魔人凶蘇。
おどおどと後ろめたそうにアニスは声をかけて来た銀髪ストレートロングヘアの美少女を見る。
「ユフィ…、どうしてスランタニアにいるの?
パレッティアの政務は?」
「政務は
更にアニスの顔が青褪めた。
「アニス様のお知り合いですか?」
アニスの様子と見知らぬ美少女に聖が気付き、朧も少し気に掛かり聖の後ろから覗き込む。
「初めまして、ユフィリア・フェズんっ!?」
途端にアニスが咄嗟に彼女の口を塞ぎ、耳打ちをする。
「今は駄目、マゼンダの姓の方を名乗って。」
ユフィリアはアニスの考えを汲み言い直した。
「私はパレッティア国王宰相、マゼンダ侯爵の息女…ユフィリア・マゼンダで御座います。どうぞお見知りおきを。」
「はっ、初めましてマゼンダ様、セイ・タカナシと申します。」
聖も御辞儀をして挨拶を返す。聖はユフィリアの気品が滲み出た美しさに見惚れ、朧は彼女の美しい姿に見惚れてしまう。
「お…、お綺麗な方…、あっ、私は、朧と申します。」
…と、朧は思わず口にして挨拶を返した。それを耳にしたユフィリアは朧に目を向けて「ありがとうございます。」…と一言言って笑いかけると朧は顔を真っ赤にして聖の後ろに隠れてしまう。
(コレが伝説の“ニコぽ”、初めて見た。)
…なんて事を思った聖。そんな彼女の背中で朧が呟いた。
「まるで天女様みたいな御方…です。」
「そうですね、私もちょっとうっとりしてしまいました。」
そこでクラウスナー卿の声がしてアニス、ベリルの顔持ちが変わる。
「では最後の試合を開始します!ベリル・ガーデナント殿、アニス・ウィン・パレッティア様、前へ!!」
ベリルが先に広場の中心に立ち、アニスも遅れるが広場に向かおうとするとユフィリアに呼び止められた。
「アニス、騎士ホーク卿との試合は見ていましたがあまりにも無様、そしてホーク卿に対して失礼なものでした。」
耳の痛い批評を彼女に浴びせられ、アニスはかなり凹み脱力してしまう。
「うう、自分でも分かってるよ。ホーク卿に対していきなりの大振りな先手を簡単に返されて何も出来なかったとか…、お母様に何て知れたらヤバすぎるっ。」
「そして相手は剣聖ベリル・ガーデナント様、剣での真っ向勝負は先ず勝つ見込みはありませんね。」
「ユフィいいぃ。」
アニスは更に凹み背を丸めて両手の木剣をだらりと地につけるとユフィリアは同じ目線までかがみ顔を近付ける。
「大人の男性と試合うのだから“身体強化”くらい使われたらどうですか?」
「あっ。」
アニスはアルベルトとの試合では馬鹿正直に剣技のみで挑んでおり、彼女が直ぐ負けてしまった一番の要因である。いくら強く冒険者として鍛えてはいても騎士として鍛えアニスと同じく様々な魔物と渡り合ってきたアルベルトとは基礎的な身体能力が違っている。
「あはは、何か
「この試合は剣技を見せるものではなく冒険者の戦いを見せるものでは?」
ユフィリアの言葉にアニスが奮い立ち木剣を握り直す。
「そうだね、わたしはパレッティア冒険者ギルド最高ランク冒険者、アニスフィア・ウィン・パレッティアだ!」
そう言ってベリルの前に立ち向かい合う。
「宜しいですか、アニスフィア殿下?」
「はい、胸をお借りしますガーデナント卿。」
二人は握る木剣を構え、目を交えた。
クラウスナー城地下牢、聖を狙った城襲撃で討たれた鬼門衆達の亡骸…そしてアニスと弦之介によって倒された宝蔵院胤舜が無造作に置かれている。
その地下牢に何者かが地下牢を護る兵の目を掻い潜り忍び込む。姿は煌びやかな刺繍が施され扇子の様に広い襟の黒い羽織に下は血の様に赤い着物と袴、灰色の長髪を根元で纏めた美青年が静かな足運びで地下牢を進む。
鬼門衆と胤舜の亡骸がある牢の前で歩みを止めた美青年は右手を鉄格子に向けると、何と鉄格子はドロドロと溶解してしまった。
灰色髪の美青年は胤舜の鼻筋下からない亡骸に顔を近付けて切れた耳に囁き嗤う。
「ふふ、なんて無様な姿だ胤舜。無双槍の名が泣くぞ。」
すると脳味噌のない状態で唇が動き、亡骸が言葉を発した。
「女が…抱きたい…。」
「既に用意してあるが、先ずは。」
美青年の体から瘴気が涌き、胤舜の亡骸へと吸収されていくと、斬られ失った頭半分が再生。ムクリとその巨体を起き上がらせた。
「さあ、早う女を寄越せ。」
美青年が頷くと彼の横にいつの間に城のメイドが一人、虚ろな表情で現れ、胤舜へと歩み寄る。
「これが最後だ、
そう言って後ろを向いて地下牢の守衛を長い灰色の髪を絡ませバラバラに切り刻み、地下牢の奥からはメイドが正気を取り戻したのか、悲鳴と喘ぎ声を混ぜ上げていた。