異世界転々忍法戦記   作:濁酒三十六

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魔界より手を伸ばす者…

 クラウスナー、町の中心部の広場。三国による総当たり戦が終了したのもつかの間、クラウスナー城内で宝蔵院胤舜が復活。

 そしてこちらにも凄まじい瘴気と殺意を発する敵が聖達の前に姿を現していた。町民達は帰宅から避難へと切替わり、第三騎士団が誘導。第一騎士団が敵を取り囲み、第三騎士団の指揮を副団長に任せアルベルト・ホークは聖女の守護として彼女を後ろに置き守る。

 レベリス、パレッティア両国の冒険者ギルド来賓者は両国冒険者に守られるが、貴族である筈のアニスフィア、ユフィリアは冒険者達と同じ様に前に出、カイルはその先頭に立ち敵である男と睨み合う。

 

「貴様、このクラウスナーは我が偉大なるスランタニア王国の領地。誰の許しを得て入り込んだ?

返答によっては命はないと思え下賤の者よ!!」

 

 敵であろう美青年に向けて高らかに口頭宣言するカイル。聖とアニスは美青年の服装から江戸時代以前の人間と考え、鬼門衆の忍者ではないかと警戒…或いは宝蔵院胤舜、田宮坊太郎と同じ魔人ではないかとも思考した。

 すると敵の青年は聖…そしてアニスにも視線を向けてまた不敵に嗤った。

 

(あの人、聖さんだけじゃなく私にも気付いてる!?)

 

 敵からの不穏な視線にアニスは青年を観察する髷に結った長い灰色の長髪。日本風と西洋風が合わさり綺羅びやかな羽織。首に掛けられた十字の首飾り…。

 そこでアニスの顔が蒼白となる過去、日本の時代で十字…ロザリオと関連する偉人、侍をアニスは一人しか思いつかなかった。

 

(まさか…?)

 

 アニスが感じた美青年の表情は全てへの嘲笑、そして憎悪。もし彼女の予想通りの人物なら…、この人物はこの異世界では恐ろしく危険な存在の筈。

 

「名を名乗れ、痴れ者っ!!」

 

 美青年は笑みを崩さずに答える。

 

「私は“魔界転生衆”が長、天草四郎時貞(・・・・・・)。本日はスランタニアの聖女、小鳥遊聖(・・・・)を貰いに参った、大人しく此方へお渡し願いたい。」

 

 アニスの予想が当たってしまった。天草四郎時貞、江戸時代、寛永十四年に起きた一揆…島原の乱の中心人物であった。島原の乱で彼は幕府軍、陣佐左衛門に討たれたとされ、凡そ老若男女三万七千人が犠牲となったとされている。

 聖は江戸時代の歴史に名が残る人物が目の前にいるだけでなく自分を名指しにしている事があまりに信じられなかった。

 アニスも前世の記憶から天草四郎を憶えていた。そして魔界転生衆と名乗りを上げた時点でパレッティア王国に現れた田宮坊太郎と今クラウスナー城で暴れている宝蔵院胤舜と確実に関わっていると推測出来た。

 聖が疑問を投げかけようと前に出ようとするがアルベルトに止められる。

 

「アルベルト様!!」

 

 アルベルトは口を噤んだまま首を横に振る。後はカイルと第一騎士団に任せろと言う事なのだろう。だが、聖には良からぬ予感しかせず、見守るだけしか出来なかった。

 天草四郎時貞を射殺すが如く睨みを利かすカイルは四郎を前に宣戦布告の口上を声を上げ放った。

 

「聖女を貰うだと?その言葉が意味するのは我がスランタニア王国を敵に回す事を意味する!

最早吐いた唾は飲み込めぬと知れ、我が第一騎士団が成敗してくれるぞ、愚劣者よ!!

第一騎士団団長、アマクサシロウトキサダの首を取れっ!!」

「はっ、第一騎士団、槍を構えぇ!宮廷魔導師、アイシクルスピアだ!」

 

 第一騎士団団長の号令から五人の宮廷魔導師が囲み天草四郎に向けてアイシクルスピアを放ち、それを追って同じく囲んでいた騎士団が突撃した。天草四郎は下卑た笑みを浮かべると髷を解き長い灰色の髪が広がった。

 

「駄目だ、逃げろ!!」

 

 ベリルが騎士団に叫び、皆が四郎と騎士団の激突に釘付けとなる。そして、全員の視界が赤黒い世界に染まった。

 四郎に槍を向けて突侵した十数人の騎士団達の首、四肢、胴体、臓腑が一瞬で切り分かれ…血飛沫が広がり鮮血が地に首四肢胴臓腑とボトボトと落ちて広がった。四郎が笑んで呟く。

 

「忍法、髪切丸。」

 

 その惨劇を目の当たりにした聖の意識は途切れ、倒れそうになる彼女をアルベルトが支えた。

 

「セイ…。くそっ、何が起きたんだ!?」

 

 アルベルトは目の前に広がる血の海に絶句する。アニス、ユフィリアも言葉が出ずにスレナも両手の双剣を歯を噛み締めながら強く握る。…と、スレナの傍らにいたベリルが動いた。疾風の如く天草四郎へと血の海を駆け抜け、気付けば四郎の眼前でゼノ・グレイブルの剣を振り下ろさんとしていた。だが四郎の前には鋼線の様な光の反射が一瞬見えた。しかしベリルは躊躇わずに四郎へと剣を振り降ろし顔面を鋼線を断ち斬り、顔面を斬りつけた。

 

「ぬぅ、我が()を断ち切るとは…只の剣ではないな。」

ある人(・・・)からこの剣は魔法を斬れる魔剣(・・)と聞いている。

恐らく君を充分に殺しきれる剣だよ。」

 

 もの静かで誰に対しても腰の低い中年剣士であったベリル・ガーデナントの目に強い怒りの炎が灯る。

 

「アマクサシロウトキサダ、此処で討ち取らせてもらう。」

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