A:描かれなかった裏の描写があるので【検閲】の文が長くなるのは必然。なんならこっちが本編ではないかと描いた本人であるワイがそう思っている。
グレイスとエリーは装甲車の真後ろにつけて、2台の車両はハイウェイでノーフォークの海岸線を目指していた。
<<お嬢ちゃん達は、例の音楽の飛行隊だろ?良い音色だったぜ。>>
「ど、どうも。」
グレイスは納得がいかなかった。戦死しているはずのガウディが、生きてるなんて思ってなかったのだ。でも、装甲車に乗っている2人といい、野戦航空基地の亡命政府軍の兵士といい、話している限りあの基地の基地司令は、間違いなくガウディ大尉であることだ。
グレイスが考え事している間にエリーが通信機に問いかけた。
「ガウディ大尉って今どこに居るかわかるの?」
<<カイスター城という海岸線に建てられた城だ。だが、カールスラントや低地諸国から来るネウロイが来るたびに、海岸線の住宅が破壊され続けた。>>
<<それを俺たち飛行隊が、ブリタニアの海岸線を守り通す事になっちまったんだ。厄介な事に連盟空軍の上層部はノーフォークの住民よりも、ガリアや北アフリカが先決でまともな
<<俺たち2人や亡命兵士や亡命ウィッチが来るまでは、隊長が1人でずっと片付ける羽目になった。それがダンケルク撤退戦直後の話だった。>>
その言葉を聞いてグレイスは不安を感じた。リベリオン義勇軍や連盟空軍の上層部にも、妹にも誰にも言わずに1人で”ノーフォーク”を守っていた。そして、ガリア解放の迎撃戦で撃墜されたとしてもなんとか生きていた。彼のもう1つの”不死身”の異名が、リベリオン義勇軍の中で噂として広まっていた。ただ、それが誰だが今の今まで知らなかった。
もう少し周りのことを見るべきだったと後悔しながら、ハンドルを強く握り締めた。曇るグレイスに気づきつつ、引き続きエリーは話を続けた。
「そのカイスター城って基地からどれぐらい離れてるの?」
<<基地から約22マイルだ。しかも、隊長は野戦歩兵の装備でカイスター城を徒歩7時間ピッタリ歩き通す。>>
<<車ならハイウェイで35分だ。ただ、隊長はネウロイがブリタニアに上陸されないように、毎週歩いては周辺のウチの部隊の対空砲旅団の被害確認をしてるのさ。>>
通信機から聞こえるのは、呆れた2人のパイロットの笑い声が聞こえる。グレイスは恐る恐るガリア解放の迎撃戦を聞きたかった。
「ねぇ・・・お2人とも聞いても良い?」
<<どうしたんだい歌のお嬢さん?>>
「ガリア解放の迎撃戦のことーーー」
しかしグレイスの言葉は届かなかった。いや、遮られたのだ。
<<それは直接、隊長から聞けば良い。>>
<<あの人は本当に多くを喋らない。俺たちでさえわからないんだ。あの時、歩いて帰ってきた理由は”誰にも”喋っていない。>>
<<ただ・・・>>
「ただ?」
<<帰還したときは頭部が血まみれだった。それだけは留意してくれ。>>
通信機から発される言葉から神妙な空気が流れる。
ガウディ大尉。彼の存在をグレイスはリベリオン義勇軍以前から知っていた。ウィッチに引けを取らない操縦テクニック。旧式機体だろうが、陸軍機体だろうが全てを乗りこなす逸材。大尉が編み出した対ネウロイの教本。
訓練中では厳しく檄を飛ばすが、地上に戻ったら親切で気さくな人。そして、私や彼の妹、リベリオンにいる全てのパイロットやウィッチたち憧れる存在だ。
ガリア解放の迎撃戦・・・いや、ダンケルク撤退戦の後に彼の身に何があったのか?
すぐにでも会いたい。すぐにもーーー
「隊長?」
エリーの声でグレイスは我に返って焦った。グレイスは平然と装いながら、エリーに偽りの笑顔を見せた。
「どうしたの?」
「無理してないですか?」
「・・・」
エリーの言葉に沈黙するグレイス。グレイスの頭の中ではいろんなことが錯綜している。大尉が生きてること自体、謎が謎を呼んでいるのだ。
戦死しているのに通信機からは「生きている」と言われる。愛しき妹を亡くしているのに平然と「ノーフォークの守り手」となって守り通す。そして「魔術師」や「不死身」と呼ばれる意味とは・・・?
これらの謎がグレイスにとって、謎を深める上で不安の塊でもあった。グレイスは、再び目線を前方の装甲車に戻して言う。
「無理してない・・・なんて言えない。不安しかないの。だから、直接会ってみるしかない。」
グレイスの答えは明確だった。不安しか無いからこそ、直接会って”確認”する必要がある。 それを聞いたエリーは、
「そうですね。聞けば聞くほど謎の多い人物です。ダンケルク港脱出の時もそうだったように、人種や階級なんて関係なくて、決死の覚悟で守り通す凄腕パイロットとしか聞いてませんから。」
とエリーらしからぬ発言だが、エリーの気持ち同様にグレイスもそうなのだから。
------------------------------
しばらくハイウェイを進むと左手前方に石積みで積まれた城が見えてきた。恐らく装甲車に乗っていた2人が言う「カイスター城」なんだろうか?城の幾つかは欠けており、城の真ん中には大きな溝が出来ていた。ガリアが解放されても、ここだけは戦場の凄惨さや匂いが汚染されているかのように留まっている。ハイウェイから降りて直ぐに林道に入る2台の車輌。林道は泥濘も無い上に、林道らしからぬ石畳の道路だった。
グレイスは城に近づくたびに不安が大きくなっていった。
【検閲】リベリオン義勇軍参謀総長の報告
リベリオン義勇軍参謀の1人である、リベリオン海軍所属ウェルトン・G・トリスコル大尉(以降、トリスコル大尉)の義勇軍での指揮官として素質の報告をここに記す。
1.トリスコル大尉は海軍機のみならず陸軍機を乗りこなすものの全て旧式機体で、主に戦場指揮官として素質が高く、トリスコル大尉の率いる部隊の勝率は9割を超えていた
2.後方指揮が多い参謀の中で、トリスコル大尉のみ戦場指揮としての素質がある。理由は以下の通り
・模擬実戦で勝率9割を維持していたのは彼が、戦場で先手必勝を打つ戦法だったこと
・彼が後方指揮の場合でも、部隊を4分割にして側面攻撃という戦法を取っていたり、様々な策略家として参謀として必要不可欠な要素であることは間違いない
・教本以上の戦術プロットを吐き出す能力がある
・1つのミスでも5つ以上の戦術パターンを繰り出すので、戦場指揮としてかなりの強みを持っている
3.義勇兵の中で尚且つ魔女では、パイロットの中で一番のパイロットであることは変わりない
4.前述でも素質があるとした上で、トリスコル大尉は被撃墜されたとしても戦場指揮として変わらず、数日後には帰還する能力がある
これらを踏まえた上で、トリスコル大尉は逸脱した能力がある。パイロットだけで過ごすわけにはいかないとして唯一の尉官としてリベリオン義勇軍の参謀として抜擢した。
07/24/1939
海軍参謀本部所属リベリオン義勇軍参謀総長
追記
06/12/1944
連盟空軍参謀本部により、本報告書は【検閲】書類として公にしないと決定。
【検閲】理由の一番の要因が、昨年10月にトリスコル大尉率いる部隊が奇襲攻撃によって、ノリッジ憲兵部隊が壊滅状態にあることである。賊軍として認知していたが、ロンドン市民らはトリスコル大尉を讃える声が相次いだ。これによりトリスコル大尉に関わる書類は【検閲公文書】とする。
【検閲公文書】として一部の上級将校のみ開示することとした。トリスコル大尉の動向は触れないようにすべきである。絶対に関わってはいけないからだ。