鉄の魔物…或いはアイアンゴーレムの残骸に集まる人物を一羽の頭の白い鷲…白頭鷲が木の陰から見つめていた。
《今
白頭鷲の眼球がカメラの様にズームし、マダラと言う存在へ通信を入れる。その存在は少年の声で応える。
「僕の映像カメラは問題無し、通信もOKだよカスミ。」
クラウスナーにある町の宿屋。窓を閉めて真っ暗にした一室で三人の少女と大型犬のシェパード。その頭の上に乗ったモモンガがいた。モモンガの目が光り家具を退かした木の壁に映像を映し出すと其処にはクラウスナー城の城門…尖った幾本もの岩に串刺しにされた鉄の魔物が写映し出されていた。三人の少女は三人とも表情を険しく歪ませて映像を睨みつけ、律花が憎しみを露わにした。
「グラズヘイムの戦闘ドローン、ブラッド…ッ!」
ブラッド…。20XX年のアメリカの産業都市ブラッドシティと同じ名を持つ大企業グラズヘイム社の社長。リリィ…石動律花の父親の研究成果を奪う為に父親と祖父を殺した男。戦闘用ドローンはグラズヘイム社が研究成果を悪用した産物である。
数ヶ月前、グラズヘイム本社へ乗り込んでブラッドと対峙、彼との戦いに勝ち父親の研究成果を奪い返した。
そしてブラッドは嗤いながら高層建築であるビルより飛び降り、同時に巨大なブラックホールが現れて彼女達ごとグラズヘイム社ビルを呑み込んだ。
気付いた律花が見たのは大都会ではなく広大な草原、幸いだったのは友達のミアとメリッサ、オボロ、カスミ、マダラが一緒であった事。…それは奇跡の何物でもなかった。
「ブラッドが生きてる可能性がある!」
「リリィ、アイツが生きてたら、どうするの?」
鬼気迫る表情のリリィにメリッサが問いかけ、ミアも心配そうに彼女を見つめる。
「分からない…けど、あのドローンがこの世界で悪用されてるなら、わたし達が何とかしなきゃならないんだ。」
メリッサ、ミアはその言葉に頷き、オボロ達は彼女達を見守り…支え続けると強く誓う。
「…で、これからどうするんだ?」
「先ずはあのドローンを倒した人達とコンタクトする。」
「どうやってコンタクトすんだよ?」
続いてモモンガのドローン…マダラが尋ね、律花は答えた。
「わたしは石動家27代目当主石動律花、
「つまりお城に潜入だ。」
メリッサがニコリと言って笑い、律花とミアもつられて笑顔になった。
クラウスナー城ではカイル、パレッティア冒険者ギルドのグランドマスターにレベリス王国レベリス支部ギルマス代行のメイゲンが代表者総当たり戦の会議を始めていた。
そして聖はコリンナの研究室から自分の部屋に戻る途中にいた。コリンナはアルベルトが普段婚約者には理解出来ない感情を見せた事で戸惑い落ち込む聖を気遣い呼んだのである。
「男なんて皆あんなもんさね。今までスランタニアでは瘴気の沼の魔物しか相手にせず、騎士同士でも訓練程度にしか手合わせはしない。
レオンハルトみたいな傭兵はともかく、スランタニアの騎士は人同士の真剣勝負はあまりしないのさ。
そんな騎士が剣聖を目の前にして王子殿下より公式に勝負の許しが出たなら…その機会を逃す手はないとは思うよ。」
「それは自分を試したい…と云う事ですか?」
「今の自分の実力を知るには良いだろう。」
研究室での会話を思い出しながら自分の部屋に着き、着替えもせずにベッドに仰向けに転がる。
「わたし…アルベルト様の事、まだ何も分かってないんだ…。」
聖は少し寂しくなって呟くのだった。