メメント・モリ   作:阪本葵

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第2話 照秋と箒

雲一つない晴天の空、セミが鳴き、猛暑に茹だる8月、全国中学校剣道大会は今年、静岡にて行われた。

 

出場選手は皆中学生であるが、全国大会に出るだけあって大人顔負けの気迫を感じる者ばかりだ。

そしてなにより、今年は観戦客が例年より多い。

何故なら、今年は剣道専門誌も賑わせた、剣道界では注目の生徒が二人出場するからである。

そんな中、競技場の入り口でそわそわして人を待つ少女がいた。

その少女は、剣道着を着ているので出場者であることはわかるが、長い黒髪をポニーテールでまとめ、キリッと切れ長の目にシミのない肌、美少女といえる容姿なのだが、不安そうな表情で、競技場に来場する人を一人も見逃すまいとキョロキョロと周囲を見渡していた。

 

「……あっ」

 

そして、ようやく見つけたのだろう、不安そうな表情から一転、花が咲いたように笑顔で待ち人に駆け寄っていった。

 

「照秋!」

 

名前を呼ばれた少年――照秋――は同じ学校の剣道部員達と会場に入っていると声がしたので立ち止まって振り向き、声の主を見つけるとニコリと笑う。

 

「やあ、箒」

 

少女――篠ノ之箒――は照秋に名前を呼ばれ頬を赤く染める。

走って弾む息、待ち人に、恋する人に会えた喜びに踊る心、箒は高鳴る胸を抑え、深呼吸する。

 

「ひ、久しぶりだな、照秋」

 

色気のない突き放すような声音と言葉に、心の中で「何を言ってるんだ私!第一声から大失敗だ!!」と自己嫌悪する箒だが、照秋は気にせずにこやかにほほ笑む。

 

「そうだな。直接会うのは去年の全国剣道大会以来だ」

 

「う、うむ」

 

照秋と箒は電話やメールのやり取りを頻繁に行っている。

まあ、内容はほとんど箒の愚痴を照秋が聞きストレスを発散させるというものだが。

日本政府から特別保護プログラムを受けている箒にプライベートはほぼ無いに等しかった。

常に監視され、食事内容、起床、就寝時間など筒抜けだ。多感な時期の少女にこの扱いはあんまりであるが、重要人物の箒に拒否権などない。

だが、それもここ一年程で急に監視が緩くなった。

どうやら行方不明の姉――篠ノ之束――が日本政府に何か言ったようで、プライベートはかなり守られるようになった。

そんな中で箒は照秋と出会ったのが、昨年行われた全国中学校剣道大会だ。

箒も照秋も、まさかそんな場所で幼馴染に出会えるとは思っておらず、二人で喜び合った。

その年の大会は残念ながら二人とも成績は振るわなかったが、箒と照秋は携帯電話のメールアドレスと電話番号を交換し、やり取りを行ようになった。

 

「しかし、流石だな照秋。団体戦と個人戦両方に出場するとは」

 

箒はプログラムの書かれた冊子を見て感心する。

その冊子はタイムスケジュールと出場校、出場生徒の名が書かれており、照秋が個人戦団体戦両方に出場していると知り驚き、また同時に嬉しくなった箒だった。

照秋の通う中学校は付属学校で、高校、大学と剣道強豪校で知られている。

過去に何人もの優勝者、団体優勝をしている学校である。

そんな学校で昨年の二年生からレギュラーになれるのだから、実力は相当なものであると簡単に想像できる。

流石は、今大会注目される選手で『赫々剣将(かっかくけんしょう)』と呼ばれる男だと、箒は尊敬の眼差しを向けた。

赫々剣将(かっかくけんしょう)とは、室町幕府十三代征夷大将軍足利義輝の事である。

剣豪将軍という呼ばれ方が有名であろう。

将軍でありながら既に権力は無く、日々剣術に打ち込んでは達人の域に達した人物である。

義輝は塚原卜伝、上泉信綱に教えを請い剣術に没頭、その腕を上げて行き、奥義「一之太刀」を伝授されたという説もある剣豪である。

松永久秀らに二条御所で襲われた際、将軍家秘蔵の刀、名刀三日月宗近(みかづきむねちか)をはじめ数本畳に刺し、刃こぼれするたびに新しい刀に替えて寄せ手の兵と戦ったという。

この最後の奮戦を讃えて、現代において「剣豪将軍」と称される人物である。

では、何故照秋は有名な剣豪将軍という名ではなく赫々剣将と呼ばれているのか。

赫々とは、華々しく功名を上げる様や光り輝く様を言い、昨年の全国中学校剣道大会において、照秋の未熟ながらも圧倒的存在感を示すその剣技に「光り輝く剣技にその才気、まさに赫々剣将よ」と称されたのが始まりである。

 

「箒こそ、学校が変わっても剣道続けて、しかも全国大会に出れるんだからすごいよ」

 

照秋も箒を称賛する。

箒は前述した日本政府の特別保護プログラムによって定期的に転校を余儀なくされている。

そんな環境で日々研鑽を怠らない箒の精神力は素晴らしい。

流石、今大会注目される『女一刀斉』と呼ばれる少女だと素直に褒め称える。

箒は世間に最も注目され、行方をくらませている人物、ISの開発者たる篠ノ之束の妹であるが故様々な注目を受けているが、だからといって剣技を贔屓目に見てのあだ名ではない。

その実力はまさしく『女一刀斉』の名に恥じぬものである。

一刀斉とは戦国時代から江戸時代初期に実在した剣客『伊藤一刀斉』のことである。

前名『前原弥五郎』という彼は、『一刀流剣術』の祖であり、鐘捲自斎を師とし五つの秘剣、高上極意五点たる『妙剣』『絶妙剣』『真剣』『金翅鳥王剣』『独妙剣』を伝授され伊藤一刀斉と改め、その後も剣の極意を追求し、三十三の決闘を無敗という、剣鬼として名を残している。

一刀流は多くの派生流儀がある。

そんな中の一派で最も有名なのは『北辰一刀流』であろう。

千葉周作を祖とし、あの坂本竜馬も学んだとされる流派である。

そんな派生流儀の元祖たる一刀流は、現代剣道にも影響を与えているとされている祖・伊藤一刀斉の女版と称されている箒は、その美麗な容姿とまっすぐで美しい剣技に付けられた名である。

箒自身は女一刀斉という全く可愛くないあだ名に怒るが、照秋から褒められたことによって享受したのだった。

そう、今大会の注目選手とは、照秋と箒の二人である。

だが、そんな照秋の素直な称賛に、箒は顔を真っ赤にしてぷいっと顔をそむける。

 

「ふ、ふん!当然だ! ……照秋に会える唯一の手段なのだから、頑張るのは当たり前だろう……」

 

ぼそっと本音を言う箒だが、その声はバッチリ照秋に聞こえている。

 

「ありがとう。俺も箒に会えて嬉しいよ」

 

「えぅ!? あ、あうぅぅ……」

 

呟きが聞かれてますます顔を赤くする箒。

もう耳まで赤い。

そんな箒が可愛らしくて、照秋はクスリと笑い手を出す。

 

「とにかく、久しぶり、箒」

 

「う、うん……わ、私も会えて……う、嬉しい……」

 

しどろもどろ喋り、恐る恐る照秋の手を握る箒の表情は、とてもうれしそうだった。

 

「お、織斑先輩……その美人さんって、もしかして彼女っすか!?」

 

「び、美人!? 彼女っ!?」

 

一緒にいた同じ学校の後輩がプルプル震えて聞いてくる。

そして美人、彼女と言われた箒は慌てふためく。

 

「……たしかにイケメンだとは思っていたが、まさか男子校で外出がほとんどできないウチの学校で、こんな美少女をいつの間に……このリア充め!!」

 

「織斑、ちょっと屋上行こうぜ……久しぶりにキレちまったよ……」

 

同学年の仲間も殺意の目を向けてくるが、そんな視線に照秋は苦笑する。

 

「そうだと嬉しいけど、残念ながら違う。幼馴染だよ」

 

「う、嬉しい!? 残念!?」

 

照秋の明け透けな返答にますます顔を赤くし、あうあうと意味の分からない言葉を発する箒。

そして照秋の言葉を聞いて、

「なーんだ」

「いや、よく考えろ。こんな美人が幼馴染な時点で勝ち組じゃねーか」

「か、彼氏いるの?え、いない!?」

「じゃあ、この子、今フリーってことか!?」

「お、俺とお友達に!」

と、各々言いたい放題である。

騒々しくも明るく仲間として結束している照秋と同じ学校の面々に驚く箒だったが、それよりも照秋が言った「そうだと嬉しい」「残念」という言葉の真意を確認したくて、でも今の公衆の面前で聞く勇気もなくて。

 

(……この大会が終わったら絶対聞こう。……そ、そうだな……優勝したら……こ、こここ告白しよう!!)

 

そんな乙女の一大決意を人知れず固めたのだった。

 

 

 

大会は箒が個人優勝、照秋が個人、団体優勝、さらに最優秀賞まで掻っ攫っていった。

 

「おめでとう、照秋」

 

「箒もおめでとう。すごく強くなったね」

 

照秋と箒は大会が終わり、双方の学校が翌日帰るので静岡で一泊するということで、さらに互いの宿泊施設が近いと知り、夜にお互い抜け出し、近くのファーストフード店で会っていた。

二人は互いの健闘を褒め称えるが、そこは日本人、嬉しいのに謙遜する。

 

「いや、私はまだまだだ。照秋の剣を見て己の未熟を痛感したよ」

 

箒は尊敬の眼差しを向ける。

事実、照秋の実力は今大会では飛び抜けていた。

全ての試合で一本も取られることなく、全て一撃、さらに昨今の近代スポーツ剣道とは真逆の、大樹のようなドッシリとした構えは示現流「蜻蛉の構え」、そして目にもとまらぬ剣戟に、観客席からは「まさに雲耀の太刀」と感嘆の声が漏れるほどだ。

赫々剣将(かっかくけんしょう)』の名は伊達ではないと感心する。

箒も、照秋の試合を見て思っていた。

強い。そして、かっこいいと。

顔が暑くなるのを自覚し、改めて実感する。

ああ、私は照秋に心底惚れているのだと。

 

箒と照秋は幼馴染である。

最初は照秋の姉である千冬が父・篠ノ之 柳韻が開いていた篠ノ之道場に通っていた付き添いだったのだが、千冬の勧めで照秋と一夏が小学一年の時に篠ノ之道場の門下生となった。

箒は、圧倒的強さを持つ千冬は尊敬する人物だと思っていたが、弟の二人はそうとは思えなかった。

箒自身、元々人付き合いが苦手、というか人見知りすることもあり、照秋と一夏二人と仲良くなることもなくただの同門生という認識でしかなかったのだ。

特に双子の兄である一夏は苦手だった。

たしかに剣道の才能はあったのだろう、道場に通い始めてあっという間にメキメキ実力を付け、すぐに箒と拮抗するまでに至り、箒が引っ越しするころには一夏の方が強かった。

だが、一夏はその才能に胡坐をかき、現状に満足しそれ以上に努力しようとはしなかった。

千冬もそんな一夏の態度に注意はするが、それほど強く言うものではなく、一夏も右から左へ聞き流しているようだった。

逆に照秋は愚鈍だった。

箒の目から見て、剣道の才能など全く無いと一目でわかる惨憺たるものだった。

そんな愚鈍さに箒の父柳韻は「人それぞれの速度があるから、ゆっくりやるといい」と照秋ににこやかに諭していた。

箒は、父が照秋を擁護する発言を聞き目が曇っているんじゃないかと思っていたが、あれはもしかしたら照秋の隠された途方もない才能に気付いていたのかもしれない。

だが、千冬と一夏は照秋に辛辣だった。

 

「どうしてこんな簡単なことが出来ないんだ」

 

「一夏を見習え馬鹿者」

 

「愚図に合わせてたら俺が弱くなるから、お前隅っこで竹刀一人で振ってろよ」

 

酷いときなど父が道場にいない時間を確認し、同年代の門下生たちも一夏に同調し照秋を糾弾する。

千冬も、一夏のそんな言葉を咎めることなく、ただ失望の眼差しを照秋に向けていた。

照秋は悔しそうに顔を歪め、目に涙を浮かべるが反論することなく、一夏の言葉に従い道場の隅で一人黙々と竹刀を振っていた。

箒は、このときの事を振り返り自分は愚かだったと悔やむ。

箒は一夏に賛同し照秋を凶弾こそしなかったが、照秋を助けようとしなかった。

千冬と一夏の言う言葉に言い過ぎだろうと思うところはあったが、箒も照秋を鈍臭い、双子の兄に反論すらできない弱い人間だと見下していたからだ。

だが、小学三年生になったある日、見た。

稽古が終わり、皆が帰った後、箒は自主練として素振りをしようと、神社へ向かう途中、道場から少し離れた人の寄り付かないような空き地で姉である篠ノ之束がいた。

姉は箒や照秋たちが小学校一年の時にIS[インフィニット・ストラトス]を発表、程なくして[白騎士事件]が起こり世界的に注目される人物となった。

そんな姉はほとんどの人を認識しなかった。

箒と千冬、一夏の三人にだけ笑顔を向け、同じ仲間として認識する。

照秋など眼中にも入らず無視していた。

両親ですら”自分を生んで育てた人間”ぐらいにしか認識しないのだ。

そんな姉がニコニコしながら何か身振り手振りをし、声をかけている。

箒は、姉の視線の先が気になり目を追った。

すると、そこには照秋が黙々と竹刀を振っていた姿があった。

照秋の素振りを見て、言葉を失った。

なんとまっすぐな剣筋か。

なんと心揺さぶる構えか。

そんな彼の姿を、黄昏の中で竹刀を上段に構える姿を見て、ただただ”美しい”と思った。

気が付くと、箒は涙を流していた。

そう、たしかに照秋は要領が悪い。

一を聞いて、十行動してやっと理解する人間だ。

だが、それは言い換えれば、人より十倍の練習量から得られるバックボーンを持っているということである。

絶対揺るがない、裏切らない、自信として培われていく練習量という積み重ねと、周囲からどれほど貶されても辞めず、諦めない強固な精神。

健全な精神と、健全な肉体を宿し、研鑽する姿は子供ながらに見惚れてしまった。

未熟な自分では、あんな美しい剣は振れない。

これからも目指すべき姿ではあるが、自分がそうなる姿は想像できない。

箒は自身を恥じた。

何と愚かなんだろうかと。

目が曇っていたのは自分だったと。

ただの愚鈍な人間に振れる剣ではない、それほどの衝撃を受けた。

そしてそれが箒の初恋のきっかけだった。

次の日から箒から照秋に声をかけ、共に稽古を行うようになり、学校でもずっと同じクラスだったこともあり、照秋を一緒にいることが多くなり親しくなっていった。

日本の学校は基本的に親族関係を同じクラスにはしないことが多い。

特に決められたルールではないが、双子が同じクラスになると家族であるがゆえに二人でいることが多くなり、友達を作る機会が少なくなるという学校側の配慮で会ったり、学力の違いによるものであったりと様々ではあるが、照秋と一夏は一度も同じクラスになったことはない。

必然的に箒は一夏と同じクラスになることはなく、一夏と接触することも少ないのだ。

箒は照秋の傍で、互いに研鑽し、そして日々大きくなる高鳴る胸の鼓動と共に照秋を見続けた。

照秋の優しさを、愚直さを、厳しさを……そして、抱える闇を。

 

その後しばらくこの関係は続いたが、ISの開発者たる姉が行方不明になるや、家族が日本政府から特別保護プログラムを受けることになり、強制的に転校させられることになった。

箒は照秋と離れることを拒んだが、子供のわがままを国が聞き届けるはずもなく箒は照秋と、そして両親とも離れ離れになった。

だから、こんな状況を作り出し、自身は逃げ出し、どこかでのうのうと暮らしているであろう姉を恨んだりもした。

だが、照秋と約束したのだ。

 

「お互い、絶対に剣道は辞めない。同じ道を進めば、いつか交わり出会えるから」

 

互いの小指を絡め、ゆびきりげんまんと約束する。

箒は照秋のその言葉を信じた。

そして照秋も箒を信じた。

だから、再び出会えた。

 

 

「一緒の高校に行ければいいんだが……おそらく私はIS学園に強制入学させられるだろう」

 

「仕方ないよ、それは」

 

IS学園は、アラスカ条約に基づいて日本に設置された、IS操縦者育成用の特殊国立高等学校である。

操縦者に限らず専門のメカニックなど、ISに関連する人材はほぼこの学園で育成される。

また、学園の土地はあらゆる国家機関に属さず、いかなる国家や組織であろうと学園の関係者に対して一切の干渉が許されないという国際規約があり、篠ノ之束の妹である箒のような世界から狙われる人間にとっては安全な場所である。

だから、箒がIS学園に入学するのは喜ぶべきことなのだ。

しかし、箒は不満だった。

箒は照秋と同じ学校に通い、一緒にいたかったのだ。

箒は不満なのに、照秋は不満にも思っていないようで、柔らかな笑みを浮かべるだけである。

それがまた箒には気に入らない。

だが、仕方のないことかもしれない。

照秋は、これから全国の高校から推薦入学の誘いが来るだろうが、照秋程の剣道の実力者を、付属中学が手放すはずもない。

おそらくエスカレータ式に付属高校へ進学するのだろう。

それに照秋のいる学校は男子校だ。

箒が入学できるはずもないが、そういう意味では照秋に悪い虫が付く心配が無いのは幸いだろう。

逆に照秋もIS学園に入学出来ない。

IS学園の入学資格は『ISを操縦できる』ことだからだ。

男である照秋はISは起動することすらできない。

ISは女性にしか反応しない「欠陥兵器」なのだから。

 

お互いジャージという色気のない恰好で、ファーストフード店の一角のテーブルで向かい合い、テーブルの上にはポテトとジュース。

基本照秋は聞き上手であるため、自分から話題を振ることは少ない。

会話は少なく、しかしそれが重苦しいわけでもなく。

長年連れ添った夫婦のように、穏やかな時間が流れる。

だが、箒は心臓バクバクだった。

箒は自身に誓ったのだ。

優勝したら告白すると。

もう少し雰囲気のある場所にしたいが、二人で会う時間は無限ではない。

これから箒はIS学園に入り、今以上に会える機会が減るだろう。

だから、絶対告白する!

箒は拳を握り決意を新たにした。

……でも、私としては、照秋から告白されるのが夢なんだがなぁ……

そんな乙女な願いも捨てきれない箒だった。

 

「……箒」

 

「ひゃいっ!?」

 

突然照秋から話しかけられ、裏返った声で変な返事をした箒。

……まさか、まさか?

て、ててて照秋から……告白……してくれる……!?

箒の脳内はもう告白一色に染まっていた。

 

「大事な話があるんだ」

 

「だ、大事な話……?」

 

真剣な表情の照秋が言う大事な話。

え、本当に?

まさか、本当に……照秋から……告白してくれる!?

心臓の鼓動がバクバクと大きく耳に鳴り響き、顔に血液が上がり頭がクラクラしてきた。

箒の期待は膨らむが、しかし照秋の口からは箒の予想だにしない言葉だった。

 

「箒に、ある企業にISのテストパイロットとして参加してほしいんだ」

 

「……え?」

 

何故そこでISの、しかも企業の話になるんだろうか?

箒は思考が定まらず、ポカンと口を開ける。

だが、次に照秋の口から信じられない言葉が出てきた。

 

「企業の名前は『ワールドエンブリオ』。束さんの会社だ」

 

 


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