ち上げられ閉じ込めた。
「やった、魔物を倒したぞ!」
一人が勝鬨を上げて周囲が揃って鬨を上げた。レオンハルトも笑みがこぼした次の瞬間、魔導師数名の首が夜闇に舞った。レオンハルトの笑みが消え、首が宙を舞う暗がりから十名以上の忍者が雪崩れ込んだ。紺の忍装束…アシュレイ邸を襲った鬼門衆である。
再び城門は阿鼻叫喚が溢れてレオンハルトが叫ぶ。
「魔導師は後方で援護、後は個々で応戦だ!」
すると動けない鉄の魔物が首をもたげて四連装機関銃を乱射、騎士傭兵…鬼門衆まで巻き込んで城門扉を破壊し動かなくなった。
更に鬼門衆が増えて騎士傭兵を素早く斬り抜けて扉を壊された城門へと侵入しようとするがレオンハルトが大剣を横薙ぎ、五人を斬り伏せる。だが数人が彼を飛び越えて侵入を許してしまった。
「クソオッ!!」
レオンハルトが鬼門衆を追いかけようとすると城門内側から人影が現れ七人の鬼門衆がその影に襲い掛かる。そしてレオンハルトは驚愕した。何と目の前で七人の鬼門衆が自ら首に、左胸に、お互いにと自刃同士討ちをして果てた。その屍を跨ぎ影が姿を見せる。
「お前、ゲンノスケ…?」
城門より現れたのはゲンノスケ…甲賀弦之介であった。彼は足元に落ちていた鬼門衆の忍者刀を拾いレオンハルトの横を駆け抜けて二人を斬り伏せる。
「レオンハルト殿、此処は拙者に任されたし。貴殿は侍衆の指揮をお願い申す。」
「サムライ?…あぁ、分かった。」
弦之介はレオンハルトに仲間への指示を任せ、二度鬼門衆と向き合う。既に十数人が集まり弦之介と睨み合い刀を構えた。
ふと弦之介はこの人数に刀を下ろして相手を誘い、その機を逃すまいと鬼門衆は前衛数人が斬り掛かり、後衛が手裏剣を放った。しかし襲い来る鬼門衆の斬撃と手裏剣を避けながら前衛を瞬時に斬り倒し、後衛が刀を抜くと弦之介は鬼門衆を視界に入れ凄まじい眼力を込めた。
鬼門衆達は金縛りでも掛かった様に動けず、ある者は首に刀を突き立て…ある者は味方を斬りつけ、そしてある者は刀で腹を裂いて切腹した。向けられた殺意をそのまま跳ね返し、敵を自滅に導く彼の忍術・瞳術である。
あまりにも異様過ぎる光景にレオンハルトは息を呑む。
「…只者じゃねえとは思ってたが、魔導師だったとはな。」
「いや、拙者は忍…、忍者にてござった。この世界では暗殺者…アサシンの類でござる。」
少しレオンの顔は見ずに下を向く弦之介。そんな彼にレオンハルトは満面な笑みを見せて大声で感謝を叫ぶ。
「お前が何であろうが、助けられた事には変わんねえ。ありがとうよっ!!
城門は俺達に任せろ、お前は遊撃で仲間を助けてやってくれ!」
「引き受けた。」
弦之介は頷き、疾風の如く次の戰場へ駆け抜けた。