寝転がり頬杖を付いていた獣兵衛が見上げると、そこには四人程の訓練着姿の騎士がいた。
「何か用か?」
「ジュウベエ殿、此処は我等騎士達が自身を高める為に鍛錬を行う神性な場所。茶菓子を摘まむ庭園ではない、退場願おう。」
騎士の一人がそう話すと獣兵衛は立ち上がり溜息を吐く。
「そうかい、分かったよ。侍もそうだったが…騎士とやらもお硬いな…。」
そう愚痴を零す。騎士達の冷たい視線が獣兵衛に浴びせられるが、獣兵衛はクッキーの皿を持ち、猫背で訓練場から出ようとするとカタリナが慌てて彼を止めた。
「ちょっと獣兵衛さん、私の素振り見てくれるんじゃないんですかあ!?」
「騎士さんが訓練場で茶菓子は駄目だとよ、後は騎士様達に見てもらえ。」
そう言って出口に足を向ける獣兵衛。カタリナも溜息を吐いて騎士達に目を向けた。
「
「貴女もメイドを伴って退場願えますでしょうか、カタリナ・クラエス嬢。」
「えっ、どうして…?」
「申し訳ないが訓練場は女子供の遊び場ではありません。どうかご退場願います。」
ソルシエ王国ではやはり公爵家であり、更に彼女の人懐っこい人柄が相まって多少の我儘は目を瞑ってもらっていたが、他国ではそうも行かずどうやら獣兵衛と同じく騎士達の反感を買っていた様だ。
「嫌です。」
「何ですと?」
騎士の一人が聞き返す。カタリナは木剣を握り、騎士達に挑みかかる様な眼差しを向けた。
「だってスランタニアを出れず既に一ヶ月近くなります。城下にも出れず王宮に閉じ籠もったままでは息が詰まります。庭園には大きな木があるのに“リズ”からは淑女が木を登るなど言語道断!!”と窘められてしまいました。私はっ、身体を動かしたいんです、暇なんですっ!!」
拳を握って腕をぶんぶん振りながら訴えるカタリナを見て騎士達は皆呆れた。ソラはヘラヘラと笑い、アンはこめかみを人差指で押さえた。
「あっはっはっはっ…、そうか暇か、そりゃあ良くねえ。ならちゃんと付き合ってやる。暇が解消出来るかは知らねえが良い運動にゃあなるだろ。」
獣兵衛がケラケラ笑いながら戻って来る。すると騎士達は獣兵衛の前に立ち塞がった。
「そうですか。まだ居座るというなら、手合わせを一本…いえ、ここに居る者に一本ずつお願いしたい。」
「そっちが本命か、別にいいぜ。」
「へっ?」
騎士と獣兵衛がこの場での手合わせを決めてカタリナから変な声が出た。ソラとアンは慌てて彼女を訓練場の壁脇へと避難させる。
「何て野蛮な人達、何故出て行く話から勝負となるのですか?」
「恐らく
ソラは何となく勘付いていた。騎士達が妙に彼を意識していた事に…。茶菓子とカタリナなど結局は言い掛かりのネタで獣兵衛の腕がどれ程のものかを確かめたいのだ。
「獣兵衛さん…。」
騎士達と睨み合う獣兵衛を遠目に見つめるカタリナ達。あれだけ屈強な騎士達を前に平然としている獣兵衛に目が離せなくなっていた。