聖女の帰還…。
その日、クラウスナー領よりカイル・スランタニア率いる第一・第三騎士団がスランタニア王都に帰還した。スランタニア王ジークフリート、第二王子であるレイン、カイルの婚約者であるエリザベス・アシュレイが家臣側近と共に出迎えた。
かなりの大人数による規模に小鳥遊聖は圧倒されるが、仕方ない事でパレッティア王国の若き女王…ユフィリア・フェズ・パレッティアとその王姉殿下であるアニスフィア・ウィン・パレッティアが友好同盟ね為に来賓として来ているのだ。
二人は馬車を降りてジークフリートと挨拶を交わして側近と先に王宮へと入り、カイル、聖とアルベルトはレインとエリザベスに迎えられた。
「兄上、クラウスナーでの御公務、お疲れ様で御座います。」
「カイル様、無事に御帰還、心より御祈り致しておりました。」
レインとエリザベスより労いの言葉を貰い、頷くカイル。
「セイもお疲れ様…、大丈夫でしたか?」
「うん、
彼女は笑うがかなり疲れている様であった。カイルはアルベルトに後は頼むと目配せをして自分も側近のダミアンと共に王宮の中へと戻った。
「アシュレイ嬢、出来れば早くセイを休ませてやりたいので…」
…と、アルベルトの言葉をレインが遮る。
「すまないホーク団長、彼女に急ぎの頼みがあるんだ。セイ様、疲れているのは理解しているのだが、ジュウベエ・キバガミの治癒をお願いしたいんだ。」
「獣兵衛さんの?…何かあったんですか!?」
聖の問いにエリザベスが答え、聖とアルベルトは獣兵衛が休んでいる治療所の患者室へと急ぐとそこにはカタリナとマリア、アンとソラに知らない女性二人と男性三人。そして愛良とユーリ・ドレヴェスがいた。
「ドレヴェス様まで…。事情は聞きました、直ぐに獣兵衛さんの左手の再生をします!」
聖は患者室に入り獣兵衛の姿を確認、既に怪我らしい怪我はユーリとアイラ、マリアの三人の治癒魔法で治していた。しかし…。
「獣兵衛さん、左手…見せて下さい。」
「…本当に
獣兵衛は半信半疑ながらも素直に失くした左手首を聖に差し出す。聖は両掌をふさがっている左手首に添え、皆が心配しながらも彼の手の再生に釘付けとなる。
「
聖がそう唱えると彼女の添えた手が金色に輝き、獣兵衛は失くなった筈の左手首に感覚が戻っていくのを感じた。そして塞がった筈の箇所が断面が剥き出しになったかと思うと骨、神経、血管、筋肉、表皮と瞬時に現れて一瞬の内に左手首が元通りとなった。周囲は歓声がわいてユーリは良いものを見たとばかりにニッコリと笑う。そして当の獣兵衛は驚きのあまり開いた口が塞がらなかった。
「動きますか、獣兵衛さん?」
彼は握る開くを繰り返した。
「あぁ、動くぜ。ありがとうよ。」
「私には…これくらいしか出来ませんから。…出来ないのに…また、沢山目の前で…騎士さん達が…」
聖は下を向いてしまい、涙がポロポロと落ちて行く。
「セイ…。」
そんな彼女をアルベルトが気遣い、肩を抱くと獣兵衛が二人から視線を外す。
「サッサと休ませてやれよ、色男。」
「あぁ、ありがとう。」
アルベルトは聖を治療所から連れ出し、彼女の部屋へと送ったのだった。獣兵衛も寝ていたベッドから降りて治療所を出て行く。
「セイ。」
「聖さん…。」
エリザベスと愛良は彼女のただならない様子に心が痛む。クラウスナー領でもまた鬼門衆、そして新たな敵に襲われてまた多くの犠牲が出ていた。それが自分に原因があると聖は思ってしまい精神的に不安定になっていた。
その頃、聖達と共に王都へと来た律花、ミア、メリッサは何故か厩舎にいた。メリッサは笑顔で自分達の荷馬車を引いてくれている馬に餌をやり、ミアは他の馬を歩きながら眺めていた。
「リリィ、私達…
ミアの問いに干し草の山に寝転ぶ律花は答えられずにいた。
(あの怪物…か。不死身の怪物になってこの異世界に来ていた宝蔵院胤舜に…天草四郎時貞。鬼門衆、そして使われたグラズヘイム社の戦闘ドローン。まさか、“ブラッド・イングラム”も…?)
「此処にいたか三人とも。」
いきなり声をかけられたミアとメリッサが振り向いて律花も飛び起きた。
「アニスフィア様?」
厩舎の入り口には王宮へ行った筈のアニスが不敵な笑顔で立っていて律花を見ていた。
「ねえ、少し付き合ってくれない?」