低地諸国に
地獄の釜の蓋が開くその瞬間まであと少し。
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1日目の慰問活動はあっという間に終わりをつげる。1日だけではノリッジの民草や名も亡き戦士たちですらの追悼も終わりきれなかった。
グレイスはよだれを拭く。
(いけない・・・彼の事ばっかり考えていたわ・・・)
その彼は横で指揮系統の乱れを練っていて予備役のウィッチを駆使して何とか乱れをなくそうとしていた。彼は穴の開いた防空網の編みなおし。グレイス自身は、スケジュールの見直しが必要だった。
幸いというべきか?互いに服は乱れずに済んでいる。むしろグレイスの衣服が多少のズレがあるものの、彼が所有していた空を征するコートで誤魔化していた。
そしてある程度、時を過ぎるとふと彼との時間を思い出してまたよだれが出てくる始末。その都度その都度、彼やエリーに
何があったのかはルミナスの歌姫たちには解らないし、野戦基地にいたウィッチたちも訳が分からない状態ではあった。いくら上下関係があろうとも、いくら恋人関係であろうとも”大人”の態度をとる2人。だがベルギガ撤退戦の英雄、ウォーカーとマリーネは薄々感じ取れていた。
この2人もまた故郷に生き別れた恋人を置いたまま出撃したからだ。
マリーネは経済の都、ロンドンに。
ウォーカーは眠らぬ街ニューヨークに。
それぞれ置いてきて、それぞれ”戦死”という理由で別れている。書類上、亡くなっていることから別れた恋人たちと会うことは無く、そのまま別の男と結婚したという話は耳にしている。元恋人に安心を得た2人には嫉妬心というものは無く、平和であれば結んでいただろうグレイスとガウディに心から結ばれるよう祈っていた。
とは言えここは低地諸国やベルリンへの中継基地でもあり、最前線基地でもある。中央こと連盟空軍との合流を果たしたいところだが、接収という名の基地徴収命令を拒み、連盟空軍との全面戦争に勃発したことでより連携が出来ずに終わる。戦争というのは醜いが、内部抗争はよりもっと醜い。彼らノリッジ野戦基地の言い分も分かるが、人類の平和の為の悪影響を及ぼすモノとして幾度の憲兵隊や特戦隊を差し向けている。
特にここ直近の月で多く、ルミナスたちが現地入りする直前の襲撃で4回目だ。ネウロイからの火の粉を振り払うのに精一杯の彼らにとって、連盟空軍との敵対は手痛い事柄でルミナスがノリッジに来てからグレスリー女史によって何とか歯止めが効いている。
兵卒の彼らは”基地司令”に思うことがあれど、全て”基地司令”が尻拭いしてくれている。それでいて下手に気取らない人柄は人望を集めた。そういう人柄だからこそ彼ら兵卒には各戦場や局地戦で戦い、そしてまともに帰れる基地がここにしかないという。涙ぐましくも防空ACEだからこそのだからこその信頼関係なのだろう。
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果実が実ってから僅か数時間後の今。
せわしい動きもまだらになり、ようやくルミナスの歌姫たちにも目を向けてくれた。
「歌姫のお嬢ちゃんたちには申し訳ない。」
ガウディはルミナスの歌姫たちに陳謝した。
「君たちの隊長を引き留めてしまい、次の段取りや指揮系統を疎かにしてしまったこと、しまいには防空網の穴を空けるような真似をしてしまいお詫び致す。」
とルミナスの歌姫たちのみならず、防空任務に当たっていた各小隊長にも頭を下げた。
「隊長!俺たちは気にしてない。な、マリーネ?」
「あぁそうだ。もとより倍の部隊運用するつもりだったからな。隊長、無理もないさ。」
とウォーカーとマリーネの”2人”の小隊長はまだ余裕を醸し出した。ただ、ウィッチの小隊長であるアンナと予備役の隊長であるバラッカは今後の不安要素として提案した。その提案に対してウォーカーが簡単に済ませる。
「確かにウィッチである2人の言い分は解ってる。戦力投射を誤ったら防空任務どころじゃないもんな。」
「それだけではありません。予備役を徴用することで予備役にいるウィッチにも悪影響がーーー」
「わかってる・・・士気にも悪影響を及ぼすのは自分でも解っている。」
アンナの言葉を遮りつつも顎に手にかけるガウディ。理解しつつも首を振るガウディ。
ウォーカーとマリーネは隊長の言葉を待つ。
「アンナとバラッカ、ウィッチの統制を任せた。それ以外はーーー!」
ガウディの言葉をかき消すように空襲サイレンが鳴り響く。耳がつんざくように彼らの言葉をかき消した。防空部隊とウィッチたちは即座に戦闘配備になった。
ガウディはグレイスをはじめとする歌姫たちに言う。
「あとの始末は俺たちに任せろ。愛してるぜ、ベイビー。」
と。
これが最期のやり取りだった。
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後にノリッジ防空戦と名高い航空戦かつ雪辱を帰した戦いでもあり、ウェルトン・”ガウディ”・トリスコル大尉をはじめとする12名のエースパイロットが空で散る。散った12名はノリッジ大聖堂に眠り、『ノーフォークの守り手』や『空神十二頭』として彼らの戦いは一旦終わる。
防空戦が終わったのち、ルミナスの歌姫たちは彼ら12名のエースパイロットに対して鎮魂歌を歌った。彼らが大好きな『 My Shining Light 』を唄ったのだ。鎮魂歌でもない歌だが、生前の彼らはこぞってこの歌を口笛や口ずさんでいたのだ。大空をはばたき民衆を守る彼らにとってこの歌は・・・。
聖歌でもあったのだ。
最後の〆が「 My Shining Light 」で終わらせたかった。
次回最終回。彼らが居なくなった翼は歌姫たちに渡るだろう。