アシュレイ家の庭園、そして屋敷の周りを数百〜千近い
「キラービーの大群!?何故この屋敷に…、他の使用人達は!?」
報告に急いで来た男性が答える。
「分かりません、何人かは屋敷に避難したのを確認致しました。今手分けをして全ての窓を閉めております!」
「分かりました。貴方は他の方達と一緒に避難を、負傷者はいてもキラービーが近くにいたら自分の安全を第一に行動をして下さい!」
「はい、この部屋への護衛も直ぐに向かわせ…」
「必要ありません、この部屋にはソルシエの護衛の方が既にいます。貴方達は先ずご自身の身を第一に守りなさい!」
エリザベスは語尾を強くして伝える。
「…畏まりました。」
エリザベスが今言える最良と考えた指示であった。負傷者の近くにキラービーの群がいたなら二次被害に見舞われるかも知れない。そしてこの部屋に使用人が集まるのも得策とは思えず、無理をさせる事は言えなかった。
「キラー…ビー?確かにこの国の周囲は森に囲まれているけど、屋敷を取り囲むって…どれ程の数なの!?」
聖も驚き、一瞬思考が鈍るが怯える愛良を見て周囲を見渡した。アシュレイ家公爵令嬢のリズ、宮廷魔導師で同じ日本から召喚された愛良。そして友好派遣魔導師のマリア、護衛のソラ、メイドのアン、マリアと同じ友好派遣魔導師でアンの主人…そしてゲームの登場、いや同じ日本からの…転生者であるカタリナ・クラエス。
「…リズ、私は負傷者を助けに行くわ。蜂に刺されたなら私の解毒魔法が効くと思う。」
「いけません、貴方に何かあればこの国…いいえ、貴女の婚約者であるホーク様に申し開きが出来ません!」
「リズ、私が此処で閉じ籠るのは最善ではないわ。リフレクションで身は守れる。私は大丈夫。」
「セイ…、ごめんなさい。使用人たちをお願い致します。」
「聖さん、わたしも行きます!」
「愛良ちゃん、行ける?」
聖の問いに愛良が頷く。
「いざとなれば火魔法で…」
「室内で火は駄目よ、愛良ちゃん。」
「あっ、ハイ…。」
「それじゃあリズ、ソルシエの方達を頼むわね。」
そう伝えて聖と愛良は部屋を出た。するとカタリナの影が歪み、エリザベスがそれに気付いた。
「カタリナ様、影が!?」
「あっ、ヤバっ、じゃなく出て来ちゃ駄目!」
そうカタリナが慌てると黒く小さい
「カタリナ様、それ…その“仔”は!?」
エリザベスは驚きの表情を固まらせ、アンが「ヒッ!」と小さい悲鳴を上げてソラの後ろに隠れた。
「出て来ちゃいましたね、カタリナ様。」
「ヒャンッ!」
それは仔犬の様に鳴きマリアが困り顔でその小さな黒玉を抱き取る。
「もう、今危険だから…駄目よ“ポチ”、ハウス。」
マリアに手渡されカタリナに抱き上げられた黒い仔犬はへっへっと息遣いカタリナの顔を何度も舐める。
「驚かせてごめんなさい、この仔はポチ。いろいろあって今は私の使い魔なの。
この仔がいるから私はソルシエの魔法省にいてスランタニアに来れました。」
ニッコリと笑顔になるカタリナを黒い仔犬の姿をした使い魔…ポチが彼女の頬に擦り寄る。
「使い…魔?」
さすがにスランタニアに使い魔を使役する魔法はないのでエリザベスはやはり驚くしかなく、ソルシエでもカタリナが
するとソラがポチを希望嘆願的発言を口にする。
「カタリナお嬢様、この蜂の大群…ポチが何とか出来そう?」
「何言ってるのよ、ポチ一匹でどうにか出来る訳…っえ?」
「わん!」
ソラの言葉を聞いたのか、ポチがカタリナの腕から離れてドアを…何と身体から一本の触手を伸ばしドアノブを回して開け放ち飛び出した。
「ポチィッ!」
そしてカタリナまでポチを追いかけ、「カタリナ様!!」とアンまでが主人を追って出て行ってしまった。
「ヤベェ、出遅れた!」
ソラも二人と一匹を追おうと部屋を出たがそこで直ぐに立ち止まった。彼は横目でカタリナ達とは反対方向を見るとそこには黒装束の人物がいて此方に近付いていた。ソラは護身用の短剣を抜いて黒装束に向き直り構えると相手の動きは早く見たことのない片刃の剣を逆手にソラへと斬りかかる。
短剣と片刃の剣が火花を散らし、ソラは同時にまだエリザベスとマリアがいる部屋のドアを乱暴に閉めた。