亡命軍にいる愛するあなたに   作:クマぴょん

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【緊張の朝】

 

 

 出会いと悲しみを穿(うが)つ時が終わり、夜が明ける頃。

 エリーは、ノリッジ野戦航空基地にあるウィッチの宿舎にて乾いた発砲音で目を覚ます。ほぼ同時刻にグレイスもガウディの寝室で目を覚ます。

 エリーは、ノリッジに居るウィッチたちと朝食を取ることになった。グレイスは寝室を出ると基地司室には、”中尉”の階級章を付けたウィッチが待っていた。そう、ベルギガ王国陸軍出身のアンナ中尉だ。

 

「お待ちしております、グレイス少佐殿。」

 

そう言われるグレイスだが、肝心の彼が部屋を見渡しても見つからない。それに気づいたアンナが言う。

 

「基地司令官は毎朝の陸軍教練に出ております。私たちウィッチたちは、専用の宿舎で朝食を食べることになってます。ご準備がよろしかったら、いつでもご案内致しますよ。」

 

と、笑顔でグレイスに言う。

 

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 宿舎に向かう途中、乾いた射撃が遠くから聞こえる。恐らく、基地司令主導の元の陸軍教練だろう。

 ガリアが解放されても北アフリカ戦線では奪還の見通しが経たず、その戦力の1割はここノリッジからの亡命兵士の出からだとアンナに教えてもらった。海軍航空隊の出身のガウディだが、義勇軍結成時の訓練で彼が撃墜されても帰還してくる確率は9割5分だった。それぐらい1人で生き残る術を持っている。

 ガリア迎撃の時も不時着して歩いて帰れたのは、生き残る術を最大限出し尽くしたからだろう。彼の恐れる事の無い勇気とグレイスが抱える不安。彼とグレイスとは正に『対』であった。

 ウィッチ専用の宿舎に到着して、エリーに対面で食事も始めても、エリーには口を開かず、黙々と小さな一口で食事をしていた。

思うことはあってもグレイスとエリーは互いに何も言わず、黙々と食事している最中だった。

 

キィーーーン!!!

 

 アンナを始めとするウィッチ達は食事を止め、立ち上がる。この警報は異常事態・・・いや、ネウロイの来襲だ。2人の元にアンナがやってきて、

 

「食事の途中で申し訳ございません。貴女たちをシェルターに連れて行かなけれなばなりません。よろしいでしょうか?」

 

2人の確認を求める中、エリーは頷くがグレイスは俯く。アンナがある提案を言う。

 

「基地司令の格納庫を見てからにしますか?」

 

余裕のない緊迫した時に何を言い出したのか、2人はわからなかった。

 

「バッラカ少尉!」

「はい!」

「2人の護衛をお願いするわ。」

「は!ご武運を!」

 

アンナは謎を置いて、バッラカを除いた全ウィッチを引き連れて宿舎から出ていった。残された3人が宿舎に残る最中、バッラカは2人に振り向く。

 

「元ロマーニャ空軍のフランチェスカ・バッラカ少尉です。緊急事態ではありますが、シェルターに向かう途中に基地司令の格納庫がございます。行きましょう。」

 

2人の了承が無いまま、バッラカは歩き出した。

 さっきまで俯いていたグレイスが、こぼれ落ちそうになった涙を拭き、顔を上げて歩き出した。エリーは、昨晩にグレイスと大尉の元に何かあると思いつつ口には出さなかった。

 

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 シェルターに向かう途中、格納庫群の1つである「基地司令」という名札が掲げられていた格納庫にウィッチ3人が入っていった。

そして・・・グレイスはあ然とした。基地司令の格納庫には、リベリオンの旧式の戦闘機が並んでいた。

 リベリオン最後の複葉機であるF3F フライングバレル。正式採用されなかった、ブルースター F2A。シャークマウスで有名なP-40。

 それぞれ、2機ないし3機は揃っていた。そんな”彼”は、義勇軍結成前から愛機であるシャークマウス「天使」が描かれたF2Aに乗り込んでいた。格納庫の隅にいる3人のウィッチを他所に、彼の乗る機体は格納庫を出ていった。

 グレイスはあのシャークマウスに見に覚えがあった。義勇軍結成後の模擬戦闘にて、海軍パイロットがウィッチ相手に引けを取らない技量で翻弄される話を聞いていた。後々に義勇軍参謀の1人であるガウディ大尉のものだと知る。ただ当時は、グレイスを含む陸軍ウィッチらは単なる噂程度だと思っていた。だが、新米ウィッチや新米パイロットの混成部隊として率いるガウディの戦術眼は噂以上のもので、彼が指揮すれば約7割の勝率を収めていた。

 そして、彼の愛機であるF2Aに描かれた「天使」は”妹”に対して溺愛するものと”守るべき本来の姿”として描かれていると、同僚のウィッチから聞いた。そして、その機体を目の前で見て、しかも格納庫から出ていった。グレイスは涙が出た。

 ”もう行かないで欲しい・・・”と。届かぬ想い。零れ落ちる涙。願わくばもっと一緒にーーー

 

「行きましょう。ここも直に戦場になりかねません。」

 

とバッラカは切り出しては格納庫から出ていく。

 グレイスが半ば座り込む。それを見てエリーがグレイスの手を無理にでも引いて、基地司令のガウディ大尉の格納庫から出ていった。

 

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 シェルターの中には、新米ウィッチや幼い子供その母親、高齢夫婦といったノリッジ周辺の住民らが集まっていた。薄暗いシェルターではあるが、造りは頑丈になっており、ちょっとやそっとでは崩れない様なシェルターになっていた。3人のウィッチが入ってきても、誰もが通信機に耳を傾いていた。

 このノリッジやその周辺の住民をを救えるのは、連盟空軍ではなく”彼ら”だけなのだから。途切れ途切れに入ってくる通信がシェルター全体を包み込み、最終的には”彼ら”が勝利した。地上と共に損害ゼロという大戦果を上げて・・・

 シェルターでは安堵の息が所々に見られる。ただバッラカ曰く、

 

「基地司令を含めた4つの飛行小隊があれば、この程度は楽勝ですよ。」

 

と得意げに言う。

 ”彼ら”が居ればノリッジは安全だ。だが、1つの疑問が浮かぶ。”彼ら”。いや、特に”彼”は何を思ってルミナスウィッチーズに手紙を出したのか?ガリア解放されても未だに戦場であるこの土地で慰問依頼なのか?未だに解らない。

 彼が帰還後に聞いてみよう。それしか今のところ考えられない。そう思っているグレイスを他所に、”彼ら”が被弾も無く帰還した。

 

 




一応、年度末に上げるという約束はしたからノーカンだよな?
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