「そろそろノリッジにつきそうね。」
グレイスが運転する車でエリーが乗っていた。出発しロンドンを経由してから数時間。まもなくノーフォークの州都のノリッジ都市圏内に入ろうとしていた。
ノリッジは、歴史的建造物が数多くあるの歴史・宗教都市であると共に、ヒスパニアやネーデルラントの間の貿易でかなり栄えた経済都市でもあった。
それでも2人は観光してる暇は無く、真っ先にリベリオン海軍パイロットのガウディ大尉が居るとされているノリッジ野戦航空基地に向かった。
『亡命政府航空部隊「レジスタンス」ノリッジ野戦航空基地』
と書かれた古びた垂れ幕が検問所にあった。
車は検問所の横で止まった時、検問所から2人の兵士が出てきた。1人はベルギカ王国の腕章をつけた兵士ともう1人はネーデルラントの腕章をつけた兵士だ。2人の兵士は貧相ではあるが武装しており、グレイスたちを警戒しているようだ。ベルギカ王国の兵士が高圧的に言った。
「所属を述べよ!」
「私達は連盟空軍第72統合戦闘飛行隊航空魔法音楽小隊、ルミナスウィッチーズよ。」
と、グレイスが言った。
2人の兵士は顔を合わせた。続いてネーデルラントの兵士が言った。
「お嬢さん方はこの基地に何用で?」
「リベリオン海軍所属のガウディ大尉の招待状が届いたの。」
「基地司令から!?」
2人の兵士の様子がおかしかった。本来、基地司令官は高級将校や上級武官が任命される。ましてや、亡命政府軍なら各国の将校が居るはず。なのに・・・この基地では将官や左官でもないガウディ大尉が基地司令として動いている事だ。ネーデルラントの兵士が言った。
「残念ながら今、基地司令は任務中でここには居ない。」
グレイスとエリーは顔を合わせて頷いた。エリーは検問所の兵士に聞いてみた。
「今どこに居るのかわかる?」
ベルギカ王国の兵士が首を振った。
「わからない。基地司令は多くを語らないからな。」
すると基地内から、1台の車両が検問所に近づいた。その車両はブリタニア陸軍の旧式のハンバー装甲車だった。装甲車から2人の兵士が出てきた。だが、検問所の兵士みたいな貧相な軍服ではなく、空を征する者の軍服だった。
パイロットと思われる2人は、検問所の兵士に聞き込みをして、頷きながらグレイスの車に近づいた。
「お嬢ちゃんたち。俺たちの隊長に会いたいんだって?」
「ええと・・・」
グレイスが反応に困っていると、もう1人が答えを出した。
「ガウディ隊長に会いに来たんだろ?俺たちの車両についてきな。ちょっと、Uターンして欲しい。」
「わ、わかったわ。」
「あぁ、そうだそうだ。ちょっと待ってくれ!」
1人が装甲車に戻って、何かを持ってきた。歩兵が背負う通信機だ。通信機を持ってきたパイロットが言った。
「その通信機は、俺らの装甲車と同じチャンネルにしてある。話は移動中にしよう。さもないと隊長が徒歩で帰ってくる羽目になる。」
【検閲】連盟空軍非公認・ノリッジ野戦基地
ノリッジ野戦基地は長らくブリタニア東部の防空網を担う重要拠点であるが、主に新兵ウィッチ訓練と同時にベルリン防空戦力として担っていた基地である。だが、ベルリン陥落直後にウィッチといった戦力の危険性が危ぶまれる事態に陥り、止む無く放置した結果、撤退拒否したブリタニア連邦加盟国軍や元リベリオン義勇軍、低地諸国出身といった亡命兵士を中心とした部隊がノリッジ野戦基地を創立した。
ただし、連盟空軍が正式に許可が下りておらず、亡命政府でさえ認識しても隠蔽し続けていた。
理由は以下のようにある。
・ダンケルクの英雄やエバン・エマール要塞とアル・ベール運河の防空戦のエースパイロットがノリッジに居たこと
・特にガリア撤退時の約3割の戦力が、ノリッジに逃亡を図ったこと
・祖国が亡命にならずども、各諸方から集められたウィッチを含むパイロットが少なからず1個中隊以上確認したこと
・ダンケルクの英雄を筆頭に、大半のパイロットらが連盟空軍に対して敵対心をもっていたこと
これらを鑑みると、連盟空軍の上級将校らは非公認とせざる負えず、また非常に重要拠点でありながらも無視せざる負えない状況である。また、ノリッジ防空網である東海岸は、我々連盟空軍よりも的確な指揮官がノリッジ野戦基地を優先したため、所属していた防空隊は全員戦死とすることに決定された。
05/21/1940
ブリタニア連盟空軍参謀本部
追記
06/10/1944
同連盟空軍参謀本部により、本報告書は【検閲】書類として公にしないと決定。
【検閲】とする理由は様々だが、1番の理由としてガリア奪還作戦を拒絶し、ノリッジに向けてウィッチ含む1個大隊をブリタニア憲兵として差し向けることをリベリオン陸軍及び海軍と共に共同合意。だが昨年10月に、再編成中のブリタニア憲兵1個大隊がロンドンにて奇襲攻撃を受ける事態になった。この奇襲攻撃はロンドン迎撃戦以降、最悪の空爆が行われた。こちらが想像していた以上に練度が高い上に、部隊を過小評価していたがために、1個中隊ではなく1個師団ほどの戦力を保有していたことが判明したため、これ以上の離反を考えて【検閲公文書】として一部の上級将校のみ開示することとした。