パレッティア国王執務室。今は女王執務室であるが現在は前王…オルファンス・イル・パレッティアが部屋の机で執務を行なっていた。かつては此処に座り王務をしていたが今は女王となったユフィリアが雑務をしている。だがそのユフィリアは留守中でその代わりに椅子に座り仕事をしていた。
その横では現在も宰相…グランツ・マゼンタが前王の雑務を手助けしていた。
「全く、馬鹿娘共め。立場を考えず動きおってからに…。」
オルファンスの愚痴にグランツはどこか嬉しげに笑う。彼…グランツ・マゼンタはユフィリア・フェズ・パレッティアの実の父親である。旧姓…ユフィリア・マゼンダはかつてはアニスフィア・ウィン・パレッティアの弟…アルガルド・ボナ・パレッティアの婚約者であったがアルガルドに婚約破棄を告げられた上謂れなき免罪で断罪されそうになった所をアニスフィアに助けられた。
アルガルドと魔法省長官であったシャルトルーズの企みに巻き込まれながらもコレを阻止。アルガルドは廃嫡となりシャルトルーズは極刑となったのである。
そんなこんなと王務に励むオルファンスとグランツだが、“コンコン”と部屋のドアがノックされた。
「何方かな?」
ドアが開くと其処にはパレッティア王国へ帰省途中であった筈のユフィリアが立っていた。
「只今帰りました。
「おお、良くぞ無事戻った、ユフィリア。早速で悪いが報告を…」
と、オルファンスが立ち上がるとグランツがユフィリアの前に立ち、“ゴンッ!!”と拳骨をユフィリアの脳天に振り下ろした。
「〜っ父様あ!?」
ユフィリアは床に両膝を落として頭を両手で押さえた。
「一国の主が何週間も国を空けるものではない。」
「うう、申し訳ありません。御父様…。」
例え女王と言えどやはり実父は強い。そして彼女がグランツに拳骨をされる様になったのは女王になってからである。ユフィリアは公爵令嬢の時は礼節を重んじ、自身を抑えた女性であったが、女王になってからは自我を強く押して意思を相手に伝える王の一面が出ていた。
そして、アニスフィアの破天荒に振り回されながら自分も一緒になり、今回も全ての許可を得た上でスランタニアへアニスフィアを追ったのである。その理由の大半が彼女であり、ユフィリアの行動原理はアニスが中心である。
因みにグランツは初めて彼女に拳骨を食らわせた際は悦に浸ったそうだ。
「ユフィリア、コチラに座りなさい。スランタニアでの話を聞きたい。」
「はい、
二人は入れ替わり、ユフィリアは椅子に座り、オルファンスとグランツにスランタニアでの書類を見せた。三国同盟に対敵勢力部隊…その拠点の決定書類…そして部隊の現在名簿であった。
「部隊選定した方々はアニスと一緒に明日の夕方には離宮に着くと思います。」
オルファンスは初の他国外交で突然の同盟決定をこなした事に感嘆する。
「しかし三カ国が同盟しなければならない事態か…、先の“襲撃”が此処まで大きくなるとはな。」
パレッティアは魔人…田宮坊太郎によるシャルトルーズの遺体強奪…奥方誘拐、スランタニアは鬼門衆の聖女誘拐未遂、ソルシエは闇の魔力関係の公爵令嬢襲撃、その根っこは一本である事。
「敵はシャルトルーズを甦らせている可能性があります。」
ユフィリアはその答えに行き着いた理由を話し、何らかの形で災いをもたらすかも知れないと伝えた。
「シャルトルーズについてだが、実は甦ったの知っていたよ。ユフィリア。」
グランツの言葉にユフィリアは驚く。
「御父様、何故其れを?」
「甦ったシャルトルーズがアルガルド様のいる辺境の城に現れて彼と接触したそうだ。」