宮廷魔導師団本部で御園愛良は宮廷魔導師団師団長ユーリ・ドレヴェスの指導を受けていた。彼の講義で魔法への理解を高め、無詠唱魔法を身に付けるのが彼女の目標である。隣にはソルシエよりカタリナ達と一緒に来ているマリア・キャンベルもユーリの講義を一語一句聞き逃さず聞いている。
(もっと知識を高めて無詠唱の仕組みを見つけなきゃ、私がやらなきゃいけないんだ!)
愛良の目標は無詠唱による魔法発動を身に付ける事。先の襲撃で愛良は人を殺めてしまった。その重みは今も心に押し潰している。だが、大切な人達を守りたい気持ちでその罪の重さに耐えていた。
(私の魔法効力はアイラさん、セイさんの二人に比べたらとても弱い。魔法の詠唱発動を会得してもっと魔力を強くしなきゃ!)
実はソルシエの魔導師は詠唱による魔法発動方法を知らず、マリアは治癒魔法を詠唱による発動を覚え、更に魔法力そのものを鍛えなければならなかった。
これがソルシエ王国とスランタニアの魔法学の差なのであろう。マリアにとっては今回の友好派遣は幸運であった。
そんな折、講義室にエリザベス・アシュレイが訪れた。
「これはこれはアシュレイ嬢、御機嫌よう。貴方も私の講義をお受けに来られたのですか?」
「御機嫌よう、ドレヴェス様。実は先程ソルシエ王国の使者が到着されたと知らせがありましたのでマリアとアイラを御迎えにあがりましたの。」」
ドレヴェスは少し驚いて二人の顔を見ると愛良はキョトンとした顔でドレヴェスを見つめ、マリアはソルシエより迎えが来た事が舞い上がってしまい目を潤ませて思わず立ち上がっていた。
「エリザベス様、カタリナ様へはお声はまだですか?」
「実は今は騎士の訓練場にいて先に報告を入れましたが…、ジュウベエ様が鍛錬していた第二騎士団とトラブルになってしまいまして…そのトラブルに自分も関係していると言われまして、ならマリアさんとご一緒して訓練場に行こうかと…。」
「そうですね、トラブルならカタリナ様に加勢に行かないと行けませんね!」
“ふんっ!”と気合いを入れて両拳を握るマリアを見てエリザベスから苦笑いが零れる。
「アイラも行きましょう。」
「…えぇ。」
まだ、アシュレイ邸での襲撃のショックが抜けていない中で魔法の講義に没頭する彼女からは以前の明るさは影に隠れてしまい、エリザベスにはそれがいたたまれなかった。
「嬉しそうそうですね、マリアさん。では、私も行きましょうか。」
何故かドレヴェスも行く気満々なので三人とも訓練場の方へ向かう事になった。
「ドレヴェス様、宮廷魔導師としてのお仕事は?」
エリザベスが尋ねると彼はニコリと笑う。
「講義も流れますから暇潰しです。」
「いえ他のお仕事の方…」
「さっ、いざ訓練場へっ!」
エリザベスは思った。
(あぁ、お仕事から逃げる気なんですね。
宮廷魔導師舎を出る時のトレヴェスの足取りは弾んでいた。
ソルシエ王国の紋章を飾った四台の馬車とスランタニア王都の関門をくぐり、先頭の馬車からソルシエ王国第三王子ジオルド・スティアートは窓越しに街並みを眺めた。
(国民に笑顔が満ち溢れている。…この国が良い国であると唄っている。
…だが、私は許す訳には行かない。私からカタリナを奪おうとするスランタニアを!)
ソルシエの馬車は城下町をゆっくりと城に向けて抜けて行った。