数日前、レビオス王国首都バルトレーン王城にてレベリオ騎士団団長…アリューシア・シトラスは国王グラディオ・アスフォード・エル・レベリスに呼び出され王座の前にいた。
「レベリオ騎士団、アリューシア・シトラス。此処に罷り越しました。」
「うむ、ストラス騎士団長よ。先日報告があったバルトレーン冒険者ギルドのスランタニアギルドサミット会議で起きた案件についてだ。」
スランタニアの冒険者ギルド三国サミットの件、アリューシアは既に大筋はベリルより聞いていた。鬼門衆なる賊…魔人の襲撃によりサミットは流れ、彼とブラックランク冒険者スレナ・リサンデラが魔人…アマクサシロウトキサダと交戦、倒す事は出来ずとも退かせる事は出来た。…と話をされていた。
ギルドより王家に報告が入るとは言っていたが意外にも早く国王が動いたとアリューシアは思った。
「パレッティアとの魔法交流を此方から持ち掛け、近々魔法師団から数名を派遣する事となった。
それにより、護衛としてレベリオ騎士団より十名程を魔法師団について行って欲しい。団長である
アリューシアの顔がパアッと明るくなるが直ぐに無表情を取り隠した。彼女はベリルがビデン村にいた頃の門下生である。十年前に彼の道場を去り、その後に騎士団長となり…ベリルを騎士団指南役に引き入れていた。
因みにアリューシアはベリルに対して恩師以上の気持ちを抱いていて既に同じ門下生にして姉弟子であり、犬猿の仲であるスレナ・リサンデラに外国への旅を先に行かれてしまった事に悶々鬱々としていたのである。
しかし此処で少し違和感を感じる。
「畏まりました。しかし団長である私が国を出ても宜しいのでしょうか?
首都に残る騎士団にはヘンブリッツ・ドラウト副団長を残すので心配はないとは思いますが…。」
「構わぬ、
臨機応変…、また違和感を感じてアリューシアはグラディオ国王を見上げてしまう。国王の右には第一王子であるファスマティオ・アスフォード・エル・レベリスが座しており、左には第一…第二王女が並び一番端に第三王女であるサラキア・アスフォード・エル・レベリスが彼女に手を振っている。
彼女はスフェンドヤードバニアの第一王子への床入れが決まっているが対立するスフェン教教皇派の動きが怪しい為に延期していた。
そして国王はアリューシアを意味深に見据えている。彼女はただベリルと外国旅行と浮かれる訳には行かないかも知れないと思うのでだった。
レベリオ騎士団庁舎に戻ったアリューシアは国王の命令を伝える為に応接間にベリルとヘンブリッツを呼び伝えた。
「俺とアリューシアがパレッティアにかい、急過ぎないかい?」
「そうです、それに団長を国外とは、この国の守りが…それなら私がパレッティアに行かれた方が…」
「これはグラディオ・アスフォード・エル・レベリス国王陛下直接の御言葉です、覆す事は出来ません。それに私の留守を預かるのが副団長の役目、今後もありうる事ですよヘンブリッツ。」
「…了解です、アリューシア団長。」
ヘンブリッツは即座に考えを切り替えて返事をするがベリルは腕を組んで考え込んだ。
「…とすると、ミュイを家に残すのはな…。今度はルーシーも一緒だからな。一時寮に入るのをミュイとルーシーに相談するか?」
スランタニアの時はルーシーの家の侍女ハルシィに面倒を頼んでいたが今回まで頼むのは図々しいと思うベリルであり、その話をミュイと晩飯時に話した。
「…と言う事なんだ。俺が居ない間は寮へ入って欲しい。」
するとミュイは想像通り、嫌そうな顔をベリルに向けてきた。
「何でだよ、スランタニア行った時はちゃんと留守番してたろ。」
「ハルシィさんが偶に見てくれてたし、ルーシーも首都に居てくれたから安心出来てた。
しかし今回はそのルーシーも一緒に国外だ。もしかしたら“フィッセル”も行くかも知れない。彼女はルーシーの懐刀だからな。」
それを聞くとミュイは更に不機嫌になる。
「あたしは一緒に行けないのかよ?」
「これは国王直属の命令なんだ。それに…」
「それに?」
ミュイに続きを聞かれるがベリルははぐらかす。
「いや、何でもない。明日、ルーシーに寮の件を話しに行くよ…いいね。」
「チッ、分かったよ。」
珍しく強引なベリルにミュイは舌打ちし、彼は苦笑いをするが取り敢えず理解してくれたと取る。
ミュイは不貞腐れたまま夕飯を終えると自分の部屋に戻り
「それに…恐らく直ぐには戻れないかも知れない。」
スランタニアで対峙した魔人…アマクサシロウトキサダ。恐らく彼の存在が自分の運命に深く関わって来ると…、パレッティアへ行く事は運命の分岐点なのだとベリスは感じていた。