パレッティア王国王都の入り口城壁門まで来たレベリス王国魔法師団とレベリオ騎士団一行だが門前にて、何処かの異国の衣装を着た四人組が門番の衛兵と言い争っていた。
「だから我等はこの国の女王に呼ばれて来ているのだ、この書状があると言うておろうが馬鹿共めが!」
「何だと、どうせ偽物だろうが。…お前みたいな何処の国とも分からぬ平民が女王の書状など持っている訳がなかろう!」
おかっぱショートボブの少女…蛍火が手に持った書状を振り回し、威勢良く大声で衛兵に罵声を浴びせ、横の狐目の男…左衛門がタジタジになりながらなだめていた。ルーシーが少し苛ついた様で不快な表情となる。
「何をしておるのか、わしが一言かましてやろうか。」
「ヤメて師団長、絶対言葉じゃなく
一緒に乗っていたフィッセルが冷静な顔付きで彼女を止める。…すると場を察したかの様に馬に乗ったアリューシアが馬車の窓をノックする。
「ルーシー様、私が見て参ります。どうか馬車に…」
「いや、わしも行こう。フィッセルは此処にいろよ。ちゃんと話し合いで片付けてやるでな。」
そう言ってルーシーは馬車を降りて前の衛兵と四人組の間へとずんずん進む。
「フィッセル、止めるにしても歯に絹着せる事は忘れずに…。」
「…はい。」
馬車の会話を聞いていたアリューシアに窘められてフィッセルはシュンとして反省した。門前の騒ぎは少女の怒りが仲間にも向けられ見境がなくなっていた。
「やめんか蛍火、それ以上騒ぎを起こすでない。」
「煩い、貴様が私に指図するでないわ甲賀の糸目男があっ!」
「いっ、糸目…。」
「貴様がのらりくらりと話しておるからこんな木っ端役人共がつけあがるのだ!」
これにはパレッティアの衛兵が顔を赤くしてカンカンとなり少女に対し腰の剣を抜いた。
「女いい加減しろよ、此処で…っ!」
「剣を抜いたなら此方も黙ってはいないぞ。」
蛍火を守る様に割って入る弦之介、その右手は腰の忍者刀を抜いていた。蛍火は彼が自分を背に置き、更に守ってくれた事に驚いてしまう。
「双方、剣を納めて下さい。それ以上はお互い無事では済まされません。」
其処へ現れたのは軽装の銀の鎧に身を固めた銀の長髪の女性…アリューシア・シトラスである。横には金髪ブロンドロングヘアの幼い少女…ルーシー・ダイヤモンドが並ぶ。
「私はレベリス王国レベリオ騎士団団長、アリューシア・シトラスです。今回、バレッティア王国魔法省と我が王国魔法師団との魔法技術交流において魔法師団護衛により参じております。
此方が我が王グラディオ・アスフォード・エル・レベリスの王印を押された書状です。」
そう口上を述べて書状を衛兵に渡した。
「おい、私達が先に…っ!?」
蛍火が横割りされたとアリューシアに文句を言おうとすると彼女は蛍火に手を差し伸べた。
「もし宜しければその書状を見せて頂けますか?」
「何故お前に見せねば…っ。」
…と、そこで弦之介が蛍火の肩に手を置く。
「見せてあげなさい。」
蛍火は一瞬、彼を睨むが少し考えて乱暴に弦之介の手を弾く。
「これ蛍火っ!」
それを見た朧が今まで口を噤んでいたの蛍火を叱りつけ、蛍火は態度は悪いが年相応のむくれ顔になる。やはり蛍火より朧の方が歳は上なので姉妹の様な構図になっていた。蛍火はそっぽを向いたまま書状をアリューシアに渡し彼女はそれを確かめると書状をルーシーに見せた。
「ほう、これは本物だな。…とすると貴様等、女王の客を蔑ろにした罪…不敬罪に処されるぞ。悪くすれば反逆罪にもなる。我が国なら不敬なら国外追放、反逆なら死罪じゃな。」
ルーシーの話を聞いた途端、衛兵達は青褪めてアリューシアから二枚の書状を預かり逃げ去る。実際にはルーシーに書状が本物かどうかは分からない。しかし衛兵にこれを確かめさせるなら簡単に脅すのが早いと考えたのだろう。
本物であればあの衛兵達はチビってしまっているかも知れない。
「お~い、話はついたかーい?」
弦之介達には聞き覚えのある男の声がし、ルーシーとアルューシアが返事を返した。
「おう、話は着いたぞ。ベリル。」
「今書状を確認してもらっています、もう暫くお待ち下さい。」
するとベリルの名前に名に弦之介達が反応し、朧がアリューシアに尋ねた。
「もし、ベリル様…とはもしかして
剣聖と聞いてアリューシアは目を輝かせ、いきなり朧の両手を掴んだ。
「その通りです、
…とうとう、先生の名声は国を飛び越え、この様な名も知れぬ異国の方にも広く知られているのですね!!」
「はっ、はぁ…。」
馬車から降りて来たベリルはアリューシアに手を握られた女性を見て思わず“あっ!”と声が出た。
「貴女は確か…、クラウスナーにいた…。」
「伊賀の朧で御座います。剣聖ベリル様、御久しゅう御座います。」
朧は着物の端を摘み、淑女風に挨拶をした。
「ベリル・ガーデナント殿、クラウスナー以来で、弦之介・甲賀にて御座る。」
彼も朧に習い、紳士風に右手を左胸にあて、ベリルに挨拶をした。
「あぁ、久し振り。そんな賢まらずにしなくてもいいよ。」
三人が再会を喜び合うのを見ていた蛍火は訝しげな顔をして左衛門に尋ねた。
「剣聖?あんな男いたか?」
「お主…、クラウスナーの
「あーっ、義姉殿下とやらの股座に頭を突っ込んだ男か!」
それを聞いたベリルがカチンッと急速冷凍されたかの様に固まった。その顔面は蒼白どころか紫がかっている。
そしてそれを聞いたアリューシアがベリルに振り向く。その目は目玉が飛び出そうな程に見開き、瞳は点となり赤いレーザーでも発してる様にベリルを射貫いた。
「冒険者ギルドの報告にはありませんでした。後で詳しいお話を…っ。」
「は…い。」
そんな愉快な光景にルーシーは愉快なネタを仕入れたとばかりにニヤリと悪い笑みを浮かべたのだった。