その頃、聖とアルベルト、カイル、ダミアンの四人は女王蜂の助力により領主とコリンナ達と合流していた。食堂に皆集まり、何人か毒蛇に噛まれた様だが、コリンナの即座に生成した解毒剤…血清で命には別状がなかった。
「全く良かったよ、血清に使う蛇の毒が簡単に手に入ったから生成には苦労しなかった。噛まれた者も十人いなかったからね。」
「即興でこんな完成度の高い血清なんて驚きました!
流石はコリンナさんです!」
魔力は聖がダントツに上ではあるが、知識と薬物生成の腕はやはりコリンナの方が上なのだろう。年の功である。
集まっていた使用人達に指示を出した後、領主ダニエル・クラウスナーは急ぎ、食堂に着いたカイル王子に跪いた。
「申し訳ありませんカイル殿下、直ぐ様馳せ参じる事出来ず、御身の御足労を急いてしまいました!
この罪は必ず…」
「良い。今は緊急事態だ。どうやら敵が潜ませていた蛇はアシュレイ邸を襲い逃げた筈の
クラウスナー卿はこのまま使用人と城兵達への指示を怠るな。
私達は城外へ出る。」
「そんな、戦闘が起きているなら城外は更に危険で御座います。どうか此処で戦闘が終わるのをお待ち下さい!」
領主の進言にカイルは「駄目だ!」と一喝した。
「私が戦場に立ち味方の士気を高めねばならん。私でなければ出来ぬ事だ。」
その言葉に同意する様にアルベルトはカイルの傍らに立つ。
「私も第三騎士団の指揮をしなければならない。聖、君は…」
「ご一緒致します。」
「「駄目だ…」」
「御一緒致します!」
二人で彼女を制すが、聖は全く退かなかった。
「私の…わたしの甘さが愛良ちゃんに人殺しをさせてしいました。わたしは、一人のうのうと安全な場所にいたくはありません!」
聖女の決意が固いと理解したカイルはほくそ笑む。
「ふっ、ならばホーク団長の傍は離れるなよ。」
「カイル殿下…。」
「殿下、彼女は私の婚約者です。危険な目には合わせたくありません!」
アルベルトはこの場の最高権力者に異を唱えるが、。
「アルベルト・ホーク、
聖女の守護だ、しかと果たせ!」
彼はアルベルトに有無を言わせずに先頭に立ち、食堂の扉を再び開き、溜息を突くアルベルト、聖が続いた。
そして城外は剣と刀がぶつかる刃鳴が響き魔導師による魔法の爆発音が轟いた。
「敵は素早い!一対一で戦うな、二人以上で戦え!魔導師は後ろから援護、騎士は魔導師を守りながら傭兵と連携だ!!」
レオンハルトが声を張り上げ全体に指示を行き届かせる。第一騎士団は団長がレオンハルトの声を馬で駆けずり回り彼に負けない掛け声地で味方に伝え、団長のいない第三騎士団も指示に従い騎士が魔導師の盾となり、傭兵は仲間と組み鬼門衆下忍を一人ずつ倒していく。敵の戦い方に慣れれば倒せない相手と分かるが一人にならぬ様に必ず二人…三人で忍者を相手に立ち回った。
…だが此処で弦之介の姿が見えなくなり、レオンハルトは彼の心配をする。
(ゲンノスケ、無事でいろよ。)
そして彼、甲賀弦之介は三股槍の使い手である魔人…宝蔵院胤舜を相手に苦戦していた。彼の瞳術で睨まれ、数度自決したが槍で喉を裂いても腹を開いてもこめかみを貫き通しても意識を無くさずに再生。今では殺意は跳ね返らずに一時麻痺するだけの足止めにしかならなかった。胤舜の三股槍は幾度となく弦之介を切り裂き、左股を貫いていた。荒い息を繰り返し、両目は瞳術の使い過ぎなのか充血するだけでなく涙腺から血が流れている。
「貴様の
楽しませては貰ったがそろそろ死ね。」
胤舜の三股槍の切っ先が弦之介の心の臓へと向けられ、胤舜が残忍に嗤う。…だが強力な力が彼の天辺向けて急降下してくるのを感じ取り天上を見上げた。その正体を見た胤舜はその強面を呆気に取られた表情に崩し直ぐ様後方へと
“ドカンッ!!“と凄まじい衝撃と共に地面が減り込み土砂が広がる。目をパチクリする胤舜、弦之介も彼と同じくキョトンとしてしまう。
「此処は異国か異世界か、二人の猛者が剣を交えて刃鳴鳴らす!
しかして空より割り込む魔法少女が一人、降り立った!!」
少女の声で前口上を唄い出し、砂塵が吹き飛び落ちてきた人物が正体を現した。
「我が名は美少女王族戦士アニスフィア・ウィン・パレッティア!
味方の危機を察して罷り越しまし来て候う!!」
彼女は決めの台詞を高らかにうたい、ニヤリと笑った。