ウマ娘配達屋   作:配達ξ紳士

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劇場版のアレです


14話:紫羅蘭永恆花園

俺――ルナ・セレスの運営する『ウマ娘配達屋』は、投資家たちからの多額の資金援助もあり、今やこの国有数の大会社へと進化していた。

 

会社の名前通り荷物の運搬はもちろん、C.H郵便者との業務提携により手紙の配達から、さらには現在完成間近の電波塔にまで手を広げ、また国営競馬(バ)場においてのウマ娘人員補充までと、手広くやっていた。

 

最近では、私たちの会社が数年前仕事を請け負った。

車の発明家であるアルフレッド・スタイン氏の本格的な事業展開にまで出資している。

 

さらには電波塔の建設後に予定されている、“無線範囲大陸計画”のため、各地の山々に電波を受信し跳ね返す機材を設置する作業を『ウマ娘配達屋』総出で進めているところだ。

 

そして投資家からウマ娘に民間人や政府に軍部……と、横の繋がりを意識しまくった結果、現在ではなんと、人っ子一人挟めば、大陸中ほぼ全ての存在がお友達という。

 

いわゆる、――超情報網を構築していた。

 

 

ξ

 

 

「ふむ、少しやり過ぎたかな?」

 

そんなことを思う俺だが、やってしまった過去はもう変えられない。

大人しく、この大会社の顔として全国に名前を轟かせてやろうと思う。

 

そんなことを考えていると、コンコンと扉がノックされる。

 

「中佐、失礼します」

「おお、リヴェティーナくん。どうした」

 

「緊急のご連絡です。中佐の『探していた人物』らしき者が、発見されたとの情報が入りました」

 

その声に俺は静かに身を乗り出しつつも、話の続きを促す。

 

「ほう……探していた人物か。どこだ?」

 

彼女は、細かい情報が記された紙片をそっと机の上に置いた。

そこには、かすかな噂と、エカルテ島という小さな島の座標が示されていた。

情報は不確かだが、俺の胸中に確かな鼓動が響く。

 

――連絡網の果てに、再び浮上したのは。

かつて戦場で名を馳せたギルベルト・ブーゲンビリアの影――。

 

「分かった、今すぐにホッジンズの元へ連絡を取る。いいか、この情報は他に漏らさないよう皆に言っておいてくれ」

「はっ!」

 

 

 

その晩、俺はホッジンズと密談するため、C.H郵便社の社長室に足を運んだ。

机の上に広げられた地図と情報資料を前に、ホッジンズはいつもの冷静な表情で俺の言葉に耳を傾けていた。

 

「セレス、これが今回の情報か」

 

とホッジンズは指で地図上のエカルテ島付近をなぞる。

 

「ああ、これだ。各方面から寄せられた手がかりによると、ギルベルトと思われる人物がこの辺りで目撃されている。情報は不確かだが、一考の余地はあるだろう?」

「確かに、行方不明ではなく。もし本当に生きていたのなら、しっかり確認しにいく必要があるな……」

 

ホッジンズはしばらく地図を見つめた後、ゆっくりと頷いた。

 

「わかった。行ってみよう。もしあいつが生きていたのなら……連れて帰る」

「そのことなんだがホッジンズ」

「うん? なんだ」

「私もついて行っていいか?」

「それは……どうしてだい?」

 

突然の提案にホッジンズが訝しむような顔を浮かべた。

 

「いやなに、ヴァイオレットとの約束があるからな」

 

ヴァイオレット。

その言葉を聞いたホッジンズは顔を辛そうに歪める。

 

「そう、か。そうだな。よしわかった、じゃあ内密に二人だけで行こう。あの娘がこの情報を知って、もし裏切られたら悲しむに違いない」

「感謝する……。ところで」

「ん?」

 

俺は言葉を一度区切る。

 

「これは、もはやデートだな」

「やめてくれよ……」

 

ホッジンズが天を仰ぐような仕草をしてみせた。

 

「君のことでただでさえ社員から噂されているんだ、変な言い方はよしてくれ」

「冗談だよ、じょーだん。君には、立派なガールフレンドが既にいるじゃないか」

 

そう、聞くところによると。

彼はベッドの上ではクラウディアと下の名前で呼ばれているとか……。

 

「そ、その話はだな⁉︎」

 

焦るホッジンズ。

どこからその情報を聞いたのか聞いてくるが無視をする。

うちの情報網はこんなことも入ってくるのだ。

 

「よし、それでは今日のところはお開きにしよう。明日の日の出頃、港で集合だ」

「あ、明日⁉︎」

「うん? 早いほうがいいだろう?」

 

何を当たり前のことに驚いているのだろうか。

 

「……わかったよ。全く、君のペースはいつまで経っても読めないね」

 

そして深夜、俺は荷物をまとめ、翌朝早くの出発に備えるのであった。

 

 

 

そして数日ほどが過ぎ。

大陸横断鉄道を乗ってから、船に乗船するという手間を挟んだのち。

 

俺たちは、こじんまりとした島――エカルテ島へと降り立っていた。

 

そして情報に従い、“先生”と呼ばれているらしき人物について住民たちから聞き込みを行い、無事、目的の人物の家の前まで辿り着くのであった。

 

「ふむ、ところでホッジンズ」

「なんだい、セレス」

「もし、ここにいるのが本当にギルベルトだとして、彼が私たちの提案を断ったらどうするつもりだ?」

 

俺からの問いに、ホッジンズはすぐさまこう答えた。

 

「そりゃあ……連れて帰るさ。どんな手を使っても、ヴァイオレットちゃんともう一度、会わせるんだ」

 

その答えに俺は、

 

「その言葉、真だな?」

「ん、え?」

 

ホッジンズの困惑をよそに。

 

――扉をぶち破ると、室内への突入を敢行したのだ。

 

「……っ⁉︎ 誰だ‼︎ んっ! ぐはあああああ‼︎」

「ちょっ、セレス! 一体何を……って、ギルベルトおおおおおお‼︎」

 

二人の男の叫び声がこだまする。

ホッジンズが驚愕したように“ギルベルト“と叫んだことで、これが目的の人物なのだと確信する。

 

し、か、し。

 

「ふむ、気絶してしまったか」

 

俺のダイビングアタックによって、男はうなだれるように倒れてしまっていた。

 

「やりすぎだよ! セレス⁉︎」

「ま、まあ。いいじゃないか? これがギルベルト少佐殿なんだろう?」

「それは……そうだけど」

「じゃあ早速、船に乗せて帰るぞ。電波塔の建設完成までに間に合わせねばならんのだ」

「え、えぇ……(困惑)」

 

 

 

男――ギルベルトを船に乗せ、俺たちは優雅な船旅を楽しむ。

もっとも、ホッジンズは気絶したギルベルトにつきっきりだが。

 

時々、目覚めたギルベルトが海に飛び込もうとするので俺がまた気絶させている。

そしてそれは鉄道に乗っていても同様で。

 

「だめだ! 私は、あそこ(ライデン)に戻っていい人間なんかじゃない‼︎」

 

とかいって車両から飛び出そうとするので。

 

「――ふんっ!」

「せ、セレス⁉︎」

 

俺特別の気合いの一撃を怪我しないように打ち込み、眠りについて頂くわけだ。

 

もちろん、トイレなどの時にはホッジンズに介抱……もとい解放されるのだが。

 

 

ξ

 

 

そして帰宅、夜ごろ。

ライデンでは、感動(?)の再会が行われていた。

 

「しょ、少佐……?」

「っ……!」

「少佐、ギルベルト少佐なのですね⁉︎」

「…………」

 

彼は、ヴァイオレット・エヴァーガーデンに抱きつかれていた。

 

「少佐……? どうしてそんなにぐったりしておられるのですか……?」

 

ギルベルトが、ちらりと目を向けてくる。

その視線の先に気づいたヴァイオレットが、こちらに詰め寄ってきた。

 

「セレスさん……少佐に、一体何を‼︎」

 

義手がこちらの服を強く掴んでくる。

 

「そりゃあその……何も?」

「嘘です! ではどうして少佐があんなにも怯えた様子でいるのですか⁉︎」

「……少しの間、気絶していただきました」

 

視線が鋭い。

ちょっと怖気付いてしまったので、正直に答えた。

 

「少佐! お無事ですか? 何か他に痛いところはありませんか?」

「だ……大丈夫だ。その、ヴァ……ヴァイオレット」

「っ! 少佐‼︎」

 

ぎゅっと強くさらに強くギルベルトはヴァイオレットに抱きつかれる。

するとヴァイオレットに、一連の動向を知っているホッジンズが声をかけた。

 

「その……ヴァイオレットちゃん。コイツ(俺)も悪気があったわけじゃないんだ。ただ、君にギルベルトを会わせてやろうと、してくれただけなんだ」

 

その言葉にヴァイオレットは小さく頷くと。

 

「そう……でしたか。それなら、仕方ありませんね。少佐はここにいます」

 

“ここにいます”

そう、ギルベルトはヴァイオレットの豊満の間に顔を押し付け挟まれている。

 

「ありがとうございます。セレスさん、少佐を……連れて帰ってくださって」

「う、うむ。その……お幸せに?」

「……っ! はい‼︎」

「ヴァ、ヴァイオレット?」

 

俺からの祝福に、ヴァイオレットは歓喜し、ギルベルトは気まずけな様子だ。

 

「んんっ!」

 

ホッジンズがこの微妙な空気を打開するべく、話を始めた。

 

「て、わけで……。ギルベルト、お前。ヴァイオレットちゃんを大事にしろよ?」

「ホ、ホッジンズ……」

「お前はヴァイオレットちゃんを待たせ過ぎた。後のことは知らん」

 

からの丸投げである。

あとは、二人で話を進めてくれとでもいわんばかりに。

 

「……ヴァイオレット」

 

先に口火を切ったのはギルベルトの方だった。

 

「はい、少佐」

 

ヴァイオレットも大人しく応じる。

 

「その、私は君のことを道具として使ってしまった」

 

その目に浮かぶのは後悔の色。

 

「少佐。私は気にしていません」

「っ! でも‼︎」

 

ギルベルトが声を荒らげる、が、ヴァイオレットは――。

 

「でもじゃありません! 少佐‼︎ 私は、少佐が戻ってきてくれたというだけで、それだけでいいんです!」

 

まるで子供をあやす母かのように、その気持ちを伝える。

 

「ヴァイオレット……君は……」

「私は、ギルベルト少佐を“愛しています”」

 

そして、単刀直入な告白。

ヴァイオレットは、その言葉をようやく解き放てたかのように、すっきりとそう言う。

 

「……愛してる」

「……はい、私は、少佐を愛しているのです」

 

しばらくの静寂の後、ギルベルトは目を伏せながら、ゆっくりと口を開いた。

 

「ヴァイオレット……私は、私で、本当に良いのか?」

「はい、少佐」

「そうか……」

 

――ありがとう、ヴァイオレット。

 

「私も、君を“愛している”」

 

気づけば、周囲には人だかりができていた。

告白の余韻と、集まった人々の温かな祝福が、室内に優しく漂っている。

 

しばらくの静寂の後、窓の外から微かに聞こえる歓声と、遠くで始まった音楽のような調べが、次第に迫ってくるのを感じた

 

――その瞬間。

 

全員の視線が一斉に外へと向けられた。

 

夜空にそびえ立つ完成したばかりの電波塔から、一斉に打ち上げられる花火。

それはまるで新たな未来への希望を告げるかのように、鮮やかに咲き誇っていた。

 

花火の光が、窓越しに広がる本土の街並みを照らし出し、その輝きは、まるでかつての戦火を乗り越えた我々の歩みを祝福するかのようだった。

 

ヴァイオレットは、ギルベルトの手をしっかりと握りしめながら、静かに目を閉じ、深い息をついた。

 

「少佐……もうこの手を離しません」

「……私もだ、すまなかった。ヴァイオレット」

 

その時、電波塔から打ち上げられる一斉の花火が、夜空を鮮やかに彩り始めた。

 

燃え上がる火花が、まるで過ぎ去った日々の痛みや迷いを一瞬にして洗い流し、新たな希望の灯火として空いっぱいに広がる……。

 

 

かくして、ヴァイオレットとギルベルトの感動の再会がここに実現したのであった――。

 

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