海岸での専用機たちの専用パッケージ試験や自機のメンテナンスを行う中、千冬と一夏だけが束を厳しく見つめ続けていた。
いまだ束の行動の真意がつかめず測りかねているのだろう。
そんなとき、副担任の山田真耶の声に鋭い視線をやめて向き直った。
「たっ、た、大変です! お、、織斑先生!」
「どうした?」
「こ、これをっ!」
尋常ではないほどの慌てぶりを見せる真耶から渡された小型端末の画面を見て、千冬の表情が曇る。
「特命レベルA、現時刻より対策を始められたし……」
「そ、それが、その、ハワイ沖で試験稼働をしていた――」
「無暗に機密事項を口にするな。生徒達に聞こえる」
「す、すみませんっ……」
「専用機持ちは?」
「全員います」
千冬と真耶は小さな声でやり取りをしているが、数人の生徒が千冬達を見ていることに気付き、会話でなく手話のやり取りに変え、やり取りを始めた。
しかも普通の手話ではなく軍関係の暗号手話だ。
普通ならそんな手話を解読できる人間はこの場にいない。
だが例外はどこにでもある。
マドカとラウラが、千冬達の手話を見て段々厳しい表情になる。
「それでは、私は他の先生達に連絡してきますのでっ」
「了解した。全員、注目! 現時刻よりIS学園教員は特殊任務行動へと移る。今日のテスト稼働は中止。各班、ISを片付けて旅館に戻れ、速やかにだ。連絡があるまで各自室内で待機すること。許可なく室外に出たものは我々で拘束する! 以上だ! 行動開始!!」
「はっ、はいっ!」
千冬の今までにない焦りの混じった怒号に怯えるかのように生徒全員が慌てて動き始めた。
「専用機持ちは全員集合しろ! 織斑兄弟、篠ノ之、オルコット、ロセル、ボーデヴィッヒ、凰、趙、結淵、更識お前たちは別の場所に移動だ!」
「はい!」
呼ばれて全員が気合の入った返事をし速やかに移動を始めるのだった。
「では、現状を説明する」
旅館の一番奥に設けられた宴会用の大座敷では専用機持ち全員と千冬と真耶、スコールが集められていた。
そして何故か束が箒の隣でチョコンと座っていた。
照明を落とした薄暗い室内に、大型の空中投影ディスプレイが浮かんでいる。
「二時間前、ハワイ沖で試験稼働にあったアメリカ・イスラエル共同開発の第三世代型の軍用IS『
「はい」
早速手を上げたのはセシリアだった。
「目標ISの詳細なスペックデータを要求します」
「わかった。ただし、これらは二ヶ国の最重要軍事機密だ。決して口外はするな。漏洩した場合、諸君には査問委員会による裁判と最低でも二年の監視がつけられる」
「了解しました」
セシリアを始め代表候補生の面々と千冬達は開示データを元に相談を始める。
未だに状況が飲み込めない照秋は、とりあえず深刻な事態という事は理解したので開示された情報を食い入るように見つめる。
そんな斜め前では一夏が探るような視線で束を見つめていたが、当の束はわれ関せずと言った表情で欠伸をかましていた。
「広域殲滅を目的とした特殊射撃型………私のブルー・ティアーズや竜胆・夏雪と同じく、オールレンジ攻撃を行えるようですわね」
「攻撃と機動の両方に特化した機体ね。厄介だわ。しかもスペック上ではあたしの甲龍を上回ってるから、向こうの方が有利……」
「この特殊武装が曲者って感じだね。防御力が必要だねこれは。ああ、まだ竜胆には慣れてないんだけどなあ……」
「私もまだ慣れないよ」
セシリア、鈴、シャルロット、趙が冷静に分析しシミュレートする。
「しかも、このデータでは格闘性能が未知数だ。持っているスキルもわからん。偵察は行えないのですか?」
ラウラの疑問に千冬が答える。
「無理だな。この機体は現在も超音速飛行を続けている。アプローチは一回が限界だろう」
「一回きりのチャンス………ということはやはり、一撃必殺の攻撃力を持った機体であたるしかありませんね」
真耶の言葉によって、視線が一夏と照秋へと集まる。
一夏は予想していたのか、さほど驚くことなく、しかし若干声が震えていた。
「え……俺?」
「一夏、あんたの零落白夜で落とすのよ」
鈴が信頼しきった目で一夏を見て言う。
「もしくは、テルさんの『雲耀の太刀』ですわね」
セシリアが照秋を見て言うが、当の照秋はバツの悪い表情をしている。
「問題は一夏か照秋をどうやって運ぶか、だね。エネルギーは全部攻撃に使わないといけないから、どうやって移動するか……」
「しかも目標に追いつける速度が出せるISでなければならないな。超高感度ハイパーセンサーも必要だろう」
「高速訓練を修了しているのも条件」
シャルロット、ラウラ、簪が詰めた話をするが、照秋と箒は何か言いたそうに機会を窺っていた。
そこに、待ったをかけた人物がいた。
それは、携帯端末を持ち苦々しい表情をした千冬だった。
「……作戦には織斑照秋と篠ノ之の二人で当たってもらう」
「えっ!?」
驚きの声を上げる一夏だったが、皆そんなことを疑問に思う前に、いきなり何を言い出すのかと声を上げようとした箒だが、スコールが千冬の傍により代わりに話しはじめた。
「アメリカ側の要請なのよ」
アメリカ側からの要請は、暴走した銀の福音の捕獲作戦にはメメント・モリと紅椿で当たって欲しいとのことらしい。
なぜ二人を指名したのか理解できなかったが、今まで一言も会話に参加していなかったマドカが徐に立ち上がり、真耶の座っている通信機材を操作し始めた。
「おい、何をしている」
千冬が咎めたが、それをスコールが止める。
やがて、通信機材の大型モニタには付近の地図とレーダーが映された画面から、一人の白人男性に変わる。
だが、全員その白人男性の顔を見て驚きを通り越し声すらあげられなかった。
「グッドモーニング、大統領」
そこには、現アメリカ大統領、アルフレッド・リチャード・ウェルズリーが映っていたのだから。
マドカが睨みながら挨拶をする。
アメリカは現在時差の関係で夜であるが、大統領は緊張した表情でこちらを見ている。
「こちらは夜なんだが、マドカ君」
ちょっとしたジョークのつもりなんだろうが、硬い表情で言っても面白くもなんともない。
「銀の福音の状況を聞いているか」
早速本題に入るマドカに、大統領は顔を顰める。
「……IS学園は迷惑をかけていることは承知している。我々はしっかり学園と各国代表候補生に補償を確約する」
「そんなことを聞きたいんじゃない」
マドカのバッサリと斬る言葉に、声を詰まらせる大統領。
だが、その事じゃないのなら何なんだと首を傾げる。
「何故テルと箒を名指しした?」
「……何のことだ?」
マドカの言葉に、大統領は眉を下げ首を傾げる。
「銀の福音の捕獲作戦において、アメリカ政府からメメント・モリと紅椿を指名してきたと聞いたが?」
「なんだと?」
すると、大統領はすぐさまどこかに連絡を取り始めた。
そして、すぐに連絡が取れたのか、画面が二面に変わる。
三者通話の要領だろうが、もう一人の移された人物は軍服に勲章を大量に付けた壮年の白人男性であった。
その男性の顔を見て、マドカはフンと鼻を鳴らし、納得したようだ。
「なるほど、国防長官の指示か」
軍服の男性、アメリカ国防長官、チャールズ・ジョニー・チャールトンはマドカを見てフンと不機嫌な表情になる。
「大統領に呼ばれたので何かと思ったら、何の用だ、小娘」
上から言う言葉に、聞いていた箒たちは眉を顰める。
だが、その大きな態度は次の瞬間、恐怖に変わる。
「相変わらずな態度ですね、長官」
「なっ!? スコール・ミューゼル!?」
途端挙動不審になる長官に、スコールはフンと鼻を鳴らし興味なさげに目線をそらした。
「今は私の事はどうでもいいわ。そう、今は、ね」
「ぐっ……」
冷や汗を流し苦悶の表情をする長官。
一体スコールと長官の間に何があったのか、気になるところだがスコールの言うとおり今はその事を気にしている場合ではない。
「単刀直入に言う。何故メメント・モリと紅椿を指名して銀の福音捕獲を要請した」
マドカの質問に、しばらく無言で数回深呼吸し、平静を取り戻した長官は努めて冷静な口調で答える。
「IS学園側での最大戦力がメメント・モリと紅椿だと判断したからだ」
アメリカは学園でのIS行儀の試合映像をすべて取得し、それらすべてを網羅したうえでメメント・モリと紅椿が最適だと判断した。
そう言っているのだが、それはおかしい。
「それならば私とラウラの二人が適任だろう。ラウラは軍属であるし、私も戦場経験がある」
「何を言う。ISスペックで優れているのはメメント・モリと紅椿だろう。機体性能がより高い方に望みを託すのは当たり前のことだ」
「ハッ、ボロが出たな」
マドカが鼻で笑い、長官が怪訝な表情をする。
「ヴァーテックスロード社」
マドカの一言に、サッと顔色を変える長官。
「ヴァーテックスロード社とはなんだ?」
横で静観していた千冬がマドカに聞く。
「アメリカとイスラエルが共同開発したという銀の福音は、各々の開発コンセプトや技術を提供し合っているだけで、それをまとめて形にしたのがヴァーテックスロードだ」
つまり、アメリカの政府の息がかかったIS開発企業なのであるが、ここからがきな臭い話になる。
「ヴァーテックスロードは兵器開発を生業としている企業でな、アメリカやイスラエルの兵器はほとんどココの製品だ。そこで開発したISが普通なはずがない。そもそも、銀の福音は『軍用IS』だ。アラスカ条約に抵触しているのを理解しているか?」
「あっ」
箒が声を上げる。
アラスカ条約とは、現行の戦闘兵器はISの前ではただの鉄くずに等しく、それ故に世界の軍事バランスは崩壊してしまい、さらに開発者が日本人ということもあり日本がIS技術を独占的に保有していた事に危機感を募らせた諸外国が、IS運用協定、通称「アラスカ条約」によってISの情報開示と共有、研究のための超国家機関設立、軍事利用の禁止などが定められたのである。
軍事利用禁止のISにおいて、イスラエルとアメリカは軍用ISを開発しているのだ。
だが、長官はそれを鼻で笑う。
「ふん、そんなものを律儀に守っている国など存在せん。現にそこにいるドイツの代表候補生も軍属でISを軍事利用しているだろうが」
「……くっ」
ラウラが悔しそうな顔で俯く。
長官の言う事は真実で、他国を攻めるような利用こそしないが、防衛や国内治安維持のためにISを活用している国はある。
そういった事実を黙認し、他国を攻めない限り指摘しないのが世界の暗黙の了解なのである。
「アンタ馬鹿か」
マドカが、長官に容赦ない罵倒をする。
流石の長官もこめかみをピクピクと痙攣させ怒りを耐えているが、そんなものマドカには関係ない。
「現状ドイツはISを『軍事利用』しているのはたしかだろう。しかしそのISは『軍用』じゃあない。いいか、これは重要な事だ。もとより軍用に作られたISが存在するという事が問題なんだよ」
マドカの言うとおり、ラウラの所属する部隊ではISを治安維持や防衛のために利用しているが、それを軍用にチューンしているわけではない。
しかし、最初から軍事転用目的に作成されたISなら話は別だ。
「そんな軍用ISに対し、日本の生徒を当てようとするアンタたち、いやヴァーテックスロードの意図を言え」
マドカの問いに、無言になる長官。
そんな沈黙を再びフンと鼻を鳴らしたマドカが面白くなさそうな顔で指摘する。
「アンタらアメリカの考えはわかってるさ。『我らがステイツが世界のリーダーでなければならない』『技術力は日本が世界一だろうが、世界で最も強く、またその力を保有する国は我らがステイツでなければならない』そんなところだろう」
指摘され、ハンと笑う長官。
何を今更、と言いたげな表情だ。
「だから、ヴァーテックスロード社とアメリカ政府は考えた。日本に拠点を置くワールドエンブリオの技術力が世界を席巻するのが面白くない、アメリカの権威にかかわる非常事態だ。ならばワールドエンブリオより技術力があるという事を証明すればいい。より劇的に、センセーショナルにな」
「……何が言いたい」
長官は唸るような低い声でマドカを睨むが、当のマドカは真っ向から睨み返している。
「なんだ、言っていいのか? じゃあ言ってやるよ。銀の福音の暴走は『ヤラセ』だってことだよ」
「なっ!?」
これには驚きを隠せない千冬と周囲で聞いていた照秋達。
スコールは、深いため息をついていたので、わかっていたのだろう。
「そんな憶測でものを言うんじゃない!!」
激怒する長官だが、それすら白々しく見えてしまう。
「なら、今こちらに向かっている銀の福音パイロットは誰だ?」
「……それは……」
「情報開示された時からおかしいと思ってたんだよ。銀の福音のカタログスペックは開示しているのに、パイロットに関しては開示していない。さらに確保しろという命令だが、パイロットの生死についても何も条件が無い」
「……まさか」
セシリアが、自分の記憶の中の可能性とマッチしたので呟くと、マドカはそれに頷いた。
「現在銀の福音は無人機操作で動いている」
「無人機!?」
「何を馬鹿な!?」
シャルロットとラウラが声を上げるが、実際無人機ISの存在を知っている照秋たちは驚かない。
「無人機、つまりドローンISを開発し、量産体制が整えば、手を汚さないゲーム感覚で戦争が出来る。違うか?」
過去、現在においても戦争で無人機体の兵器開発は進められている。
無人航空機など最たるものだろう。
その名も「
人の手を汚すことなく、ゲーム感覚で人の命を奪う兵器である。
その概念をISにも持ち込もうというのだ。
軍需企業が考えそうなことである。
長官は無言のまま、隣の画面では大統領も眉間に皺を寄せ考え込んでいる。
「人道、非人道だなんていうつもりはないが、そんなアピールをするために私らを利用するな」
バッサリ言うマドカに歯ぎしりする長官。
「それに、残念だが今現在メメント・モリと紅椿はメンテナンス中で出撃不可能だ」
「……っ!?」
目を見開く長官。
セシリアたちも照秋と箒の方を見ると、申し訳なさそうに二人は頷いた。
今朝の専用機のパッケージ試験で束が乱入した時、メメント・モリと紅椿をチェックしメンテナンスに移行させたのだ。
メンテナンス完了時間は、明日の7時である。
つまり、二人は任務に携わることが出来ないのだ。
当てが外れて悔しいのかマドカを睨む。
だが、そんなマドカは三日月のように口元を歪める。
「さて、お前らの浅い考えが暴露されたわけだが、ここにその計画を止めることが出来る人間がいる」
そう言って、マドカの後ろで欠伸をしていた束に視線が移る。
大統領と長官は、まさかの人物登場に声を上げられないくらい驚く。
そんな驚くおっさん二人を無視し、よっこいしょと掛け声をあげ立ち上がる束は、バンッと叩くように機材に手を置きモニタを見る。
ニコリと、笑っているが、大統領と長官は本能的に理解した。
これは、怒っている、と。
「面白いこと言うねえ、アメリカは。そうかー、ステイツは世界一であるべきかー。ふーん」
軽快な声なのに、大統領に重くのしかかる言葉。
長官も、冷や汗を流す。
「じゃあ、君たちでISより強い兵器開発できるよね?」
そう言って、空間投影型のコンソールを展開し、素早くタイピングを始める。
「な、何をしているのだ、プロフェッサー、束」
大統領がこわごわといった感じで質問する。
それを束は、鼻歌を歌うように、こう言った。
「んー? アメリカにあるISコア20個全ての起動を停止させる」
「ちょっ!? 待ってくれ!!」
突然の束の行動に、大統領が止めに入る。
だが束は手を止めない。
「だって、君たちは一番なんでしょう? 日本の技術力より高みにいるんでしょう? じゃあ、ISなんてお役御免じゃないの?」
「だ、誰もそんなこと言っていないだろう!!」
「言わなくてもまーちゃんの言葉否定しなかったじゃん」
「そ、それは……あ、あんな戯言に反論する気も起きなかったんだ!」
大統領は焦りに焦った感じで何とか束に辞めるよう懇願するが、長官は顔を青ざめさせたまま無言である。
「で、長官さん? ISコア止めるけどいいよね? 君たちの計画で生徒達を危険に晒すなら、コアを停止させるよ?」
ここで、やっと長官はハッとし、慌てて束に止めるよう懇願した。
「た、頼む、コアの停止だけは、止めてくれ!」
「止めてくれ?」
束は笑顔ながら、一つトーンを落とした声を出す。
長官は、ヒッと小さい悲鳴を上げた。
「……や、止めてください。お願いします!」
その言葉に満足したのか、一層笑顔を深めた束は、タイピングを止めた。
「じゃあ、福音を止めなよ」
「わ、わかった」
ホッと一息つく長官と大統領。
そして、ホッとする箒たちや千冬。
マドカのとった手段や、束の脅しに思うところはあったが、生徒が危険な目に遭うという事が無くなり安心したのだ。
隣では山田真耶とスコールもホッとしている。
長官は、どこかに連絡を入れ、福音を止めるよう指示を出した。
恐らくヴァーテックスロード社であろう。
だが、いつまでたっても福音の動きは止まらない。
長官は再びヴァーテックスロード社に連絡を入れた。
すると、長官は顔を青ざめさせ何か小声で言い合っている。
「どうしたのー? 早く止めなよー」
束はニコニコ笑顔で長官を見るが、当の長官は無言で俯くばかりである。
そして、ぽつりとつぶやいた。
「む、無理だ……」
「なんで?」
束は笑顔のままである。
「ドローンが……暴走してこちらの指示を受け付けなくなった」
ドローン、つまり無人機の暴走によって制御が効かなくなった、そういう長官。
再び、ざわつく箒たち。
「ドローンがオフラインになっていてこちらのコマンドを受け付けない状態なのだ……」
「ふーん。じゃあやっぱりコアを止めちゃおうか」
再びタイピングを開始する束に、長官は悲鳴を上げるように止めろと言った。
「止めてくれ!! コアを停止しないでくれ!」
「何故?」
束は長官を見ず投影したモニタを見ながらタイピングを続ける。
口ごもる長官。
「ど、ドローンISには、ステイツで開発した新機構の動力源を使用しているのだ。その制御をコアが行っているから、コアが停止すると動力が停止してしまうのだよ」
ハハハ、と笑う長官だが、顔色は優れない。
「その程度の理由? 日本を危険に晒すのと新動力、どっちが大切なの? まさか世界のリーダーたるアメリカが命より技術とか言わないよね?」
「そ、それは……」
束の冷静な指摘に、汗が尋常ではないくらい流れている長官だったが、やがて観念したのか、重い口を開き禁忌を口にした。
人類にとって、最も危険とされるエネルギー。
それは。
「……ドローンの動力源は『核』だ。……その制御をコアも担っている」
「か、核だとっ!?」
千冬は叫ぶ。
マドカも、まさか核を使っていたことは予想外だったのか驚き絶句していた。
「い、いまコアを停止すれば、ドローンの動力制御が不安定になり、核が暴走する恐れがある……」
「そんな危険な兵器を生徒に相手させようとしていたのか!!」
千冬は激怒する。
自国アピールのために偽装してISを充てようとした、それは100歩譲って許そう。
だが、よりにもよって、使用している技術が核なら話は別だ。
そもそも日本は非核三原則が存在する。
核を作らない、持たない、持ち込まない。
アメリカは、この非核三原則を破った。
日本を、世界を敵に回す兵器を作りだしたのだ。