ウマ娘配達屋   作:配達ξ紳士

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1話:転生中佐のひらめき

私の名前は、ルナ・セレス。

転生したらお尻の辺り……厳密には腰の近くに、尻尾の生えていた“元”男である。

 

いわゆるTS。

しかして心にtんtんは健在。

ゆえに、これからは“俺”と心の中の一人称を定めさせて貰おう。

 

さて、そんな俺には先ほど述べた通り、文字通りテールがあるわけだが。

 

ここは『ウマ娘』の世界……。

ではなく、

 

「ふむ、自動手記人形とな」

 

『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』の世界であった――。

 

 

ξ

 

 

「セレス中佐! もう我々は我慢なりません‼︎ ここは一発“どでかいの”やっちゃいましょうよ!」

「「「そうだそうだ!」」」

 

【悲報】軍のクーデターの神輿にされそうです、俺。

 

「まあ待て、ジョンソンくん」

「リヴェティーナです、中佐」

 

ここはテルシス大陸の南部に位置するライデンシャフトリヒと名のつく国。

俺は、戦時中に活躍した『ウマ娘通信中隊』という部隊を率いる中佐である。

 

この部隊は、ウマ娘の並外れたスピードを活かし、通信だけでなく、諜報、突撃、支援と何でもこなす“何でも屋”部隊だ。

 

先の大戦では、彼女たちは最前線で電信を引き、敵軍の通信設備を破壊。

さらには、全軍突撃の先頭に立ち、数えきれない戦果を挙げている。

一人当たりのキルレは両手の指じゃ足りないくらいだ。

 

――しかし、戦争が終わった今、彼女たちはとある危機にある。

 

「待てません、中佐! 我々は国のために命を懸けて戦ったのに、今や『ウマ娘通信中隊』は解体の危機。全員が解雇されるなんて!」

 

「ああ、ソルティーナくん、その通りだ」

「中佐、私はリヴェティーナです」

 

そう、彼女たちが解雇される理由は諸々ある。

特に一番の問題は“燃費が悪い”からだ。

 

ウマ娘という存在は、生物学的に見ても高燃費な生き物だ。

戦時中はその旺盛な食欲が許されていた。

だが、平時となればその食糧消費量が、軍の予算を圧迫してしまう。

 

「つまりな、上層部としては、君たちの食費がバカにならんというわけだ」

「ぐぬぬ……」

 

つまり俺たち『ウマ娘通信中隊』は平時の今においてお荷物扱いされているのだ。

 

「ですが! 国は我々を見捨て、美味しいことだけしたら、はいさようなら? そんなの許せません‼︎」

「「「そうだ! そうだ!」」」

 

熱気に包まれ、

 

「……わかった。お前たちがそこまで言うなら、私も腹を括る」

「「「おおおおお!」」」

 

――軍部にクーデターを起こして!

 

……やらない。

 

「えっ?」

「だから、やらない。そんな面倒なこと」

「中佐ぁぁぁ!」

 

基本、俺はのんびり屋だ。

それに、クーデターなんて起こしたら、せっかくの第二の人生が台無しだ。

……それにしても、どうやって彼女たちを救ってやるべきか。

 

俺は考える。

いや、正確には、椅子にどっぷりつかり腕を組みながら思索する。

 

そして……しばらくの時間が経った頃。

俺はついに天啓を得た。

 

「でもいい案がある」

「そ、それは……?」

 

さっと席から立ち上がり、なんなら机の上に乗り、皆の衆を見渡す。

ごほんっ、と咳払いをした後に――。

 

「宣言しよう! 私は今ここに、『ウマ娘配達屋(中隊)』を設立する!」

 

『ウマ娘配達屋』という突拍子もない言葉に、周囲は一瞬静まり返る。

が、俺は意に介さず、勢いよく説明を始めた。

 

「平時において、我々は軍にとって燃費の悪いお荷物かもしれん。だがな、ウマ娘の脚力は本物だ。緊急の通達や何かを届けるのに、これほど適した存在はないんだよ」

 

皆はまだ半信半疑のようだ。

しかし戦後のこの世界では、自動手記人形が書く手紙を大切に扱う風潮が広がっていくことになる――。

つまり、今後の世の中は手紙で動くと言っても過言ではないのだ。

 

「中佐、それってどういうことですか? 自動手記人形、ですか?」

 

首を傾げるリヴェティーナ(愛称:ジョンソンくん)に、俺はうんうんと大きく頷く。

 

「手紙を代筆してくれる専門職があってな。最近、あちこちの街で人気を博しているそうだ。で、その手紙を遠方へ急いで運ぶには、人間より速い脚力が必要になるだろう?」

 

そこで、ウマ娘が登場するわけだ。

何しろ、かつての最前線を突き進んできた脚力は戦争が終わった今でも健在。

要するに、戦場を駆けていたウマ娘たちが、今度は大切な手紙を届ける走り屋になればいいんじゃないか、という発想である。

 

「でも、中佐……そんなので本当にやっていけるのでしょうか?」

 

皆、仲間の暮らしをなんとか守りたいと思っているのは間違いない。

ただ、いきなり“配達屋”などと言われて戸惑うのも無理はない。

 

「やっていけるさ。そもそも手紙は高級品だ。何かを文字にして綴るってのは、俺たち軍隊の世界では当たり前だったかもしれないが、民間の世界では尊い行為なんだ。しかも、宛先が遠いほど、迅速かつ安全に運ぶ手段が必要になる。つまりビジネスチャンスだな」

 

そう言って、俺は机の上に置かれていた地図をバサリと広げる。

ライデンシャフトリヒ国内だけでなく、隣国へも郵便業務を拡大していけるはずだ。

なんたって、国境を超えるときにも、その圧倒的スピードが役立つのだから。

 

「中佐、それなら……私たちは解雇されずに済むんでしょうか?」

「いや、少なくとも“軍の中”という形ではなくなる。しかし、会社という独立した形で配達屋をやればいい。つまり民間だな」

「なるほど……中佐がそうおっしゃるのなら、我々はついていくのみです。ですが、手紙を預けてくれる依頼人はどうやって集めれば……?」

 

もっともなご質問である。

 

「それは安心しろ。私には“伝手”がある」

 

 

ξ

 

 

「で、僕のとこにきたってわけ?」

「そうなんだ、クラウディア」

「お、おい! ホッジンズでいいってば」

 

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