異世界転々忍法戦記   作:濁酒三十六

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烈海王、推参!!

「カイル王子、私も城に…」

「駄目だ、聖女は事が片付くまで此処で待機だ。第一、第三騎士団は領民を皆家に帰らせ、守陣を組め!

敵は此方にも来るやも知れん。警戒せよ!」

 

 険しい表情で聖の申し出を断り、騎士団に命令を下すカイル。アニスもユフィリアを自分の後ろに下げて左手にマナブレイド。右手に魔剣セレスティアルを握り締め、パレッティアの冒険者もクランドマスターの指示で戦闘態勢を取った。

 

「ユフィ、万が一の時はあの黒髪の女性、聖さんを守って。敵は聖女を狙ってるから。」

「アニス、敵とは。私達に関係している事なのですか?」

 

 アニスは頷く。そしてレベリス王国の冒険者もまた、非戦闘員は背後に下げてスレナ達高ランク冒険者を前方に出て守陣を組んだ。ベリルはスレナから一振りの長剣(ロングソード)を受け取り高ランク冒険者であるスレナの隣に並んで剣を抜いた。

 “竜双剣”。それがスレナ・リサンデラの異名である。かつて討伐した竜の牙から削り打たれた二対の剣を自在に操り(ブラック)ランク冒険者として名を馳せている。

 その彼女の師であり国王も認めた。剣聖…ベリル・ガーデナントが握った長剣はレベリス王国の“特別討伐指定個体(ネームド)”と呼ばれる強大な戦闘力を誇る魔獣(グリフォン)ゼノ・グレイブルの前足より造られた魔剣である。

 

「ありがとうスレナ。」

「先生、嫌な気配がします。」

「スレナもかい。俺も感じる(・・・)よ、強い殺意だ。かなりの周囲を呑み込んでいる。」

 

 ベリルの額には嫌な脂汗が滲む。恐らく今まで感じた事のない殺気…そして邪気が彼の言う通り広範囲で広がっていた。

 スランタニアの騎士団が聖達要人を守護する為に囲み円陣を組む。…だが聖、アルベルト、ベリルにスレナ、ユフィリアとアニスは気付いた。いつの間にか突然に入り込んでいだ魔人に。

 彼は聖達の前に立つ。服装は綺羅びやかな刺繍に西洋貴族の様な扇型の襟をした紅い羽織。背中を覆ってしまう程の髷に結った灰色の長髪。

 顔はアルベルトやカイルにも負けない美形な青年で首に掛けていた十字の首飾りを唇に近付けそっと口吻をし、その仕草と美貌とは似合わない威圧と不敵な笑みは聖達の背筋を凍らせた。

 

「ふふ、貴女が聖女…小鳥遊聖(・・・・)か、迎えに来たよ。」

 

 美青年は邪悪に笑い、全身から色濃い瘴気を放った。

 

 今、クラウスナー城内は阿鼻叫喚が城内に響き渡っていた。追い囲まれ突き殺され、薙ぎ払われて臓物を飛び散らせる者達。凌辱を受けた後にやはり前途の様に殺される女達。

 城内を地獄絵図に変えて宝蔵院胤舜は武器庫にあった自身の十字槍を取り返し、ほくそ笑みながら犯し殺した。

 

「そこ迄だ、糞禿野郎!」

 

 宝蔵院胤舜の前に立ち塞がったのはクラウスナーに雇われた傭兵団団長レオンハルトだった。人が通るだけなら広い回廊だが剣ましてや彼の得物は大剣、そして胤舜は柄の長い十字槍。

 お互いに振り回すには大き過ぎる武具だが胤舜はその中で殺戮し、レオンハルトは強敵を前に意に介さず、大剣の切っ先を向け構えた。

 

「殺された奴らの無念、晴らさせて貰うぜ!」

「威勢が良いな、四肢を切り落とした後に串刺しにして城に飾ってやろう。」

「やってみな、ハゲダコ野郎!」

 

 そう罵声を飛ばしレオンハルトが大剣の刺突で突進、胤舜はそれを槍でいなすがレオンは一回転して横薙ぎで斬り付ける。壁すら削るが勢いは変わらずに胤舜を襲い横腹に剣身を半分斬り込ませた。

 

「一撃必殺だぜ!」

 

 しかし胤舜を斬りつけた大剣は抜けず、胤舜は笑みを浮かべる。

 

「ぐふふふ、この程度でこの儂が殺せると思うたか?」

「つうか、何で抜けねえんだよ!?」

 

 力ずくで抜こうとレオンは力むがそれが隙となり、胤舜が槍の柄の中心を回し下部…石突で下からレオンの大剣を握る手を叩きつけて大剣を横腹斬り口で挟み込んだままで奪い、透かさずくるりと十字の穂を上段でレオンを斬りつける。

 

「ぐあっ!?」

 

 レオンは飛び退くが左肩から右太腿にかけて斬られてしまう。傷口は深く、そのまま片膝を付いて動けなくなる。胤舜は残忍に嗤い大剣を足下に捨てて右肩上に十字槍を上段突きに構え、刺突の構えを取る。しかし瞬間にレオンの背後から駆けつけた烈海王が飛び蹴りを胤舜の顔面に強烈な一撃を叩き込んだ。

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