西の空に太陽が沈みゆくノリッジ野戦基地に1機の
液冷V型12気筒エンジン4基を鎮めつつ、至る所に燻り荒れ果てたこの基地にやって来たのだ。そんな基地を見たルミナスウィッチーズは釈然としていた。国内は安全だと思っていたが、これほどの傷を負ってまでロンドンに入らないよう防衛していたのだろうか?と言わんばかりだが、実は数日前に連盟空軍から攻撃を受けたのを彼女たちは知らない。てっきりネウロイの仕業だと思っているからだ。
そんなルミナスウィッチーズの上空では直掩としてアンナやバラッカを始めとするウィッチが上がっていた。ただ、アンナは胸騒ぎがしていた。東の空・・・遥か水平線上に黒いモヤがうごめいていた。
現状ではガリア奪還後から
「アンナ隊長?どうされましたか?」
「・・・いや気のせいよ。」
何かが起きそうで怖く、思わず嘘を吐いた。アンナの不安通りに地獄絵図になろうとはこの時は誰も予想だにしなかった。
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『海を征し、空すらも制する。』
リベリオン海軍の
ガウディが合図すると、数人のウイッチたちがレッドカーペットを運んではこれから降りるであろう歌姫たちに、未だに燻って汚れた基地を踏まないよう事前に仕立てたレッドカーペットだ。カーペットを広げるとその横には選びすぐれてた兵卒らが並ぶ。その先には、
「来ていただき感謝する。少佐殿。」
とガウディはグレイスに握手を求めた。それに答えるように笑顔で彼の手を握りしめるグレイス。ただ彼に対して未だに未練が残っている。
今回ノリッジ野戦基地での慰問活動を行うにあたって、ルミナスの活動だけでは戦う彼らを癒すのは限界がある。もっと根本的ななにかを成し遂げなければならない。そうグレイスが思っているうちに、予備役のウィッチたちがルミナスの荷物をおろしてはガウディの指示を仰いでいた。
彼・・・全部、基地司令である彼が1人でこなしている。彼にも休んでもらいたいという気持ちがグレイスの中で上回っていた。
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ルミナスウィッチーズが案内されてきたのは、ノリッジ野戦基地内部にある元ブリタニア空軍ノリッジ校に招かれた。かつての中央に属していた校舎が無断で接収された今、予備役のウィッチたちの宿舎に様変わりしている。予備役のウィッチの大半は亡命者で一部は元負傷兵だったり脱走兵や軍法会議に罰せられるウィッチがいる。が、軒並み今の基地司令官の武力によって納得したものがここにいる。
ルミナスが宿舎に現れるや否や、歓迎されているのを見て余程基地司令やその周りによって規律が守られているのを改めて感じた。その規律やその伊吹を感じているのはグレイスとアイラ、エリーにとどまり、他の幼いウィッチ達には感じ取れるかは定かではない。ルミナスたちに与えられた部屋は簡素でありながら、わずかに立派と感じ取れた。
ふわふわしたベッド。専属のウィッチ。熱を逃がさない防寒性の部屋作り。数多の織物や生地。舞台の仮置きなど、正に”ここ”で慰問の準備をしてください。って言っているような部屋だった。
ただベッドと衣装部屋など別で分けられておらず、1つの部屋で全て完結している。のほとんどは”何もかも揃っている”部屋を見て嬉しい悲鳴を上げたが、グレイスとアイラ、エリーの3人は不思議に思った。貧弱で中央と敵対関係にある独立組織にそこまでの財力があるとは思えない。
そんな3人に専属のウィッチが1つの紙切れを3人に手渡した。その紙切れには1文が綴られていた。
『慰問活動を快く許諾してくれてありがとう。』
単なる紙切れにたった1文を綴っていた。3人は顔上げて互いに顔を見合わせたが、ここの基地司令の考えは解らない。
この部屋や先ほどのレッドカーペットも含め、説明してもらいたい気持ちでいっぱいだった。しかし、それは叶わなかった。専属のウィッチが3人の叶わない気持ちを制した。
「本日から基地司令含む航空隊は警戒態勢にあたります。皆様におかれましては、ノリッジ大聖堂で慰問を行ってくれれば幸いとのことです。」
と付けてはお辞儀して出ていった。益々解らない。
ノリッジ野戦基地での慰問活動を決意してやってきたのに、ここの基地司令は亡命者よりも民間人への慰問に勝手に切り替えたのか?今、ここ時間帯に居ないのなら夜に会いに行くしかない。彼女たち・・・小さな歌姫たちが”それ”望まないことを強いられては意味が無い。
3人はそれぞれ決意した。今夜、彼に会いに行くと。