一話 花嫁は見世物舞台への道を行く
白い部屋に純白のヴェールとドレスを着た一人の女性が自室の鏡の前に座っている。
彼女は今、幸せに満ち溢れていた。
『結婚式に行けず、申し訳ありません』
「気にすることはない。仕方の無いことだ」
彼女は誰かと電話していた。
「子供達の様子はどうだ?」
『はい…。熱は収まってきましたが、まだ様子見という所です』
「そうか…」
どうやら電話の相手は子供の看病をしているらしい。
『そういえば由比ヶ浜さんから伝言で『結婚式に行けなくてごめんなさい!』だそうです。ー平塚先生』
平「ハハッ…。ついさっき電話が来て聞いたよ。ー雪ノ下」
平「しかし、まさか彼女が旅行に行ってしまうとは思わなかったな…」
雪『そうですね。後、平塚先生…。もう私の名字は『雪ノ下』ではありませんよ』
平「おお!そうか。君は今『葉山雪乃』だったな!」
雪乃という女性は「葉山」という人と結婚しているようだ。
平「どうだ…?今は幸せか…?」
雪『はい…。先生のお陰で私は今、幸せです』
平「そうかそうか、それは良かった」
昔、生徒と教師の仲だった二人の談笑が幸せそうな雰囲気を出しながら続く。
平「だが、今は家にいた方がいいのかもな…」
雪『そうですね…。最近物騒ですし…』
突如、空気が少し冷たくなった。
原因は一ヶ月前に大量傷害事件が起きたからだ。
平「あれから一ヶ月しか経ってないのに旅行に行ってしまうとは…。肝っ玉どころか無謀すぎるな…」
どうやら由比ヶ浜という女性は旅行に行ってしまっているらしい。
雪『多分、一ヶ月間なにも起きていないという理由だからじゃないですか?』
平「だからってなぁ…」
平塚は呆れることしかできなかった。
雪『ですが、彼女はこうも言っていましたよ。『もし何かあった時はアタシがぜ~ったい皆を守るから安心して!』と』
平「ハハッ…。それは頼もしいな」
その言葉を聞いて平塚は少し笑みがこぼれた。
平「そう言えば小町くんも元気かね?」
雪『ええ。彼女も『用事がなかったら絶対行ってたのに!』って悔しがってましたよ」
平「そうか…」
その時。
コンコンコン ガチャッ
「平塚さん。お時間です」
アテンダーが花嫁に準備を呼び掛けた。
平「はい…」
花嫁は振り返り、優しく微笑みながら頷いた。
平「それじゃあ、そろそろ切るよ」
雪『わかりました。それでは…」
花嫁は電話を切り式場へと向かう。
たとえ、どんな困難が私たちの目の前に現れたとしても、夫との愛と私のこの拳で成敗してくれる!!。この!私の自慢の拳で!!
綺麗な見た目とは裏腹な男勝りな思想を持ちながら…。
しかし、彼女は知らないー。
夢であった結婚が見世物に変わることを。
そして花嫁を呼びにきたアテンダーが怪しげに笑っていたことに…。