検閲文章を本文に持ち込みたかったけど蛇足程度だから辞めた。
夕飯が終えてもグレイスは、まだ宿舎に帰ってきていなかった。少女達は食後、暖炉のある部屋に集まっていた。アイラはムスッとしながら内心、
(隊長にどう言い訳しようか・・・)
と考えている。
アイラの内心を他所に、エリーたちはガウディという人物から送られた手紙を開けた。武官とは思えない達筆な文字が書かれており、住所も記載されていた。
エリーは少しずつ読み解きながら口に出した。
「ふむふむ・・・『敬愛なるグレイス少佐へ。ワールドツアーやガリア解放直後の歌唱は最高だった。次は俺たち亡命軍に捧げてやってくれないか?今ノリッジにいるから直接お会いしたい。』・・・だって。」
「マナたちの歌を聞いてくれたの!」
「ガウディ大尉はさすがだ!音楽も嗜んでいるなんて!」
盛り上がる少女達に暖炉のある部屋の扉が突然開いた。その正体はグレイスだった。
「ごめんごめん。次のスケジュールが決まらなくて・・・ってみんなどうしたの?」
先程まで盛り上がっていた少女達はエリーを隠してた。グレイスは首を傾げていてわからなかった。だが、エリーの行動によって直ぐにわかった。
「あ、隊長。ガウディ大尉から手紙が届いてますよ~」
エリーの言葉でグレイスは驚きのあまりに荷物を落とした。それを見たアイラは困惑してグレイスに聞く。
「隊長?」
グレイスは僅かながら震えてる。
「今、ガウディって?」
「そうだけど?」
グレイスは早歩き且つ、少女達を掻き分けてエリーの元にやってきた。
「大尉は?大尉は今どこに!?」
グレイスの声は段々大きくなっていた。エリーは少し引いて、小声で言った。
「ノ、ノリッジって。」
エリーはグレイスに手紙を渡した。手紙を受け取ったグレイスは、涙を浮かべながら首を振っていた。
「そんなはずが・・・これは嘘よ。大尉は・・・彼はガリア解放作戦の迎撃戦で戦死って・・・」
「「えっ!?」」
グレイスの衝撃の事実にそこに居た少女達全員は
「え・・・じゃあ・・・その手紙は・・・」
いのりが震えながら言った。
「ゆうれい?」
無邪気なジニーの言葉に、いのりは目をつぶり耳を塞いだ。グレイスは手紙を読んで確信した。
「でも、この筆跡と筆圧は間違いなく大尉そのもの・・・こうしちゃいられない!」
「待ってください隊長!」
急いで支度をするグレイスに、アイラがすかさずグレイスの手を引っ張った。
「今、出て行かれては困ります!」
「・・・それはできないわ。」
「グレイス隊長・・・なぜでありますか?」
「言いたいことがあっても、あなた達には言えないことなのよ。」
グレイスはアイラに振り返ると涙を流していた。そこにいた全員は唾を飲み込んでいた。思った以上に葛藤があるんじゃないかと・・・それでもアイラは質問をさらに踏み込んだ。
「お辛いのはわかりますが、隊長・・・お願いします。」
そう言われたグレイスは長い沈黙の末、ことの
「・・・話しちゃおうか。実はね、大尉には私と同じ歳の妹が居るの。でも・・・哨戒作戦中で私をかばって亡くなっているの・・・」
「「っ!?」」
戦慄だけでは留まらなかった。悲惨な戦場を歩んだグレイスだから言える事だ。だが、一番後悔していたのはグレイス本人だった。
「当時、大尉の居場所はわからなかった。ダンケルク撤退戦の後も、あの哨戒中で大尉が可愛がってたあの子が亡くなった後も・・・消息がつかめなかったの。そしたらガリア解放直前で大尉がガリア解放作戦リストに載っていたけど、既に出撃していて帰ってくるのを待ったわ・・・」
グレイスの沈黙でアイラが続いた。
「そして還って来なかった・・・」
「アイラ!」
エリーの言葉に驚いたアイラはエリーを見た。エリーがアイラに対して物凄く睨んでおり、後ろに引き下がった。それでもグレイスは、流した涙を拭いながら赦ゆるした。
「いいのよ・・・ちょっと取り乱しちゃったね。ごめんなさい。急だけど明日・・・大尉の基地に行って来るわ。」
手紙と荷物を持って立ち去ろうとするグレイスにエリーが立ち上がり、
「私も一緒に行きます。」
と言った。グレイスは振り返った。
「どうして行きたいか聞いても良い?」
「ダンケルク撤退戦の最後の1隻には、多くのガリア人兵士や負傷したウィッチたちが多く居ました。その船を守る為にガウディ大尉は決死の体当たりで守ってくれたんです。ガリア人を代表してお礼したいです。」
エリーのまっすぐな瞳に、グレイスは先程の涙を忘れて、僅かな笑みをこぼした。
「わかったわ。一緒に来てちょうだい。他のみんなは休んでちょうだい。」
【検閲】ダイナモ作戦中のウェルトン・G・トリスコル大尉の報告書
・リベリオン海軍所属、ウェルトン・G・トリスコル大尉(以降、トリスコル大尉)が連盟空軍やリベリオン海軍上層部の帰還命令を蹴ったことに対しての報告書である。
1.トリスコル大尉はリベリオン義勇軍参謀としてブリタニアに派遣されたが、本人自らの指揮の元で戦場を見る必要性があった模様
2.作戦中、ノリッジにある廃棄寸前の航空機の入れ替え作業を確認した。恐らくはトリスコル大尉が極秘裏に行ったものと断定
3.ノリッジには元々スクラップヤードとして、廃棄される予定だった機体が本作戦におけるトリスコル大尉によって全て使用された
4.トリスコル大尉の麾下であるウィッチたちはトリスコル大尉によって単独で帰還命令を下していた模様
5.元よりトリスコル大尉は、連盟空軍に激しい偏見と過度な影響力を持つことに不満を持っていた
これらの要点を鑑みるに、トリスコル大尉は帰還直後に北アフリカ戦線に”左遷”。のはずだったが、行方を眩ます。見つかり次第、軍法会議を決行する。尚、これはリベリオン義勇軍参謀総長の意見は組み込めないものとする。
06/10/1940
ブリタニア連盟空軍参謀本部
追記
06/08/1944
同連盟空軍参謀本部により、本報告書は【検閲】書類として公にしないと決定。同時刻でもって、ウェルトン・G・トリスコル大尉(32歳)は不名誉除隊という名目で処分。また、トリスコル大尉の小隊であるパイロット2名も同様に「戦死」として扱う。