ルミナスウィッチーズが到着したその晩。夜が更け、小さな歌姫たちが眠りにつくと同時にグレイスとアイラ、エリーの3人は基地司令室に歩みを進めた。途中、彼の側近に出会って現在基地司令はハンガーにいることが解った。
3人はハンガーに向かうが、夜間任務中のウィッチから、
「今日は大聖堂で夜を明かす日なのでーーー」
と言われ、急いでハンガーに向かった。基地司令が扱うハンガーには灯りが付いており、3人はなんとか彼が出て行く前に間に合った。
油まみれのパイロットコートが目立つ基地司令ことガウディは、
「ねぇ・・・ちょっといい?」
グレイスが彼に呼び掛けた。彼は、
「何しに来た?」
と返すのみ。
彼としては、ルミナスの歌姫たちは明日から慰問活動があるというのに、こんな夜更けに来るとは思っても居ないかった。だからぶっきらぼうに返答せざるを得なかった。彼の粗暴な言動に戸惑いながらも、グレイスがもう少し詰め寄る。
「最初に予定してた野戦基地での慰問活動のことなんだけどーーー」
「悪いがそれは移動中で答えを出そう。ここでは話せん。」
と彼は顔上げて3人に向き合ってからハンガーの横に付けてあったブリタニアの自家用車・スタンダードに乗り込もうとしていた。車のドアを開けたときに、彼は言う。
「来ないのか?本当の理由を・・・」
と言ってエンジンをかけた。彼女ら3人はわけのわからないまま彼のスタンダード車に乗った。
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フクロウたちが鳴き、『月』が照らされては対象となる獲物を狩り取っていく時間帯になった。1つのスタンダード車がノリッジ市街地へとゆったりと走る。
運転する彼を横目にグレイス、後部座席にはアイラとエリーが座っていた。夜を照らし、遠くを見る彼がゆっくりと答えを出した。
「なぜ、大聖堂で慰問活動を移したと思う?」
3人はわからなかった。
「大聖堂には祖国に帰れなかった連中の遺骨がある。彼らを弔ってほしいんだよ。」
彼の答えに3人は声すら出なかった。
ルミナスはノリッジ野戦基地での慰問活動を中心に据えているが彼は違った。彼は先の戦いで亡くなった人を手厚く弔って欲しい気持ちがずっとある。だから、『今夜は大聖堂で夜を明かす』というのは、しぶとく生き残ってしまった彼が後悔でしかなく、先に亡くなった彼らを祈りを捧げるというものだ。
「だから、俺の答えを受け取ってくれるか?」
「「「・・・」」」
さらに黙ってしまう3人。一番心に響いたのはグレイス本人だった。裏切りに等しいことをされて、悲しみにくれていた。
彼には当初、『我々ノリッジ野戦基地にとって依頼をお願いしたい』と言ったのは他でもない彼、ガウディ大尉だ。なのになのに!どうしてーーー
「グレーシーには申し訳ないな。」
と彼は車を止めてグレイスに顔を向けた。
「俺の口数の少なさが原因でこうなった。でも彼らを野放しにしたら誰が祈りを捧げると思ーーー」
「貴方はどうして!いつもいつも目の前から消えたり、肝心なことを言わないの!」
グレイスは声を荒げた。それは彼でも解っている。充分に理解しているが、ワケがあっての離反であってーーー。
「”あの時”もどうして消えたの・・・あの子が来たのも貴方が”亡くなった”からって!」
グレイスの言葉に彼は衝撃を受けた。以前に聞いた話とまるっきり違っていた。
ただ分かったのはガウディの妹は、兄の戦死を受けて兄を探して第二陣に参加し亡くなった。
悲しき事実だった。それでもグレイスは声を荒げた。
「貴方は何も解ってない!全部1人で背負って消えてはひよっこりと出てきて!ーーー」
彼女言い分はもっともだ。だが彼は耐えられなかった。耐えられず彼はエンフィールド・リボルバーを取り出す。そして1発1発弾を込める。グレイスはそれを見ていないが、アイラとエリーには見てとっさに理解した。
彼はーーー。ガウディは自殺を試みようとしている。エリーはアイラにはもしもの場合に秘密裏に言ってあった。
ガウディはグレイスに恋をしていると・・・
その片思いであるグレイスからこれだけの衝撃的な言葉を言われ続けている。もう彼自身の心労は耐えきれないのだろう。エリーとアイラは頷いた。
『止めるしかない。』
アイラはこっそりと扉を開けて、外から彼を止める。立派なスタンダード車ではあるが、エンジンに鍵を差し込むだけのタイプであったが為に外からの介入が容易だ。グレイスは彼女たち2人と目の前の彼に眼中になく、つらつらと彼に対して文句しか言わなくなった。
そしてーーー
ダン!ダン!
乾いた金属の音2回ほど夜を切り裂く。グレイスは涙ながらに顔を上げる。アイラに自殺を阻止された彼が居る。
グレイスが責めて責めまくった彼が自殺を試みているのをただただ茫然するしかなかった。そして後悔の涙がさらに押し寄せるが、エリーによって彼が涙を流しているのを指摘されてそれに気づく。彼は乾きに乾いた涙を流した。
流せる涙は数滴。それが彼の限界だった。彼のエンフィールド・リボルバーはアイラによって確保されて彼は無気力に涙を流していた。それでもなお”涙”は流せずとも哀しみに明け暮れていた。
そしてーーーグレイスは彼に抱き着く。後悔が募る彼女と感情が無くなった彼。2人が”恋”の実を結ぶのは正にこの瞬間だった。
そろそろ休止宣言の準備しないと。