三日後、王城城門にはスランタニ第二騎士団15人分隊が整列し、カタリナ達ソルシエ御一行と美園愛良と牙神獣兵衛が集まっていた。ジオルド、アラン、ニコルは腰に鞘に収まった剣をぶら下げ、全員が深緑の作業着に黒革ブーツ、頭に日除けバイザーを被る。頬っ被りは野良作業ではないので流石にしない。愛良も同じ服装を着せられ、第二騎士団と獣兵衛がカタリナ達を奇異な目で見つめていた。
「まっ、まさか他国に来てまでこの様な格好をさせられるとは…。」
「すみません、ジオルド様。しかし森の中を散策するならやはり汚れても目立たない服装が良いです。バイザーで日焼けも防げます。」
ジオルドはソルシエ王子としてのブライドのせいで嘆くがカタリナに言われて強くは出れず、アランはゲラゲラ笑いながら楽しんでいる。
「しかし細かいデザインは違えどスランタニアにもこんな作業着があったのですね。」
「カタリナ様、この作業着もとても素敵です。」
メアリは変な関心を示し、ソフィアは目を輝かせながらカタリナを褒めちぎる。実はこの作業着をデザイン考案したのは聖女…小鳥遊聖で研究所で土いじりがメインの日にはこの服装を着、それこそ頬っ被りをしてヨハンやジュードに笑われていた。…が、正式に薬用植物研究所の野良作業着となっていてヨハンからソルシエ一行に提供されたのである。
「ありがとうソフィア。…では、ジークフリード様がやっと外出の許可を下さいましたので、これからスランタニア第二騎士団に付いて近隣の森へ
第二騎士団が起立整列してる横てで“ワイのワイの”と騒ぐカタリナとその仲間達の差を見て獣兵衛は失笑していた。
「何なんだこの空気の違いは…。」
…とボソリ呟き、それを横で聞いた愛良は微笑む。
「無理もないです。カタリナ様…アシュレイ邸が襲われたあの日から保護と云う形で王宮に軟禁状態でしたから、リズが偶に御庭でお茶会を開いてくれていたけど…。」
愛良は獣兵衛とはかなり砕けた接し方をしていた。あの日…仕方がなかったとはいえ人を殺めてしまい嘆く彼女を肯定し、慰めたのは牙神獣兵衛でそれからは彼なりに愛良を気にかけてくれていた。
「…聞いてんだろ、その遠足とやらの目的。」
「はい、だから同行を決めました。」
「そうか。」
「覚悟は決めています。」
愛良の言葉に獣兵衛は顔をしかめ、口をへの字に歪ませる。
「覚悟なんてのは簡単に決まるもんじゃねぇよ。その時最良の方向へ向きゃあ良いんだ、気負うな。」
「…でも。」
「まだ何か起きると決まった訳じゃねえ。お前さんもあのお貴族さんと同じ様に気楽に行きゃあ良いんだよ。」
そう言って掌を広げて愛良の頭をペシペシ叩く。愛良は少しムッとしてみせるが、あまりイヤな気持ちにはならなかった。
そしてそんな光景を王宮の窓からは楽しげに微笑んでいるジェフリー・スチュアートとラーナ・スミスがはしゃぐカタリナ達を眺めていた。
「あれはもう見た通りのハイキングだ。“敵”をおびき出す為の囮とは思えないな。」
苦笑いをするラーナにジェフリーは微笑ましいとばかりに答える。
「はは、その敵が必ずしも現れるという訳ではないだろ。楽しんでくれればそれでいいさ。」
「お前はどうするんだい?…カタリナを連れて早々にソルシエに帰るか、それとも三国会談にし、参加するのか…?」
ジェフリーはラーナに笑いかけるが、目は笑ってはいなかった。
「参加してジークフリード王、パレッティア女王と会談をするよ。今後何かあった際にはソルシエもカタリナ嬢を守れる立場となるべきだからね。…切り捨てるなど絶対にしない。」
「そうか。なら魔法省も彼女の後ろ盾として動かねばならないな。」
「元々そのつもりだったんだろ、君は。」
彼の言葉にラーナはちょっと寂しく微笑む。
「そんな事はないさ、彼女を切り捨てるという考えが消えた訳じゃない。私は私の仕事をするだけさ。」
(ジュウベエだったか、カタリナ嬢を“餌”と言ったな。
…