異世界転々忍法戦記   作:濁酒三十六

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狂者凶襲!!

 城門壁より東北側の城壁上に城門と同じ様に騎士と城兵達の死体が彼方此方に転がっていた。違う所があるなら全ての死体の損傷が蛇に噛み跡だけであり、その猛毒により死んでいた。

 その死体を踏み躙りながらケバい柄をした着物を肩をはだけわざと乱れた着こなしをした蛇に似た背の高い美女がその整った顔を醜く歪め、履物を履かない素足の踵で何度も容赦なく踏みつけてなじる。

 

「何故じゃあ、なぜ蟲蔵の(むし)が私の蛇達に群がる!?なぜ私の計り事がバレている!?」

 

 遊女の様な姿の女は鬼門八人衆の紅里である。彼女の策は城に忍ばせた蛇による城内の制圧、下忍による逃亡阻止と城外制圧、謎の魔物による城門制圧、後に聖女を強奪。…の筈が雀蜂の群れが同じ様に城内に潜み、蛇が行動したと同時に蛇の群れを抑え込んだ事で策は破綻。それのみならずスランタニア騎士団、クラウスナー傭兵団を舐めていた結果、魔物は破壊され甲賀弦之介たった一人の参戦で下忍衆は敵わず制圧中。完全な敗北…作戦は失敗であった。

 

(それに何故胤舜(・・)は動いてくれない、“好きな時”にとは言うたが全く出て来ないのはおかしい!

…私を裏切った?)

 

 …と、少し離れた先にぼんやりと薄紫に光る何かが現れて紅里は冷や汗を垂らして警戒して構える。

 

「蛇の群れを操るなんて…、なかなかやるね。…でも死んだ仲間がかつて操った蜂が敵になるなんて思いもしなかったろう、鬼門衆。」

 

 ぼんやり光るのは虫…蛾の群の鱗粉でその蛾が散らばるとその中から紫色の忍装束を着たくノ一が姿を現した。前髪は切り揃え、長い黒髪はストレートのセミロングで揃えたまだ幼さを残す美少女。伊賀鍔隠れ衆のくノ一、蛍火。

 この異世界で陰ながら伊賀鍔隠れ衆の姫である朧を見守る為、不本意ながらも弦之介の下で鬼門衆を見張り、雀蜂の群れを城に忍ばせていたのである。

 

「何故お前の様な小娘が蟲蔵の(むし)を操れる!?」

(ババア)。」

「バッ!?」

 

 蛍火は勝ち誇った様に嗤い紅里に語ると彼女の袂から白い蛇が出て来て紅里を威嚇、紅里は不意を突かれて驚き憤る。

 

女王(・・)が教えてくれた。死んだ鬼門衆蟲蔵は禿の餓鬼爺らしいではないか、醜い爺より話の解るうら若い同じ女の方が良いに決まっているであろう!」

 

 煽る蛍火に紅里は怒りのあまり表情が蛇から般若の如く歪む。

 

「つまり私は餓鬼爺と同じ醜い(ババア)…と言いたいのか!?」

 

 すると蛍火も可愛らしい顔を歪ませて大声で笑い出しました。

 

「アッハッハッハッハッ!!…鏡があるなら今の自分の顔を映してみなよ。まるで鬼女の如く醜いから!」

 

 瞬間、紅里が飛び出して蛍火に掴み掛かる。蛍火の腕を掴み、乱れた着こなしの着物の隙間と言う隙間から蛇が飛び出し、口からも一匹、そして陰経からも蛇が現れて蛍火を襲う。しかし紅里の手には握り潰した蛾と光る鱗粉。蛍火の姿は蛾の群れとなり散って代わりにその群れに隠れていた雀蜂の群れが蛇と紅里を包み込む。

 

「ギヤアアアアアアアアアアアアアッ!!!!!!」

 

 雀蜂に囲まれ、身体中を神経毒の針に刺され、そして強靭な顎で噛み千切られ、際まで追い詰められそのまま着物に忍ばせた蛇達と共に下へと墜落した。本物の蛍火は蛾の鱗粉による幻影の後ろで喋り、紅里を煽り散らしていた。

 

「はぁ、まるで甲賀者(如月左衛門)の様な卑劣な戦い方だ…。」

 

 今の自身の戦略に過去の自身の末路を思い出し、自問自答して神妙な顔付きになるが、真の主が心配になり城内へと戻った。

 城壁周辺は弦之介の遊撃により鬼門衆の下忍は彼の瞳術によって六十人いた精鋭は半分以下まで減らされていた。…だが此処まで来て弦之介の前にあり得ない強敵が立ち塞がっていた。手に持つ三股の槍を逆手に自分の腹に突き立て裂き開いていた。しかしその髭面は狂気に満ちた笑みを刻み、飛び出た臓腑が腹の中に戻り、裂かれた傷口が塞がっていく。その光景を見せつけられ弦之介はこの敵に瞳術が通じない事を悟る。

 

(致命傷からの再生、まるで薬師寺天膳(・・・・・)だな。)

 

 薬師寺天膳、伊賀鍔隠れ衆にして長であった老婆…伊賀のお幻の片腕であり伊賀忍者甲賀忍者の対立が続く様暗躍していた男で致命傷の傷も即死でも治癒し生き返る不老不死の怪人であった。

 違う所があると言うならば天膳は何度となく意識が途切れて息絶えてはいたが、この男は意識は失うばかりか笑みを浮かべて激痛を楽しんでいるかの様であった。

 

「これが噂に聞いた甲賀の瞳術か、一瞬で意識を奪われ自分を堪らなく殺したくなる。催眠ではなく俺の殺意をそのままぶつけ脳に刷り込むとは正しく妖術よな!」

 

 三股の槍を持ち、日本の髪の毛を剃った修行僧姿、恐面大男…宝蔵院胤舜は口からダラダラと血を流しながら嗤った

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