クラウスナー、スランタニア王国より離れた草原に天草四郎時貞はその姿を現した。スレナ・リサンデラの十字斬りで四つ裂きにされた上に首まで断たれた身体再生されていたが流石に衣類は直せなかったのか全裸ではあった。
「天草四郎、迎えに来たぞ。」
地の底から静かに響く様な声が四郎を呼ぶ。彼が振り向くと其処にタンクトップの様な忍装束、左腕上下腕部を鉄製の籠手と身を固め、肩幅が広く筋肉隆々に上半身が逆三角形の体型、真っ黒な短髪にイースター島のモアイにも似た面立ちの巨漢が立っていた。
「氷室弦馬か、わざわざ鬼門八人衆頭領のお前が来たのか。」
「“スフェン教”教皇派との交渉を終えたと“百合丸”から連絡を受けた。教皇は我々と手を組むとの事だ。…そちらは
「あぁ、八人衆の紅里と宝蔵院胤舜は討死。スランタニアには伊賀甲賀だけでなく石動が合流し、パレッティア王国、レビオス…片田舎の剣聖に“ブラキラカ”で出会った烈海王も敵になった。」
そう話す四郎に弦馬はマントを手渡す。
「スランタニア王都には
…そう言えば“あの娘”が“新しい魔人”を連れてスランタニアへ行ってしまったぞ。
悪役令嬢とやらに会いに行くそうだ。」
それを聞いて四郎はクスクスと笑う。
「“サラ”にも困ったものだ、あの娘は奔放過ぎる。連れて行ったのは“シュプール”だな。」
「あぁ、“シャルトルーズ”はパレッティアへの復讐しか頭にない。
「獲物を取られるぞ?」
「獣兵衛などくれてやる、いい加減飽きたわ。しつこい男よ、
「あの男、我が
「ふん、
天草四郎は特に応えずに鼻で嗤い、二人は草原から姿を消した。
スランタニア、パレッティア、そして石動との会談は驚愕の真実の連続で終えた。カイルは律花、ミア、メリッサ三人を客将として迎える事を決め、三人も承諾する。アニスとユフィリアはスランタニア王都まで同行し、国王ジークフリートとの会談を所望した。
烈海王は宝蔵院胤舜に受けた傷の完治の為に数日クラウスナーに滞在し、完治の後はパレッティアの冒険者として同行したがパレッティアへは戻らずにまたあてのない旅に出てしまうそうだ。
弦之介と朧はクラウスナーへの恩から彼等への助力の為にクラウスナー領に残る事を決めた。左衛門、蛍火は主である二人について行くとの事。
そして聖はユフィリアと改めて顔合わせをしてまた驚かされてしまう。
「改めまして名乗らせて頂きます、スランタニアの聖女…セイ・タカナシ様。私の名はユフィリア・フェズ・パレッティア、パレッティア王国現女王を務めさせて頂いております。」
…と、聖を前に畏まり丁寧に挨拶をする。聖は眉間に皺を寄せてどうゆう事かとアニスを見た。二日経っても左頬の腫れが少し残るアニスはこう言った。
「はい、
「その言い方やめて、アニス。」
次に聖は自分の傍らのアルベルトの顔を“そうなのですか?”…と言いたそうな顔で見上げると彼は会談の時点でカイルにはバレていた事を明かした。
「クラウスナーを通った際の通行書にはマゼンダの性ではなくパレッティアの性で名前が書かれて刻印が国王印だったんだよ。」
「そっ…そうだったのですか。
此方も改めて御挨拶させて頂きます。ユフィリア女王。私はスランタニア王国の聖女を務めておりますセイ・タカナシと言います。どうぞお見知りおきお願い致します。」
聖はユフィリアに向き直り、スタートの両端を摘んで一礼し、ユフィリアも笑顔で聖を見つめて頭を下げ、今一度挨拶を交わした。
「聖様はアニスの前世の世界からこちらの世界へ召喚されたと彼女から聞いております。…本当はアニスが
そう言って凄い圧の籠った笑顔をアニスに向けると、サッと圧に耐えられずアニスは顔を背けた。
(怖っ!…もしかしてアニス様の頬が腫れてる理由は…アニス様とユフィリア様って本当に義姉義妹の間柄!?)
何を疑ったか、聖は少々不埒な事を考えてしまう。そして明日…クラウスナー領を発ち、王都へと戻る為にカイルとアルベルト、第一第三騎士団は支度で忙しく、今日は聖の所には顔を出していない。
律花達三人娘もカイルと客将契約を書面で交わし、前払い金で旅の食料雑貨を買い出し中だ。
聖は王都に戻った時、ソルシエ王国公爵令嬢のカタリナ・クラエスをアニスに紹介するべきか迷っていた。スランタニアとパレッティアは深く鬼門衆、魔界転生衆と関わってしまっている。しかしソルシエ王国はまだ大丈夫かも知れない。
カタリナ・クラエスもこれ以上自分と関わらなければ…そう考えてしまうのであった。