鬼門衆…紅里、宝蔵院胤舜の襲撃の後、彼らの遺体は取り敢えず地下の牢獄へ片付け、冒険者ギルドサミットが終わった頃に火葬する事となった。
パレッティア王国冒険者ギルドの旅団はアニスフィアより半日後にクラウスナーに着き、アニスフィアが旅団より先にクラウスナーに来たのは単純に気持ちが抑えられずに飛行魔法を行使出来る箒…魔道具なる物で空を高速で突っ込み弦之介の危機に間に合ったのであった。
都合の良い状況ではあるがアニスフィアの背に彫り込まれた竜の魔石の
パレッティア冒険者ギルド旅団が着いてあるトラブルが起きた。スランタニア王国王子であるカイルとしては予想通りのものだ。既に国を出発していたパレッティア側には鬼門衆の問題は一切、連絡…伝書鳩を飛ばさずにいたのだ。レベリス側にも飛ばしていない。
鬼門衆の件を知ればパレッティアもレベリスも国に戻ってしまうと踏み、敢えて連絡を出さなかったのである。城内も未だに廊下や各部屋の蛇の骸が片付かずに使えず、客人を迎えられない始末だ。パレッティア冒険者ギルドは鬼門衆の亡骸を片付けただけの城外周辺に野営を準備して迎えたのである。
「カイル王子殿下、これは遺憾であるとしか言えません。何故連絡をしていただけなかったのか!?
この野営にしてもそうです、城が攻められ使えないなど言語道断!我々冒険者ギルドはパレッティア王国女王王姉殿下をお預かりしているのです。こんな何処ぞの国…いや、集団に襲撃を受ける様な状態ではサミットなど出来ませんぞ!!」
憤り、まくし立てるパレッティア冒険者ギルドグランドマスターの両肩を後ろから掴む者がいた。アニスフィアである。
「グラマス、そんな青筋立てずにお話ししようよ。その鬼門衆とかの襲撃は今の話じゃわたし達が国出発した後の問題の様だから。
出発した旅団に伝書送っても100%届く訳じゃない。あまりカイル殿下を責めるべきじゃないよ。」
「しかし…。こうなるならアニス様には国に残ってもらうべきでしたよ。」
アニスフィアとはやはり孫程に年の離れたグランドギルドマスターは皺の刻んだオデコをハンカチで拭った。
「ごめんね、グラマス。
実はグランドマスターはこの話をアニスフィアに伝えるつもりはなく、手違いで彼女に伝わってしまい無理矢理について来たのである。
「それとね、ちょ〜とカイル殿下とお話ししたいんだよね…。いいかな?」
「本命はサミットではなくそっちですね、一人ではなく誰かお付を連れて行って下さい。」
見透かしたかの様な口調でギルドグランドマスターは承諾、アニスフィアは苦笑いしながら軽く拝み手で返した。そして屈強で浅黒い肌をザイデラ国の刺繍が施された服で隠した黒髪おさげの強面の男を呼ぶ。
「烈さん、ボディーガード。」
烈と呼ばれた男はつまらなそうにアニスフィアを見てフンッと軽く鼻を鳴らし、その後をニヤニヤしたゴブリンがついて行く。
「ごめんね、ゴブリン君は待っててね。」
「チェ、面白そうなのにな〜。」
「おい、待ってる間に問題は起こすなよ。」
そう烈はゴブリンに念を押してアニスフィアとカイルについて行く。
「ホーク団長、聖女セイ、私と一緒について来てくれ。」
「畏まりました。」
「えっ、ハイ。」
「カイル様、出来るなら弦之介さんも一緒に…」
…と、アニスフィアが言ったが側にいた弦之介は首を横に振る。
「すまぬが城内に朧殿を待たせている。」
「ならその朧さんも一緒に連れて来てもらえますか?…大切な話になるから。」
少しおちゃらけていたアニスフィアの表情が真剣なものに変わり、何かを察した弦之介は無言で頷いて城内の朧と左衛門のいる部屋へと戻って行った。