「因みに魔王城の探索はどうだったのですか?」
ユミエラ達の茶会はまだ続いていた。魔王城とはバルシャイン王国のアネモネ地方と言う場所にある。数週間前、魔王城を管理していた衛兵から黒髪の女の幽霊が出ると報告があり、エドウィン指揮の下で捜査された。
ユミエラも要請があったが、ちょうど風邪を引き断っていたのだ。
「幽霊なんていなかったさ。魔物も魔王と一緒に消え去り、城の中は鼠一匹出て来ず、拍子抜けだったぜ。」
ウィリアムが軽口次いでにわざとらしく溜息を吐く。
「念の為、アリシアに
エドウィンが何か気にかけた風に伝えた。彼が何を気にかけたは分からないが、それよりユミエラはアリシアが“浄化の術”が使える様になった事に感銘を受けていた。
ユミエラはアリシアの両手を掴んで握り締める。
「アリシアさん、成長しましたね。私、とても嬉しいです。」
「あ…、ありっ。がと…ござますううっ!!」
(痛い、いたいいいいっ!!)
ユミエラに握られたアリシアの手がゴリゴリギシギシ軋んでいた。
アリシア達が魔王城の探査を終えて王都に戻って数日、アネモネ地方…魔王城の魔王の間。凡そ一年前にエドウィン達と激しい戦いを行った場所に怪しい影が現れる。
一つは黒いフードを被ったフルフェイスの鎧面で顔を隠した男と黒くストレートの長い髪をした少女が闇を見つめる。
「やっと仕事が出来るわ。あんな奴等、貴方が殺してしまえば良かったのではなくて、
「馬鹿を言うな、相手は王族の嫡男と側近の息子達だ。無駄な騒ぎを起こすだけだ。」
「それもそうね、只でさえ
少女…カタリナを敵視し、天草四郎と繋がりを持つ闇の魔力の使い手であるサラは暗闇に右掌をかざし念じる。
「この地に刻まれし、残滓よ。我が呼び掛けに応えよ。」
瞬きをしない瞳に闇と狂気と瘴気が宿り、サラの闇の魔力が広がるとあらゆる場所から瘴気が噴き出、集まり形を成して行く。
真っ黒な全身鎧に悪魔の様な角を付けた兜を被った騎士となり、サラに跪く。
「魔王の残穢、これならカタリナの
スランタニアで手に入れた
ポチはドラゴン以上の力を持っているなら此方もそれ以上の魔を使い魔にしなければならない。この世界でドラゴン以上の力を持つ魔となれば、魔王しかないだろう。…となれば、このバルシャインで倒された魔王なら使い魔として使えるとサラは考えたのだ。サラはシュプールに向いてニタリと笑う。
「さて、私達も
王城の謁見から数日、バルシャイン王国の同盟入りを正式に決めて公表し、本日はユミエラとパトリックがパレッティアへ出立する日となっていた。ジェフリー、カイル達は既にソルシエ王国へと戻っており、その時にユミエラは愛良にスランタニアの聖女の事を託されていた。
“ユミエラさん、私も出来るだけあの人の傍に行ける様にします。それまで、聖さんを頼みます。”
彼女は聖と言う人物も愛良と同じく召喚者だと聞いたので少し興味があった。そしてカタリナ・クラエス…自分と同じゲームの敵役、悪役令嬢への転生者にも興味があった。
(悪役令嬢が主人公の好感度をカンストしてるとか、興味しか湧かない!)
ユミエラの服は赤い上着に白いズボンの戦闘服を着、パトリックも同じデザインの戦闘服を着着て黒いフードマントを羽織っていた。
「いいな、ペアルックですね。」
「いいでしょ。」
アリシアが羨ましそうにして何故かどやるユミエラ。パトリックは顔を赤くして下を向いてしまう。
「ユミエラ、パレッティアに着いたら必ず敵との戦況を連絡してくれ。」
「畏まりました、国王陛下。」
そして前後に騎乗椅子ならぬオーダーメイドで作られた竜乗椅子を背に取り付けられたリューが二人を乗せる為に伏せをし、二人が乗るとその大きな身体を起こす。
「それでは国王陛下、皆様、行ってまいります。」
国王、アリシア達に見送られてユミエラとパトリックを乗せたリューが羽を羽ばたかせて飛び立った。
「パトリック、シートベルトはしてる?」
「あぁ、長時間乗るとなるとこの椅子は助かるな。」
「スピードも今までより出せるわよ、リュー。」
「クアアアッ。」
リューが鳴き声を上げると今までとは比べ物にならない程のスピードを出し、パトリックの悲鳴が飛行機雲の様に伸びて消えて行った。