異世界転々忍法戦記   作:濁酒三十六

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アニスフィア・ウィン・パレッティア(白タイツ)
【挿絵表示】



王国に暗雲立ち込める…。

「領域治癒(エリアヒール)!」

 

 離宮近くの教会、昨日の爆発で被害に遭った宿屋の夫婦とお客が一時的に運ばれて魔法省所属の職員が治癒をしたのだが夫婦二人の全身火傷を治し治し切れず、アニスは離宮から小鳥遊聖を急遽呼んだのだ。

 アルベルトも護衛で一緒に来ており、何かを手伝いたくてついて来たカタリナと彼女の護衛のソラはみるみると治癒していく夫婦の姿に驚くしか出来ず、彼女の領域治癒は夫婦のみならずもう一人の火傷も完治させてしまった。

 

「凄い…、聖さん。あのひどい火傷を三人一緒に完治だなんて…。」

「私だけの力だけじゃない。私達が来るまで魔法省の人達がずっと魔法と看病をしてくれてこの人達の命を繋いでいてくれたから治せたの。」

 

 この教会に夫婦達が運び込まれ、魔法省の職員では治し切れないと分かったが、夜でそんな時間に聖達を呼んでは襲われかねないとアニスは判断して翌日に連絡を入れたのだ。それまで職員の治癒魔法と看病で乗り切ったのである。

 聖は認識阻害の魔法付与をした少し眼鏡が少し傾いたのでくいっと両端に人差し指をあてて直すと下を向いたカタリナが視界に入った。

 

「私は手伝える事があればと、ついて来たのに、何も出来てない…。」

 

 そんな事を呟き落ち込むカタリナに聖は彼女の正面に立ち首を横に振る。

 

「そんな事ないわ、あれ見て。」

 

 聖は夫婦を見る様施すといつの間にか仔犬の姿のポチが夫婦と戯れ、もう一人の怪我人にも走り寄って遊んでいた。

 

「ポチったらいつの間に?」

「ふふ、怪我人の心のケアも大事よ。」

 

 そしてポチはカタリナに飛びつき、彼女が抱き上げると顔をペロペロと舐め回した。

 

「もうポチったら。」

 

 その光景を見てアルベルトは微笑み、そんな彼の笑顔に聖も笑う。

 

「どうやら私が一番役に立っていない様だ。」

「何言ってるんですか、アルベルト様はカタリナ様と私の護衛です。」

「あぁ、そうだったな。」

 

 …などと言って笑う。その傍らで少し不満気なソラがボソッと呟く。

 

「俺もいるんだけどね…。」

 

 そして教会の扉が開き、アニスと彼女が警備として手配していた冒険者が入って来た。

 

「聖さん、ありがとう。本当に助かった。んでね、ちょっと此処である人達来るから少し待ってて。」

 

 暫し待つと教会の扉が開いて頭にバンダナを巻いた中年冒険者が顔を見せてその後ろの数人の三人の若者がいた。聖はその中の身体の大きな女性を見て「あっ!」…と、声が出てアルベルトも驚いた顔で彼女を見た。

 その背の高い逞しい体躯をした赤毛ポニーテイルの女性は前に出て一礼をする。

 

「クラウスナー以来ですね。アニスフィア・ウィン・パレッティア義姉殿下、聖女セイ・タカナシ様。騎士アルベルト・ホーク様。レベリス王国冒険者ギルドバルトレーン支部所属スレナ・リサンデラで御座います。」

 

 聖とアルベルトは挨拶を返し、初めて会うカタリナとソラが挨拶を交わした。ふと、アルベルトの反応に違和感を聖は感じた。

 

(リサンデラさんから視線を反らした?)

 

 彼女が思った通り、アルベルトは意識してスレナを視界に入れない様にしていた。彼のその行動には何となく覚えがあり、それが少し可愛く感じて聖はほくそ笑んでしまった。

 

「ご無沙汰、スレナ。積もる話もあるから、離宮へ案内するわ。」

「はい、お願いしますアニスフィア殿下。」

 

 アニスが右手を差し出し、スレナはニコリと笑い手を握り返す。握った手からは強い握力を感じアニスの笑顔が青醒めた。

 

(あ…、怒ってる。ベリルさんの事(・・・・・・・)まだ怒ってる、助けてユフィ…っ!)

 

 アニスはクラウスナーでベリルと試合をし、彼の頭を股に挟み込みスカートにスッポリと隠して勝つと云う卑怯極まりない勝ち方をしてしまっていた。

 それを見て激情したスレナが危うくアニスに剣を抜きかけた事件にまで発展し、その場を治めたのがユフィリアである。

 スレナは連れの仲間にアニス達と離宮へ行く事を伝えて離宮へとついて行った。

 

「…それで敵の監視を捕まえ、尋問中に宿屋を爆破された…っと。かつて戦った者の手口ならば、起きる可能性を考え、もっと慎重に動くべきだったな。」

 

 離宮に着いて、爆発の原因を教えられたスレナは簡単に獣兵衛と鬼門衆の関係を聞かされた上で直球で獣兵衛を責めた。

 

「返す言葉もねえ、ありゃあ俺の落ち度だ。…だが、当てずっぽうだったがこの国に裏切り者がいるってのはハッキリした。」

「…シャルトルーズがこの国に入り込んで隠れてるんだから…誰かが招き入れて囲ってるって事だもんね。…やっぱ反女王派なんだろうな。

…もしかしたら前の襲撃者の田宮坊太郎もそうなのかも、ユフィ…落ち込むだろうな。」

 

 アニスが俯いて口にする。国の貴族に裏切り者がいるなんて考えたくもなかった。

 

 パレッティア王宮、国王執務室ではユフィリア・フェズ・パレッティアが椅子に持たれ、難しい顔をしていた。

 

「ユフィリア女王、美しい顔が台無しで御座います。」

「御父様、変な冗談は言わないで下さい。それと二人だけの時は呼び捨てでお願い致します。」

 

 宰相であり、実父のグランツ・マゼンダが軽口で娘であり王となったユフィリアに窘められた。前王であるオルファンス・イル・パレッティアの養子になってはいるが、以前よりも父子として話す事が多くなっていた。

 

「貴族の中にシャルトルーズを匿っている者がいるのは明白、しかしそれを力尽くで証明しては女王派の中からも反発する者を出しかねないな。」

「はい、反女王派そのものは少数です。その貴族もアニスと私の話には耳を傾けてくれています。

…今、私と徹底抗戦の姿勢を崩さない者は魔法省の長老の方々のみ。…ですからレビオス王国の魔法師団の魔法魔術の技術交流の話が向こうから来たのは渡りに船でした。私がいない間に御義母様(ははうえ)が話を纏めてくれていましたから彼等がもう直ぐ来られるのも助かります。」

「魔法師団にはレベリオ騎士団団長…アリューシア・シトラス、そしてレベリス王国片田舎の剣聖…ベリル・ガーデナントが護衛としてついて来られるそうだ。」

 

 グランツは女王として立つ娘を見つめた。

 

「アニスともお話し致しました。ベリル様には私達と共に戦って頂ける様に頼み込むつもりです。」

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