異世界転々忍法戦記   作:濁酒三十六

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アニスフィア義姉殿下、大ピンチ!?

 スランタニア王国国境関所には毎日入国する為に多くの人々の列が長々と並んでいた。列は二つ程あり、商人といった商売用品をする為の入国の列…平民等の入国列である。自国他国の貴族はまた更に別の関所で出入国している。

 そして貴族商人の入国門でとある女性の順番となり、守衛兵が女性が見せる書類通行証を確認してマジマジと女性を見据えてしまう。女性の姿は白いフード付きのマントを纏っておりフードを取ると銀髪のストレートロングヘアの美少女で守衛は通行証と交互に何度も見返した。

 

「えっ、ユフィリア…フェズ、パレッティアぁ様ああっ!?」

 

 一人の守衛兵が驚愕して叫んでしまい、側にいた仲間の守衛兵も驚き慄く。銀髪の美少女は困り気に笑い尋ねる。

 ユフィリア・フェズ・パレッティア、現パレッティア王国の若き女王。前パレッティア国王の養女となり、パレッティア義姉殿下であるアニスフィア・ウィン・パレッティアが王位を譲り若くして女王に即位した人物である。

 

「冒険者ギルドの旅団と一緒に来る筈が公務で遅れてしまったのですが…、大丈夫でしょうか?」

 

 守衛兵達は慌てて縦にブンブン振って肯定する。

 

「もも、勿論大丈夫で御座います。通行証はパレッティアの紋章印も本物と…、いやいやどうぞ御入国下さい。スランタニア王国へようこそ!」

 

 守衛兵達が並び手に持つ槍を眼前で切っ先を天に向けて一礼、ネフィリアと呼ばれた銀髪の美少女もスカートの両端を摘み兵達に「ありがとうございます。」と言って一礼して両脇を守衛達に固められた道を通る。守衛達はその無駄のない綺麗な礼と形良く進む歩き方に見惚れてしまう。

 関門を通り抜けたネフィリアは振り返り守衛兵達に微笑みかける。

 

「ユフィリア女王、馬車を用意致しますので暫し…」

「いえ、急ぎますので“飛行魔法”の許可を頂けますか?」

「はい、構いま…。えっ、ひこう魔法?」

 

 すると「有難う御座います。」とまた一礼をしたネフィリアの爪先が地面から離れ高く宙に浮くとズバンッ!!と凄まじい音と疾さで空を飛んで行ってしまった。守衛兵達は呆気に取られ女王の飛んで行ったクラウスナー領の方角を眺めた。

 クラウスナー領城下町広場では三国実力者三名による総当たり戦の二回戦が続き、レベリス王国レベリオ騎士団特別指南役のベリル・ガーデナントとスランタニア王国第三騎士団団長アルベルト・ホークが打ち合っていた。

 カンカンッと木剣がかち合う音が響き、観戦する一行は二人の剣技に感心する者が殆どであったが…一人、聖は騎士であるアルベルトの身を案じていた。

 

(わたしがアルベルト様を心配する気持ちは…アルベルト様に寄り添えないのかな?)

「朧様は…弦之介様とは、わかり合えないと思っているのですか?」

 

 その問いには朧は強く首を横に振り強く否定する。

 

「ちっ、違います!…ただ、殿方は命を賭して戦いに赴いてしまう。私達女の心配などお構いなしに、私は時折…その蛮勇に憤ってしまうんです。」

 

 朧は先の戦い…鬼門衆の襲来時に弦之介は彼女が怖がらない様にと睡眠薬を飲ませ朧が起きてみれば全てが終わっており、彼の心配すらさせてもらえなかったので少し落ち込んでいたのである。

 

「そう…なんですか…。」

 

 ふと、聖はかつての黒い沼の魔物討伐を思い出す。アルベルトは何度となく魔物との戦いに傷付きながらも魔物を討ち倒し、彼等騎士団と共に黒い沼を消滅させた。その戦いが終わった時、聖はもう彼が大怪我を負う事がないと考えた時はとても安堵を覚えたのを思い出していた。

 ベリルとアルベルトの試合は拮抗している様にも見えるが烈、弦之介、スレナ達には勝負が見えていた。ベリルは機会を伺いアルベルトは焦っている。次の瞬間にアルベルトの木剣が宙を舞いベリルの木剣がアルベルトの額に振り降ろされ寸止めとなる。

 

「勝者、レベリスの剣聖、ベリル・ガーデナント!」

 

 審判役の領主より声が上がり町民からの歓声が湧いた。二人は面と向かい一礼をするとアルベルトがその場から離れ、ベリルにスレナが駆け寄った。

 

「流石先生です、相手の剣身を己の剣で絡め取りその手から剣を奪い去る。正に神技です!」

「いやいや、木剣だから出来る小手先の技だよ。」

 

 其処へ彼の横に烈が立ち言葉をかけた。

 

「謙遜だな、木剣の剣身が重なった瞬間に手首をくるりと回して剣身を絡め、アルベルト殿の握力から木剣の柄を逃がす。その剣の角度重なった位置を瞬時に見極めねば出来ぬよ。」

「はは、褒めてくれるのは嬉しいけど次の相手はもう決まってますからね。」

 

 烈の言葉に苦笑いをするベリルにアルベルトは振り返らず、聖が彼に駆け寄る。

 

「アルベルト様!」

「はは、格好悪い所を見せてしまった。やはり剣聖、私より何十倍も強い…。」

 

 少し乾いた笑いを浮かべる彼の胸に聖が“こんっ”と頭を乗せてそのまま寄り掛かる。

 

「セイ?」

「私は…、気が気でなりませんでした。瘴気の沼の浄化、魔物の討伐の時はこんなに胸が苦しくなんてならなかったのに…、ガーデナント様の前にアルベルト様が立った際は…彼が、アルベルト様より何倍も大きな怪物に見えました…。」

「心配してくれてありがとう、セイ。私もベリル殿と面と向かった時は正直…肝が冷えてしまった。彼を剣で打ち負かしたいと決めた思いが一気に掻き消され、魔法を使っても勝つイメージがわかなかった。私は君を守る為に強くならねばいけないのに…っ!」

 

 その時、聖を見つめる顔が初めて悔しさに歪む。忍者と言う異世界の暗殺者集団に愛する女性が狙われている事実が彼を焦らせていた。その拳が加減の効かない握力で握られて血が地面に滴るとその拳が温かい金色の光に包まれる。

 

「セイ、無詠唱で…」

「アルベルト様、私は…いつでも隣におります。」

「セイ、ありがとう。」

 

 そんな二人にアニスは「エモい…。」などと呟いて羨ましげに見つめるが、気を取り直して両手に剣を握る。

 

「二敗になるかな…。(いや)、勝ちに行く!」

 

 アニスの顔が真剣なものとなりベリルの前に向かおうとした時、後ろから声をかける者がいた。

 

「そうですね、剣聖相手でも初戦みたいな変な負け方はなさらないで下さいね。」

 

 その声を聞くや、アニスの顔から血の気が引き…恐る恐る後ろを向く。

 

「なっ、何で、この国にいるのかな…、“ユフィ”…?」

 

 頬を引くつかせて笑うアニスの額から脂汗がジワジワと滲んでは流れて顎付近でボトボトと落ちては地面を濡らした。

 

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