異世界転々忍法戦記   作:濁酒三十六

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男の拘りと女の我儘は交わらない。

 第二試合、休憩時間を置きアルベルトは連戦。ベリルが彼と対峙する。

 観戦する町民達の隙間からいつの間にか紛れたリリィこと石動律花が試合…否、カイル達が観戦している場所を探していた。

 

(スレナさんから聞いた話ではこの国の名はスランタニアで地方クラウスナー辺境伯領地。町の人の話ではレベリス、パレッティアの国から冒険者ギルドのお偉いさんが来ていてわたし達がついて来たのはレベリス冒険者ギルドの旅団。

そして今三国の強者で試合の真っ最中でこの国の偉い人が来てる。手間なくコンタクトを取るには今がチャンス。

…あのテントの下にいる人がらしい(・・・)わね。)

 

 そして律花はカイル殿下達のいる場所をテントの下に高そうな服装の赤い髪の毛の男性が座る席としぼり混雑した町民の隙間をぬって移動。しかしその動きに気付いた弦之介は烈の側から離れて少しずつカイル達のいる観覧場へと近付く律花を追った。

 その動きには烈とベリルも気付いており、烈は事を見守る事としてベリルも代表者戦に集中して弦之介に任せた。

 

「二回戦、アルベルト・ホーク。レベリスの剣聖…ベリル・ガーデナント、前へ。」

 

 続きクラウスナー卿が審判を務め、彼を挟んで二人が向かい合った。

 

「ガーデナント殿、胸をお借りします。」

「こちらこそ、御願い致します。ホーク団長殿。」

 

 ベリルは木剣を前方に基本の構えを取り、アルベルトは右肩に柄を担ぐ様に構え木剣の切っ先をベリルに向ける。

 先に動いたのはアルベルト、右肩に構えた剣を真っ直ぐに突き出しベリルに鋭い刺突で攻撃。ベリルはそれを右へと払い同じく刺突を返す。

 アルベルトは刺突を避けて横薙ぎ、ベリルは首を引っ込めしゃがみ難なく躱して後退、間合いを空けた。

 

(流石、騎士団長。次の動作攻撃が早い。)

 

 お互い呼吸を整えて二度向かい合った。二人の攻防を見ていた聖の表情はあまり良くなく、目尻には涙も滲んでいた。

 

「アルベルト様、怪我…気を付けて…。」

 

 隣にいた朧が聖の様子に気付いて彼女の手を取り握ってあげる。

 

「聖様、アルベルト様はきっと大丈夫ですよ。」

「朧様…ありがと。」

 

 聖は朧の手を握り返し、アルベルトの無事を祈る。魔物を相手にした戦いより決して危険な闘いではない。…しかしベリル・ガーデナントはアルベルトよりも数段、それ以上に上を行く強者である事はアルベルトの態度、言葉を聞けば理解出来る。

 そんな相手とこれから対峙するのでは…もしかしたら愛する人が自分の為に命を落とすかも知れないと考えてしまい怖くなってしまっていた。

 朧は今の聖の心が手に取る様に理解出来た。彼女もまた先の襲撃で弦之介が自分を怖がらせない為とはいえ睡眠薬を盛って戦いに赴いたのを目を覚まして知った時は弦之介をまた失うのではないかと胸が張り裂けそうになった。

 

「聖様、女の我儘と殿方の(こだわり)は、きっと噛み合わないのでしょうね…。」

「朧様?」

 

 朧が寂し気に見つめる先はアルベルトとベリルがカンッ、カンッ、と木剣を打ち合う光景。弦之介の姿は見つからず、知らない二人の男の試合をやはり寂しそうに見つめる。

 

(女の我儘…、か…。只アルベルト様に傷付いて欲しくないのは私の我儘なのかな…?)

 

 そんな事を脳裏に過ぎらせ、自分の手を握りながら彼方を見る朧の横顔を聖は自分より大人びた女性の顔をしていると感じていた。

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