魔法少女リリカルなのは STAND BY ME 作:ユキアン
なのはと別れてビルの上を駆け回り、クロス・アルケミーが目標を捉える。女が三人に男が一人、その内少女が名のは同様に重傷を負って気を失っている。それで大体の事情を把握する。おそらくはあの少女となのはが一騎打ちして重傷を負わせ、そこに他の二人が乱入してなのはに重傷を負わせたのだろう。最後の一人はオレの後から侵入したのか、それとも最初から居たのかは分からないがターゲットから外しても良いだろう。どうやら金髪の女は治療役だったみたいだな。なら残りのピンクっぽい髪の女と褐色の肌の男がなのはをやった奴か。今は少女の治療に専念しているようでこちらには気付いていない。いつもならここで先制攻撃だが、一応は交渉しておく事にする。ミッドでの情報収集によって魔法の活用法は思いついている。一つは変身魔法。これによって戦闘形態、つまりは全盛期の姿を得る事が出来る。そして、もう一つが幻術。これを囮に使い交渉や奇襲を行なう。今回はその前者である交渉に使う。
全盛期の姿の変身して幻術を作り、意識をそちらに移す。これで幻術で作り出したオレを自由に操る事が出来る。もちろん本体の方もある程度動かす事が出来る。
「さて、どうなることやら」
本体から離れて敵が居るビルに着地する。
「お前らがなのはをやった犯人か?」
「そうだ」
ピンクの髪の女が即答する。
「オレが何故ここに来たのかは分かっているな。オレの大事な人に手を出したんだ。覚悟は出来ているのだろう」
「ああ。だが、こちらもやらなければならない理由があり、退くつもりも無い」
ピンクの髪の女と褐色の肌の男が構える。
「一応聞いておく。なのはを、あの少女を傷つけたのはお前ら二人か?」
「そうだ。あの少女が我らの仲間を必要以上に痛めつけていたのでな。派手に抵抗もされたのでああするしか無かった」
「なるほど。じゃあそっちの二人は良いや。とっとと出て行け。それまでは待ってやる」
三人が眉をひそめるがオレはとっとと行けと手を払う。結局、気を失っている少女を抱きかかえて金髪の女が本を取り出し、何処かに転移する。それを見届けてから両手を広げて宣言する。
「さあ、戦争の時間だ」
その言葉と同時に身体が撃ち抜かれる。幻術の身体を消し、意識を完全に本体に戻す。
幻術を見送ってから戦争の準備を始める。
「アル、今からの戦闘がオレの本来の戦闘スタイルだ。最初は補助はいらないからオレにあわせれる様に学習しろ」
「了解した」
クロス・アルケミーに近くのビルから材料を調達させPGM へカートⅡを錬成する。バリアジャケットの上からでもある程度のダメージ(骨折など)を負わせるには対物ライフルを使うのが一番だ。どうせならこれで死んでくれるのが一番なのだが、なのはに嫌われたくないから仕方なく腕に狙いを付ける。とりあえずは女の方からだ。利き手と思われるデバイスを握っている肩を幻術を通して狙う。トリガーに指をかけて、幻術が宣戦布告すると同時にそれを引く。
「ちっ、硬いな」
弾丸は確かに命中したが、どうやらオーラ型の防御魔法が働いていたのだろう。デバイスは手放したが、血は流れていない。寸前で止められて衝撃しか伝わっていない。
「ならば魔力を削り取る」
PGM へカートⅡを更に錬成させM2重機関銃を二丁構える。弾薬は威力を上げる為に徹甲弾にして撃ちまくる。撃ったその場でクロス・アルケミーに錬成させ、銃身に熱が籠れば再度錬成して弾幕を張り続ける。敵はこちらが一人と判断してこちらに真直ぐ飛んでくる。男が前方に立ち強固なシールドを張りながら。普通ならそれで問題は無い、普通なら。残念ながらスタンド使いは普通ではない。
突如真下からも銃弾が撃ち込まれる。更には左右後方からもだ。
「如何に防御魔法が優れていようとも上空以外からの銃弾の雨を凌ぎきれる訳が無い」
銃弾の出先を見ると、そこには重心が固定されトリガーが引かれたままのM2重機関銃が配置されている。更に標的が移動するとすぐに向きを整えるための錬成が行なわれる。
「これがマスターの本来のスタイル?ただの質量兵器のごり押しじゃないか!!いや、その前に一体何処からあんな物を!?」
「これが今、最も効率が良い戦術だ。効率よく敵を殲滅する。それがオレの戦闘においてのポリシーだ。更に言えば管理局の法など知った事じゃない。なぜなら地球はその法に批准していない。質量兵器の出所はまた今度説明してやる」
屁理屈と言われ様がオレは気にしない。
敵はシールドを張り続けて耐えていたが、しばらくするとこちらに向かって突撃を開始してきた。
「ふむ、ならば歓迎してやろう」
M2重機関銃をクロス・アルケミーに撃たせながらM202ロケットランチャーを錬成させて構える。狙いを付けて4連射すると同時にM2重機関銃の射撃を止める。4発全てが着弾し、爆発する。これでやれたとは思ってもいない。クロス・アルケミーに剣を錬成させ敵が斬り掛かってくると思われる方向に剣を振る。
「レヴァンティン!!」
女の声と同時にデバイスが稼働する音と何かが飛び出す音が聞こえる。爆炎の中から予想通り女が斬り掛かってきたのでそのまま鍔迫り合いに持ち込む。横から殴り掛かろうとする男をクロス・アルケミーで殴り飛ばす。男が勝手に弾き飛ばされて驚いている女が一瞬だけ力が抜ける。その隙を逃さずに足に波紋を集中させて蹴りを放つ。
「銀色の波紋疾走」
ギリギリの所でデバイスでガードされるが元からデバイスを狙っての行為だったので気にしない。デバイスを伝わる波紋が何かと反応を起こして爆発する。爆発によって距離が離れるが女のデバイスが鍔の辺りで折れている。女の足下には薬莢らしく物が幾つか転がっている。おそらくはカートリッジシステムに使用するカートリッジだろう。先程の爆発は波紋と魔力が反発しあって起こった物だろう。オレの方も蹴りを放った右足に軽い火傷を負う。多少痛むが戦闘に支障はない。
「くっ!?レヴァンティンが」
「退け、シグナム。ここはオレが引き受ける」
戻ってきた男と入れ替わる様に女が退き始める。戦力は奪えた以上深追いする必要は無い。
「ておあぁぁぁ!!」
そして男の独特な叫び声と共に地面から次々と氷の棘が生えてくる。それに対してオレは足に反発する波紋を集めて飛び乗る。
「何!?」
「何を驚く。これ位は出来て当たり前だろう」
そのまま棘の上を飛びながら男に近づく。男の方は飛行魔法でこちらに近づいてくる。そして肉弾戦に移る。繰り出される拳を払い、反らし、絡めとる。拳が振るえない位密着してツボに波紋を通した針を突き刺していく。あまり効果が見られない所を見ると純粋な人間ではないのだろう。おそらくはアルフの様な動物を元にした使い魔なのだろう。イヌ科の耳が付いてるし。微妙に効いてはいるみたいだが時間がかかりすぎるので針による攻撃をやめる。そして関節や骨、内臓を狙う攻撃に変更する。相手の動きに合わせて腕を絡めとり、ねじ切る。
「ぐうぅ!?」
痛みで腹筋が緩んだので肝臓に一撃を入れる。
「こほっ」
上体が沈んだ所で脇の部分に回し蹴りを入れる。
「ぐ、むぅん!!」
肺の中の空気を押し出されて苦しいはずなのにそのままオレの足を掴んで離そうとしない。
ならばそれを利用させて貰うだけだ。
掴まれた足を軸にして身体を回転させて頭部に蹴りを喰らわせる。男もさすがに耐えきれなかったのか足を離して壁に激突する。オレも無理矢理身体を回転させた事で骨折してしまったが、クロス・アルケミーによってすぐに治療する。足の治療が終わっても男が出て来ないので再びM202ロケットランチャーを撃ち込もうとした所で異変が起こる。
「なっ、これは、腕?」
オレの胸から誰かの右腕が飛び出している。そしてその腕の先には山吹色に光る球体がある。直感でそれがオレのリンカーコアであると気付き腕を止めようとする。だがタッチの差で追い付かず、リンカーコアから急激に魔力が抜かれていく。激痛に怯んだ一瞬のうちに半分程が奪われていく。
「くそがああああああ!!」
魔力を諦めて少しでも相手にダメージを与える為に腕を両手で掴み波紋を流す。
「山吹色の波紋疾走!!」
激痛で呼吸が乱れていたのかそれほど威力が出なかったが魔力の吸収が中断されて、腕も消え去った。だが予想以上に虚脱感が激しく、変身魔法を維持する事も出来なくなる。これ以上の戦闘は難しいと判断する。壁に埋まっているはずの男もいつの間にか離脱しており、街を覆っていた結界も解かれていく。隠蔽の結界は張っていないのですぐになのはを回収してこの場から離れなければならない。錬成物を再びストックに戻しながらなのはの元に戻り、抱きかかえてビルの屋上に飛び移る。その頃には結界が消え去り、誰かがここに向かってくるのを感じる。敵意は感じないのでおそらくはプレシア達だろう。
「思ったよりも元気そうね」
「ああ、おかげでな」
予想通りプレシアとフェイトとアルフ、それにフェイトのバリアジャケットと似ているが露出の少ないバリアジャケットを纏ったアリシアがやってきた。更に別方向から金髪の男子がやってくる。
「なのは、無事かい?それにジョジョ!?」
「その声は、ユーノか?」
「そうだよ。それよりなのはの容態は」
「魔力枯渇以外は応急処置を施した。詳しくは分からないが後遺症が残る様な怪我は負っていない」
「アリシア、様子を見てあげて頂戴。フェイトとアルフは周辺に気を配りなさい。結界を張っていない以上、派手な事はしないと思うけど念のためにね」
「「「うん(あいよ)」」」
フェイトとアルフが別々の方向に向かい、アリシアがなのはの傍にやってきて何らかの魔法を使用している。ユーノは先程オレが張っていた物と同質の結界を張っている。オレはなのはを二人に任せてプレシアと情報を共有する。
「落ち着いて話す暇はないみたいだけど、管理局は来ているのかしら?」
「ああ、近くまで送って貰った。こんな所にまで来た理由は最近魔力強奪犯が出没していてそれの逮捕の為だそうだ」
「そしてさっきの結界を張っていた奴らがその犯人ね」
「とりあえず判明しているのは男一人に女が三人、内一人が同年代と思われる。術式は古代ベルカ式でデバイスにはカートリッジシステムまで搭載してやがる」
「カートリッジシステムねぇ。ベルカの騎士が相手じゃあ負けても仕方ないわね」
「それがどうも同年代の騎士を一騎打ちで撃破しているみたいだ。だが、やりすぎたらしくてな。仲間の騎士が制裁を加えたそうだ」
制裁にしてはやりすぎな気もするが向こうも大分重症だったのが見えている。まあそれでもオレの怒りは収まらなかったのだがな。
「その後、なのはが結界を一度破った」
「私達も結界内に侵入を試みたけど駄目だったわ。丁度あの砲撃の反対側にいたものでね」
「オレはあの砲撃よりも前に結界内に侵入した。砲撃後はなのはを保護して奴らの内、男とリーダー格の女と戦闘に入った。結果はたぶんこっちの勝ちのはずだ。リーダー格のデバイスを破壊して男の方にもそれなりにダメージを与えた。しばらくは動けないはずだ」
「そう、分かったわ。なら後は任せておきなさい」
「すまんが頼んだ」
プレシアに後の事を任せて倒れる。魔力枯渇による虚脱感と強奪された際の激痛が今も続いていた。それを我慢して気合いだけで引き継ぎだけはと思っていたのだが、それも終わり気が抜けると同時に意識が闇へと落ちていく。
目が覚めると無機質な天井が視界に入る。記憶が正しければアースラの天井だ。身体を起こせば隣のベッドに治療を施されたなのはが寝かされている。立ち上がって傍に近づく。包帯などは巻かれていないが、傷は一切無い。魔法による治療は完璧なようだ。だが、時折魘される様に苦しんでいる。魔力枯渇による症状だろう。現にオレも未だに苦しいままだ。さすがにクロス・アルケミーでは魔法関係の事を操るのは難しい。出来ることは精々魔力の源らしき物を抜き取ったりする程度で、分け与えたりする事はできない。今オレがなのはにしてやれる事は傍に居てやる事と高町家に引き取られてからよくやった頭を撫でる行為だけだ。ベッドに腰掛け、壊れ物を扱う様に慎重に優しく撫でる。少しでも苦しみが紛れる様に。ふと枕元を見るとイタリアに向かう前に渡したブレスレットが目に入る。罅が入りギリギリ形を保っている。星の部分が欠けてしまっているそれを修理したいが素材が足りない為に星を作る事が出来ない。一応罅だけは直しておく。
「目が覚めたようね」
しばらくの間そうしていると扉が開きプレシアが入ってくる。
「オレはどれだけ眠っていた」
「6時間と言った所かしら。もう深夜だから夜勤以外の局員も眠っているわ」
「そういうプレシアはなぜ起きている」
「レイジングハートの修理と改良案をアルフォンスと相談してたからよ。さすがに安全性が確立されていないカートリッジシステムを搭載するわけにはいかないからね。アルフォンスに搭載されている貯蔵法の方が確実で安全だわ。あいつが作った物なのでしょう」
「ああ、自分の魔力をプールして使う分、カートリッジや残留魔力を扱うよりも安全だ。無論、それに耐えられるだけのデバイスが必要だがな」
「その通りよ。その為の合金が不足していてね、どうする事も出来ないのよ」
『でも、貴方ならなんとかできるでしょう?』
念話でその事を確認するという事は管理局には聞かれたくないのだろう。表向きの会話は盗聴されているのだろう。
「そうか。とりあえずは修理に留めるしかないようだな」
『後で組成データを寄越してくれ。なんとかしてみよう』
「そうね。それから診断結果だけど、貴方は既に回復してるけど、一応2日は安静にするように。なのはちゃんの方は魔力枯渇以外にも衰弱が激しいみたいね。一週間は安静にする必要があるわね」
「一週間か。他は大丈夫なのか?」
「ええ、腕が良い医者のおかげね。明日には起き上がれるはずよ」
「そうか。プレシア、なのはの事を頼んでも良いか?オレは少し別行動というか色々と調達する必要があってな」
「例のアレの材料ね」
「その通りだ。今のままでは少々戦闘が不安なんでな。三日程で良い」
「貴方は、またそうやって自分を犠牲にして誰かを守るのね」
「ああ、そうやって生きると決めたんだ。特になのはの為ならな」
「分かったわ。娘達の友人でもあるし、私の弟子でもあるのだから」
ほう、弟子にしていたのか。意外とは思わないが、中々面倒見が良いな。
「それじゃあ頼んだ」
「分かったわ。アルフォンスはデバイスルームにあるから」
「分かった」
ベッドから立ち上がり医務室から出て行く。服装は病院着のような物だが気にしない。デバイスルームには誰も居らず、機材の上に待機形態のアルとレイジングハートが浮かんでいる。
「マスター、無事だったか」
「ああ、問題無い」
「プレシアに情報を掲示したそうだな」
「問題だったか?」
「いや、プレシアなら問題無い。信頼はまだ出来ないが、信用は出来る」
機材の上からアルを回収してセットアップする。
「レイジングハート、よくなのはを支えてくれたな。すぐに改修出来る様にしてやるから待っていろ」
「I am sorry, but ask(すみませんが、お願いします)」
「ああ、任せておけ」
デバイスルームを後にして再び地球まで転移する。
目を覚ますとそこには知らない天井が広がっていた。
なにをしてたんだっけ?
確か街を歩いていて、ヴィータちゃんと戦って、ジョジョ君が!?そうだ、ジョジョ君がヴィータちゃん達を。
ベッドから身体を起こそうとしても身体に力が入らない。
「意外と遅く目が覚めたようね」
「プレシアさん?」
「無茶のしすぎよ。後四日は入院よ。ご家族の方には連絡してあるから、後で怒られなさい。レイジングハートの方は今改修用の合金を用意するのに時間がかかるわ。こちらはもう少し時間がかかって一週間と言った所かしら」
「それより、ジョジョ君が」
「ああ、彼なら三日前に地球に戻ったわ。色々と準備があるそうよ」
準備?それもあるけど三日前に戻ったって事は私三日も寝たままだったんだ。
「彼、貴方の守る為にまた戦いに身を投じるそうよ。身体の半分が機械になっても、誰かの為に自分を犠牲にするつもりね」
「え?」
「半年前、私やアリシアを救う為に彼は自分を犠牲にしたと話したでしょう。その後の治療で身体の半分を機械に置き換えたのよ。腕が良すぎるせいで機械だと気付かない位に精巧な作りのね」
プレシアさんが何かのデータを表示して私に見せてくれる。そこにはジョジョ君の身体のデータが表示されていて、一番最後に赤い文字で余命3年前後と書かれている。
「……そんな、嘘、ですよね。ジョジョ君が、死んじゃうなんて」
「事実よ。あまりにも精巧過ぎてメンテナンスが出来ないの。機械だから成長しない。それによって色々と体内のバランスが崩れてしまうから生きる為には劣化した物と交換するしか無いでしょうね。それでもその手術も命がけになるだろうし、何より彼はそれを選ばないでしょうね」
言葉が何も出て来ない。やっとジョジョ君の隣に立つ為の道が見えたのに、ジョジョ君が居なくなってしまう。
「貴方は彼を追っているみたいだけど、その道を進むという事はこうなるという事よ。それでも彼を追い続けるのなら覚悟しなさい。貴方が思っているよりもこの道は険しいわよ」
プレシアさんが何かを言っているけど私には理解出来ないでいた。それだけ私の中でジョジョ君が大きかったという事だというのだけが理解出来た。何も考えたくなかった。だけど次の言葉に心が揺さぶられる。
「嘆くだけなら誰にでも出来るわ。私もかつてはそうだった。だけど、私は諦めなかったわ。諦めずにもがき続けて、運命に立ち向かう為の力を手に入れたわ。彼もそうよ。貴方はどうするの?」
それだけを告げてプレシアさんは部屋から出て行った。
どうするなんて決まっている。ジョジョ君を救えるのなら私は悪魔とだって契約する。ジュエルシードみたいに願いを叶えてくれると言われるロストロギアがあるんだ。捜せばジョジョ君の身体を治せるロストロギアがあるはずだ。それを絶対に見つけ出す。だから今は身体を休める時だ。休んで身体が治ったらレイジングハートと一緒にあっちこっちの次元世界に、できれば管理局が見つけていない様な秘境を旅しながら、でもそんな事した事無いし時間が足りないかも知れない。そう言えばユーノ君の一族って発掘団だったっけ。ということはユーノ君を連れて行けば問題無いね。専門家だし旅には慣れてるだろうし。うん、決定。そうと決まれば今の自分の状態を確認しないと。目を瞑って意識を内面にむけて確認する。
身体の方は怪我は治ってるけど衰弱しきってるみたい。魔力の方は、また無理をしたせいか上限が大幅に上がってる。今はリミッターをかけられてB前後だけど、解放したらギリギリSSSに届いてない位かな。試しに全力全壊で一発の砲撃に回してみたらどうなるのかやってみたいな。
「何、悪い顔してにやけてるんだ、なのは」
「ふえ?」
目を開けると目の前に果物が入った籠を抱えたジョジョ君が私の顔を覗いていた。
「ふええええええぇぇぇ!!!!」
「っ、驚き過ぎだ」
あわわわわ、何時から?何時から見られてたの?えっと、えっと、その落ち着かないと、こう言う時こそ冷静にならないと。プレシアさんが言うにはこう言う時は素数を数えれば良いって、えっと確か素数は自分と1でしか割り切れない孤独な数字だからとりあえず100までで
2、3、5、7、11、13、17、19、23、29、31、37、41、43、47、53、59、61、67、71、73、79、83、89、97
「よし、落ち着いた」
「落ち着いたならそれで良いが、身体の方は大丈夫か」
「ゆっくり休めだって。起き上がれそうにもないの」
「そうか。まあ、ここは安全だからな。ゆっくりすればいい。何か食べるなら切るけど、どうする?」
「じゃあ、林檎で」
「少し待ってな」
ジョジョ君はどこからともなくナイフを取り出して林檎を剥き始める。そのナイフは明らかに市販の物ではなくオーダーで作った様な凝った装飾が施されている。どう見ても雲と星をイメージした物だ。しばらくの間、林檎を剥く音だけが部屋を包む。それにしても時間がかかっていると思ってジョジョ君の方を見ると、兎が立っていた。何を言っているのか分かり難いけど、簡単に言えば林檎で簡単な彫刻みたいに兎を彫っていた。ちょうど最後の六羽目を彫り終わって、お皿に乗せる。お皿もやっぱりオーダーで作ったと思われる物で、やっぱり雲と星が描かれている。だけど中心には天秤が描かれてた。なんなんだろう?
「ほい、定番の兎林檎」
「普通の兎林檎は立ってないと思うの」
「そうだっけ?」
「類似してるのは耳の部分だけなの」
「そうなのか?漫画にはこう書かれてたんだがな」
そう言いながらジョジョ君はまたもや何処からとも無くフォークを取り出す。そしてやっぱり雲と星がデザインされている。何処で作って貰ったのかな?そのフォークで兎林檎の一つを突き刺して私に差し出してくる。
「ほれ、あ〜ん」
「あ〜ん」
昔はよくやっていたので照れる事も無く口に林檎を運んでもらう。水気も甘みも程良いそれを咀嚼して飲み込む。その後も食べ終わるまで会話は無く、少しずつ食べさせてもらっていたのでそれなりの時間が過ぎた。
「さてと、とりあえず最初に言いたかった事だが」
ジョジョ君はそう話を切り出した。
「ただいま、なのは」
「うん、おかえりなさいなの」
私は笑顔で答える。