ジオルド、アランと律花、ミアとの試合についてアルベルトと獣兵衛は会話を交わしていた。
「リリィ嬢が投擲した
「上空からの投擲に小娘自身の二段攻撃、剣じゃなく魔法とかでも防げただろうよ。まっ、結果は変わらんかもだがな。」
彼の言う通りだ。例え炎で苦無を魔法で防いでも律花は怯まずにジオルドに突っ込んでいただろう。彼女がどこまで考えていたが分からないが見事な戦い方だとアルベルトは思った。
試合の後はジェフリーは律花とミアを見かけると激しく圧を効かせて睨み、その度にラーナに横っ腹を小突かれていた。
「
それを見る度に呆れたジオルドとアランが謝ってくれた。弟達がコテンパンにやられたのを見せつけられて憤慨している様だ。
そして試合から二日目、パレッティアへ旅立つメンバーが決まった。カタリナ・クラエス、牙神獣兵衛、石動律花、ミア、メリッサ。そしてカタリナの護衛に引き続きソラ・スミスが付く。
そしてジークフリート王も腹を決めて小鳥遊聖の出国を許し、護衛として婚約者であるアルベルト・ホークが付いた。旅支度が出来次第、出発となった。そんな折に…。
「いいえ、カタリナ様について行きます。」
クラエス家メイドであるアンがどうしても付き添うと一歩も引かずカタリナを困らせていた。メアリとソフィアはアランとニコルに何とか説得され、アンの説得にキースも奮闘するがアンに論破されタジタジである。
「旅の途中、そしてパレッティアでカタリナ様を朝に同じ時間に起こせる方が居られますでしょうか?カタリナ様のお着替えの用意は、カタリナ様のお食事のお世話は、お口は誰がお拭きになられますでしょうか?」
「いや、そうだね。僕かアンしか姉さんのお世話は出来ないよね。」
そこで自分も出来ると主張を入れるがクラエス家の跡継ぎとなるキースはついて行く事は出来ない。
「ちょっと待って、私口拭くくらい出来るわよ!」
そこで反論するカタリナをアンとキースが“嘘だ。”と言わんばかりに目を細めてカタリナを見つめた。
「二人共何かひどい…。」
そんな言い合いを止め処なく続けるクラエス家にジオルドとアランが参戦、意外にもアンの味方となる。
「カタリナはアンがいないと自力で朝起きられないだろ。」
「着替えもアンがいれば時間が掛からないんじゃないかい、カタリナ。」
アランとジオルドはアンがいれば生活に関して安心なのだろう。アンと全く同じ事を言う二人にカタリナは悔しげにむくれる。
「でも、パレッティアはこれから危険になるかも知れないとユフィリア様が言ってましたのに。アンを危険に晒すなんて…。」
「なら、君がアンを守ってやりなさい。出来るだろ、カタリナ嬢。」
ジェフリーの言葉にカタリナは少し驚く。カタリナとしてもアンがいてくれるのはとても心強い。しかし…。
「アン、一つ約束して欲しい。もし、私がピンチでも自分を優先して欲しい。」
「それは状況によります。カタリナ様の身が危険なら私が身を賭してお守り致し…」
「じゃあ絶対駄目、お話終わり!」
「カタリナ御嬢様!?」
カタリナは話を無理矢理終わらせ、アンに背を向けた。
その夜、カタリナは皆が寝静まると寝室を抜けて王宮を軽く散歩し、気付けば城のエントランスまで来てしまっていた。
「はぁ。」
深い溜息を吐いて階段に座り込むと後ろから「カタリナ様。」…とある声で呼び掛けられ振り向く。
「マリア…。」
「すみません、寝つけてないのに気付いていたのでついて来てしまいました。…アンさんの事ですか?」
そう言って彼女も階段に座りカタリナに寄り添った。
「うん…、本心では来て欲しいんだ。でも、森でサラが口にした人の名前…クラウスナーで騎士さん達が聖さんの前で一杯殺されてしまったって聞いた。その犯人と同じ名前だった。」
「アマクサシロウトキサダ…ですか。」
「天草四郎時貞、私の前世の国の歴史の人…なんだけどまさかサラと繋がってるなんて。それに、私…自分もどうなるか分からないのにアンの身まで守れるか自信ないよ、もし私を守ってアンが死んだりしたら!」
思わず最悪の想像をしてしまうカタリナは涙を滲ませて両手で顔を覆った。マリアはカタリナの両肩に手を置いて話しかける。
「無責任な事しか言えなくてすみません。でもきっと大丈夫だと思います。聖女様がいて、ホーク様もジュウベエ様もお強いです。リリィさんミアさんはジオルド様アラン様に勝ってしまわれました。ユフィリア様とアニス様はあのドラゴンスレイヤーです。そしてカタリナ様ポチさんはあの魔物の群れをやっつけてしまわれる程の
あっ、メリッサさんは…、お料理がお得意だと聞きました。」
マリアはカタリナが悪役令嬢に転生した事をこの国に来た時に聞かされていた。悪役令嬢が何なのかは知らないが、きっとカタリナが強いのだから凄い存在なのだろうと思っていた。…“ゲーム”では主人公の筈の彼女の敵役なのだが…。
いつの間にポチもカタリナの影から出て来て太腿に乗っかり見上げていた。
「そっか、皆凄い人達が集まってるんだもんね。私もその凄い人の一人なんだ。なら、アン一人守れないでどうするんだ、悪役令嬢カタリナ・クラエス!」
何かを決意し、見上げるポチと見つめ合いながら両手に握り拳を作った。そして拳を開き隣のマリアにそっと両手を回した。
「マリア、ありがとう。」
「カタリナ様…。」
マリアもカタリナの背に手を回し、二人の温もりが重なり合うのだった。