ユフィリアとアニスフィアの提案による対敵勢力部隊の設立は三国同意で成立はしたが、その部隊の拠点と指名された人員には少しだけ揉めた。
パレッティアから予想したとはいえ小鳥遊聖とカタリナ・クラエスの名があったからだ。ジークフリートは聖女を護るのは自国の務めとして渋り、婚約者であるジオルドだけでなく弟であるアランまで強く反対をしたのだ。
因みに他の人員はリリィこと石動律花、ミア、メリッサ。牙神獣兵衛である。リリィ達と獣兵衛はスランタニアの客将なので問題はない。そして彼女等だけでなくアニスはクラウスナーを離れる前に甲賀弦之介にも声をかけていた。彼等はクラウスナーを離れないつもりではいるが、協力要請を強くお願いし…承諾してもらっていた。時期を見てパレッティアへ直接向かう様に伝えている。
ソルシエ第四王子であるアラン・スチュアートは荒い口調で女王ユフィリアを非難した。
「カタリナをまるで一兵卒みたいな言い方で、お前何様のつもりだ!」
「カタリナをお前達に渡すつもりはないぞ、ユフィリア女王!」
アニス、ユフィリアとジオルド、アランの間に強い火花がぶつかる。
「誰がカタリナ様を一兵卒とか言ったよお、末弟
アニスが青筋をこめかみに刻んで勢い良く立ち上がり狂犬の如くドスの効いた怒声をアランにぶつけると、思いもよらない反撃にアランは肩をビクリと跳ね上げジオルドも思わずアランを守ろうと盾になってしまう。
「
「ユフィ!?」
切れかけたアニスにユフィリアは視線を向けずにニコリと笑い名前を呼ぶ。彼女が
そしてその時アニスは…
「
「…はい。」
青褪めた顔でアニスは頷いて跳ね飛ばした椅子を自分で戻して座る。まるで怒られた子犬である。そしてユフィリアは話を戻し、二人のソルシエ王子に自身
の…部隊の意図を伝える。
「両王子、私共がカタリナ様を御指名致しましたのは御助力のみではなく彼女を守護する為です。セイ様に致しても同じ、精鋭猛者の中に置いておく事で間者暗殺者から守り、攻めに転じた際には彼等に聖女の加護を与えてもらいます。
そしてカタリナ様は正しくその精鋭猛者の一人となるのです。」
しかしジオルドは納得しなかった。
「部隊とは謂わば軍隊、貴女はカタリナに人を
その言葉に強く反応したのはカタリナだった。敵は容赦がない。アシュレイ邸でも、クラウスナーでも…そして先日の森でも、カタリナは仲間を護る為に敵の命を奪えるのか…自分に問い質す。答えは明白だ。
(私にそんな事出来ない!)
「それを決めるのはカタリナ様ですわ。」
ジオルドの問いにユフィリアは即答する。カタリナも驚いてユフィリアを見ると彼女もカタリナを見つめていた。
「ユフィリア様…。」
「カタリナ様、貴女はあの森で敵である少女を殺そうと思いましたか?」
「そんな、そんな事思わない!私はみんなをポチと一緒に守ろうと…っ!」
「それで構いません、その思いを持つ貴女様と共に戦いたいのです。目の前で人が死ぬかも知れません。助けられないかも知れません。…ですがそれでも、貴女様にパレッティアに来て頂きたいのです。」
カタリナはユフィリアの言葉を強く噛み締めた。聖も皆を守りたいと強く思うが、もっと現実的な事を考え、獣兵衛に話を振る。
「獣兵衛さん、いきなりだけど…もし、私がスランタニアに残ったら…鬼門衆は攻撃してきますか?」
壁際にいた獣兵衛は眉間を寄せて聖に視線を向け、口を開いた。
「確実に来る、そして次は高い確率で関係ない奴等が沢山殺されんな。」
それを聞いた聖、そしてジークフリート達スランタニアの者達は絶句する。
「奴等は自分の野望の為に村一つ皆殺しにするぜ。」
それはもう彼女がこの国には居られないと言われたも同じであった。
「ジュウベエ殿!」
アルベルトが彼の前に立って彼の胸倉を怒りに任せて掴み上げると、驚いた聖は席を離れて二人の間に入りアルベルトを止めた。
「アルベルト様、止めて下さい!」
「しかし、彼は…っ!」
そこで彼は乱暴に獣兵衛の胸倉を放した。自分の行為が八つ当たりでしかないと分かってはいた。その光景をラーナ・スミスは冷静に見つめ、ジェフリーに意見した。
「ジェフリー様、我々ソルシエはもう答えは決まっているでしょう。カタリナ嬢をパレッティアへ派遣致しましょう。」
「ラーナ、それしかないのか…?」
「ジオルド様アラン様には申し訳ないがソルシエにはカタリナ嬢を守り切るだけの戦力も精鋭もいない。今のジュウベエ殿の話がソルシエにも起こらないとも限らないのだからね。」