スランタニア近隣の森は新人騎士団員、騎士見習いが様々な訓練の為に来る場所だ。聖が召喚される前には既に瘴気の沼は浄化され、森の獣も少しずつ増えていた。
カタリナ達は森の入り口付近に馬車馬、三人の見張りを置いて12人の第二騎士団が各6人に分かれて前後に着き、カタリナ達は森の散策を楽しんだ。
「カタリナ様、あちらに鹿、鹿の親子がいます!」
「ほんとだ、可愛い〜。」
カタリナの左側にいたソフィアが指差した先の鹿の親子を見てカタリナは目を輝かせると今度はメアリがカタリナの右腕をギュッと掴む。もう両手に花状態である。
「カタリナ様、あちらに猪がいました。怖いです!」
「メアリ、あまり大きな声出さないで。刺激しては駄目よ。」
メアリは掴んだカタリナの腕に自分の両手を絡め、ピッタリと身体を密着させる。
「はい、カタリナ様。カタリナ様は私が守りますね。」
するとソフィアが「メアリ様ズルいです!!」と声を上げカタリナの左腕に抱きついた。
「私もカタリナ様を守りますっ!!」
二人は両側からカタリナをプレス、彼女は二人にもみくちゃにされてしまう。
「そっ、ソフィア、メアっリィ、落ちっついて。」
その背中を羨ましげに見つめるジオルド、アラン、キースが続いてマリアとソフィアの兄であるニコルが珍しく並んで歩いていた。
「メアリ様もソフィア様も楽しそうで良かったです。」
「ジオルドとアランは二人にカタリナを取られてご機嫌斜めだが、君はいいのかい?」
「私はスランタニアに来てからずっとカタリナ様を独占してましたから。」
「そうか。」
会話はそこで途切れるが二人はカタリナ達を笑顔で見守っていた。そして二人の後ろにも両手に花…かは別として二人の男性を左右に置いた愛良がいた。
「いや〜、この森には久し振りに来ました。なかなかに気持ちの良い森になりましたねぇ。」
彼女の右側でユーリ・ドレヴェスが気持ち良さげに胸一杯に空気を吸い込み、愛良は乾いた笑いをする。そして彼女の左側には牙神獣兵衛が怪訝そうにドレヴェス師団長を睨む。
「おい、何だこの優男は?」
「獣兵衛さんは顔を合わせる機会がありませんでしたね。この人はユーリ・ドレヴェス様、スランタニア王国宮廷魔導師師団長で王国随一の魔導師なんです。」
…と、愛良が紹介するとドレヴェスがヒョイと顔を出す。
「今は魔力量はセイ様が上なので随二です。そして愛良様も私を追い越す程の成長速度なので随三になるかもです。」
ニコニコと笑顔の彼に獣兵衛は気味悪さを感じながら、敵じゃないのが幸いとも感じた。
「飄々とはしているが…恐らくこの国で一番強い、身体鍛えてんな。」
「いえいえ、騎士様方程ではありませんよ。魔法学の合間に少しだけです。」
「ふん、少しねぇ。」
ドレヴェスと云う男を獣兵衛は“能ある鷹は爪を隠す”と言う言葉が服を着て歩いている様に思えて口をへの字にして視線を逸らす。獣兵衛にはドレヴェスが苦手なタイプの様だ。
そんなドレヴェスだが、愛良は素朴な疑問を彼に投げかける。
「あのドレヴェス様。」
「何かな、愛良様?」
「私は許可を頂いて同行していますが、ドレヴェス様は宮廷魔導師団のお仕事は…?」
「副師団長にお任せしました。」
「…そう、ですか。」
愛良は“ああ、やっぱり…”と言わんばかりの呆れ顔になるが、ドレヴェスはニコニコ顔を崩さず、し〜、と唇に人差し指を立てる。
「今日、私は病欠になっています。だから副師団長には内緒なんです。」
それを聞いた愛良は冷や汗を一筋流し「はぁ…。」と返事を返してニコリと笑い返した。
カタリナ達が森の散策を楽しむ中でアン・シェリーは珍しく主である彼女から離れた…愛良達の後ろにいて後ろめたく彼女の背中を見つめていた。