魔法少女リリカルなのは STAND BY ME   作:ユキアン

2 / 14
ジョジョという生き方

 

 

 

なのはと友達になってから時は流れ、今日は私立聖祥大学付属小学校の入学式だ。あまり言いたくはないがかなりの苦痛だ。これでも90近くまで生きていたのにまた小学生からやり直しだからな。何れは慣れるのだろうがな。入学式が終わり、指示されたクラスへと向かう。見渡せば幼稚園の頃からの付き合いがあるのがちらほらと見える。残念ながらなのはとは違うクラスの様だな。拗ねるなのはの様子がよく分かる。一時間目はおなじみの自己紹介の時間だ。

 

「オレは東条城矢、仲の良い奴からはジョジョと呼ばれてる。得意なことは手品だ。一年間よろしく」

 

自己紹介を終えて、退屈な先生の話を聞き流しつつ波紋を垂れ流しにする。垂れ流しにされた波紋は少しずつ教室にある者全てにゆっくりとしみ込んでいく。こうして一度でも波紋が行き渡った物はクロス・アルケミーの能力の素材に出来る。常日頃からどんな物でも錬成出来る様にオレは波紋を垂れ流しにしていることが多い。

授業と言うかオリエンテーションが終わり、オレは校内を散策することにした。今日中に出来る限りの物に波紋を行き渡らせておきたかったからだ。

 

あの日、なのはと友達になってからオレは心に決めたことがある。

オレはジョジョを継ぐ。誰かのヒーローであり続けると。

その為に日頃から波紋の訓練も続けているし、身体作りも無理のない程度に行なっている。クロス・アルケミーの材料になり得る物を出来るだけ集め、権力に対抗する為に資金も集めている。資金稼ぎに関してはクロス・アルケミーはかなりのチートだ。何せ歩きながら地面に波紋を垂れ流しにして、その後に問題ない部分から稀少金属をかき集めたりできるし、一番手っ取り早いのがシャーペンの芯を買ってきてそれをそのままダイヤに錬金してしまえば良いだけだからな。おかげで前世はニート生活してました。

 

そんな風に校内を散策していると、偶々中庭で金髪の女の子が黒っぽい紫色の髪の女の子からリボンを取り上げているのが目に入った。

 

「間に合うと良いんだけどな」

 

ここから中庭まではそこそこの距離がある。なにせここは3階で下駄箱から逆の位置の校舎に当る。不自然にならない速度で校内を走り抜けクロス・アルケミーに下駄箱の靴を分解させ、手元に錬成させる。靴を履き替えて中庭に出ると、なのはが金髪の子と言い争って、あっ、手が出た。これはまずいな。波紋で身体を強化して一気に近づき、丁度クロスカウンターになりそうな二人の手を掴んで止める。

 

「はい、そこまで」

 

ついでに金髪の女の子が奪ったリボンに波紋を通しておく。

 

「ジョジョ君!!」

 

「ジョジョ?変な名前ね」

 

「オレもそう思うが、ただの渾名だ。それにしても人の物を取るのは感心しないな」

 

クロス・アルケミーにリボンを錬成させ、リボンを取り上げられた女の子に付け直してあげる。

 

「え?あれ!?」

 

先程まで持っていたはずのリボンがいつの間にか取られていたことに驚いている。リボンを取られていた女の子も驚いてされるがままになっている。

 

「これでよし。うん、よく似合ってるよ」

 

黒っぽい紫色の髪に白いリボンがアクセントになってよく似合っていると思う。

 

「あ、ありがとう///」

 

「ちょっと、あんた!!一体何をしたのよ」

 

「見ての通り、本来の持ち主に返しただけだが」

 

「そうじゃなくて、どうやって私からリボンを取ったのよ」

 

「将来は手品師を目指しているからな、あの程度のことは簡単に出来るさ」

 

スタンド能力を説明するわけにはいかないし、魔法使いという嘘はなのはとだけの秘密だし、やはり得意なことを手品にしておいて良かったな。

 

「余計なことを」

 

今度はオレに向かって殴り掛かってくる金髪の女の子のパンチを躱して、新しく錬成した赤いリボンを髪に結んでやる。

 

「羨ましかったのは分かるが、他人の物を奪うのは感心出来ないな。そのリボンをあげるから引いてくれないか。それに君には白より赤の方が似合う」

 

いつの間にか結ばれていたリボンを触って、再び驚く金髪の女の子を尻目に、なのはが拗ねていた。溜息をついてから白と青のチェックのリボンを錬成して現在付けているリボンと交換してやる。

 

「うん、かわいいぞ。なのは」

 

「にゃはは///」

 

頬を赤く染めながらも嬉しそうに笑っている。なのははオレと一緒にいる時は常に笑っているか、拗ねているかの二つの表情しかみせない。

 

「……私を無視するんじゃないわよ!!」

 

「それはそれは失礼」

 

再び飛んできたパンチを躱してもう一つ赤いリボンを結んでツインテールにしてみる。ムキになって飛びかかってくる金髪の女の子の攻撃を躱しながら大量にリボンを錬成する。

 

「お気に召さないようだな。なら、どれが良い」

 

錬成した大量のリボンを広げてみせる。

 

「あんたは一体何がしたいのよ」

 

「何がしたい、か。最低限果たしたい目的は既に達している。今はそうだな、最終的には君と仲良くなりたいと言った所か」

 

「はあ!?」

 

「偶々リボンをそこの彼女から奪っていたのを見かけてな。それを止めさせようと走ってきたらなのは、こっちの彼女が君に殴り掛かった。女の子が怪我をするのは不味いと思ってそれを止めた。君がそこの彼女からリボンを奪ったのは悪いことだ。だけど、そこまで怒る様なことじゃない。取り返して、一言謝ってもらえば良いだけの話だ。その為ならリボン位幾らでも用意しよう」

 

「だから、あんたがそんなことをする必要なんてないでしょうが」

 

「確かにそうなんだろうが、オレにとってジョジョという名は重い物だ。ここでこの事を見逃せばオレはもうジョジョの名を名乗れない。だから止めに入った」

 

「何よ、そんな名前一つで。意味が分からないわよ」

 

「あ~、なんと言っていいかな。オレがジョジョと呼ばれ出したのは偶然だ。そして、オレが憧れている人たちもジョジョと呼ばれている。ならばオレもジョジョの名に相応しい行いをしたいと思うのはおかしいことか」

 

「……どんな人たちなのよ、そのジョジョって」

 

「そうだな。一言で言い表すなら、熱い物を持ってる人たちだ」

 

「意味分からないわよ」

 

「信念に基づいて動いていると言えば分かるか」

 

「なんとなくわね」

 

「あの人達はそれと決めたことは絶対に達する。その途中で誰かが困っているのなら手を差し伸べるが当たり前だと思っている。態度には出さないけどな。オレにはまだその人たちの様な信念は無い。だけど、困っている人に手を差し伸べることは出来る」

 

「そこまでは納得出来るわよ。でも、なんでそこから私と仲良くなりたいなんてことになるのよ。私は簡単に言えば悪者なのよ」

 

「逆に聞くが、人の物を取るのは悪いことだが、それは善と悪に分かれてまで裁かなければならないことなのか」

 

「そうじゃなきゃ警察なんて必要無いでしょうが」

 

そう言って再び殴り掛かってくるが、今度は躱さずに顔面で受ける。

 

「「「え!?」」」

 

その行動に三人ともが驚く。

 

「ちょ、大丈夫なの!?」

 

慌てて手を引く金髪の女の子の手を掴む。波紋で身体を強化した力量によっては鋼と変わらぬ強度を得る。そして、オレはそれを遥かに越えるだけの力量を持っている。案の定殴り掛かった女の子の手は多少擦り剥けていて薄くだが血が出ている。ポケットから新たに少し幅の広いリボンを取り出して、その傷に巻き付ける。

 

「互いにどうしようもなく憎んで、暴力しか残されていないのならオレはそれを躊躇うことは無い。でも、一方的な暴力であっても互いに傷つく結果しか残されていない。話し合いや謝罪で解決が出来るのならそれに越したことは無いと思わないか?」

 

手当てを終えた手を放して一歩離れる。不意をつかれても絶対に躱せる距離に立つ。

 

「その、大丈夫なの?顔」

 

「痛くないと言えば嘘になるけど、我慢出来ることだし、謝ってもらえれば良い。オレじゃなくて彼女に」

 

顔をリボンを取られていた方の女の子の方に向けて言う。

 

「なんで、自分のことじゃなくて他人のことを構うのよ」

 

「それがジョジョだから」

 

その言葉に金髪の女の子は今までの怒りを忘れて泣きそうな顔を見せる。

 

「あんたは、そんなことして、辛くないの」

 

「辛いさ。でも、今は君がオレの代わりに泣いてくれている。それが分かっていれば頑張れる」

 

こぼれてきた涙をハンカチで拭いてあげると、堰を切ったように泣き始めた。それが一人なら良かったのだが三人ともが泣いている。まあ、小学生の女の子にする様な話じゃないからな。

それはともかく状況は最悪だ。いくら放課後とはいえ残っている生徒はいるし、教師もいる。中庭は全ての館と接しているし、何より三人の女の子の泣き声はかなり響く。つまり何が言いたいかと言うと、現在進行形で人が集まっている。そしてこの場を見ると何があったかは分からなくても誰が悪いかは簡単に想像できる。オレは泣いている三人とは別に職員室へ連行されることに。解せぬ。

 

 

 

 

 

教師とのお話はとりあえずオレが一方的に悪いことにして謝罪する方向に持って行った。というかオレが悪いの一点張りで理由も何も話さなかったのが原因だ。お叱りを受けて職員室から出る頃にはだいぶ時間が過ぎていた。これは帰ってからも両親からお叱りを受けるパターンだな。教室に戻りカバンを手に取って学校を出ると校門の所に三人が立っていた。

 

「よう、帰らないのか?」

 

「ごめん、私達のせいで」

 

「気にするな。あの状況を見れば悪いのはオレなんだから」

 

「でも」

 

「ならさ、お願いを一つ聞いてくれれば良いさ」

 

「良いわよ、何でも」

 

「オレと友達になってくれるか」

 

「……そんなことで良いの?」

 

「それが良いんだよ。一人じゃ耐えられなくても、誰かが支えてくれるなら何処までだって行けるさ」

 

これは事実だ。前世でもオレが本気で戦えた時期は少ない。戦友であるジョゼフとシーザーと共に柱の男達との戦い、妻が生きていた時期、妻が殺されて復讐に駆られていた時、それ位しかない。妻が死んでからは特にそうだ。何もせずにただ習慣となった波紋の修行をして、ただ無意味に生きていた。スタンド使いになってからは友を作ることも出来ず、支えてくれる人も居らず、支える側としてしか生きていけなかった。思い返してみると寂しい人生を送った物だ。

 

「さて、友達になる為には名を知らなければならない。オレの名は東条城矢、親しい奴はオレをジョジョと呼び、オレもそれを望む。友達になるのが嫌なら、このまま自己紹介をしないでくれ」

 

「ずるいわよ、その言い方。私は、アリサ・バニングスよ。アリサで良いわ」

 

「それは良かった」

 

金髪の女の子–––––アリサに左手で握手を求める。アリサの右手には先程巻いたリボンが残っている。アリサも意図を理解してくれたのか握手に応じてくれた。

 

「あ、あの!!」

 

「うん、どうしたんだい?」

 

リボンを取られていた女の子が何かを決心した様に話しかけてきた。

 

「わ、私は月村すずかです。あの、私とも友達になって下さい!!」

 

「ああ、もちろんだ。それから」

 

ポケットから白いレースのリボンを取り出して取られていたリボンと取り替える。

 

「二人にだけ渡して、すずかにだけ渡さないのはおかしいだろう」

 

「あう、ありがとう///」

 

「さて、これ以上遅くなると親に心配されるな。送って行くぞ」

 

「そこまでしなくても良いわよ。迎えは呼んであるから」

 

「私も、お姉ちゃんが迎えに来てくれるって」

 

「そうか、ならまた明日な。なのは、帰ろう」

 

手を繋いで家路に着く。なのはの家はオレの家とは近くとは言わないが、同じ方角にはある。その分かれ道まではずっと手を繋いでいる。

 

「なのははアリサ達と友達になれたのか?」

 

「うん、ちゃんと話せば分かりあえたよ」

 

「それは良かった。だけどな」

 

繋いでいない方の手の中指を親指で押さえ、力を軽く溜めてから中指を弾く。所謂デコピンだ。

 

「にゃっ!?」

 

「中庭で言ったと思うが、力づくで物事を押し通そうとするのは最後の手段だ。耐えて耐えて耐えて耐えて、耐え抜いた先にこそ未来がある。場合によっては力づくも有りだがな」

 

「うぅ~、分かったよ」

 

「よろしい」

 

一度手を放して頭を撫でてやればすぐに機嫌を直してくれる。

 

「それじゃあ、ここまでだな。明日もまたここで」

 

「うん、ばいばい」

 

なのはと別れて家に帰り、母親に怒られる。学校の方から電話があったようだ。この場でもオレが悪いの一点張りで過ごし、罰として物置に放り込まれた。暗い静かな空間でオレは波紋の修行を行ない、そのまま眠りに着く。適当に毛布を錬成して包まって浅い眠りと覚醒を繰り返しながら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ジョジョ君、今日の放課後空いてる?」

 

「空いてるぞ。基本的に暇な毎日を送ってるからな」

 

昼休み、食事を終えてクラスメイトにせがまれて手品を見せている所になのはがやってきてそう告げた。

 

「お母さんがね、今日お友達を連れてきなさいって。アリサちゃんとすずかちゃんも今日なら大丈夫って言ってたから」

 

「そうか。なら校門前で待ち合わせだな」

 

中が見えないコップにサイコロを4つ放り込み、ある程度振ってから机の上に口が下にして机に置き、机の上でも細かく振る。そしてコップを開けると、そこには全ての面が揃った4つのサイコロがタワーを築いている。

 

「「「「すご~い」」」」

 

クラスメイトが喜んでいる様を見て嬉しくなる。やり方を教えてくれと言う子もいるがさすがに教えられない。スタンドを使ってずるをしているだけなのだから。最もタワーを造ることまでは素で出来る。ジョセフも出来るし、承太郎も教えれば出来たからある程度の実力があれば誰にでも出来るのだろう。

 

「今日はここまでだ。来週には新しいネタを用意しておくから」

 

解散する皆を見送りながら道具をカバンにしまう振りをして錬成してカバンの一部にする。コップ一つにサイコロ4つ位ならカバンからでも十分に錬成出来る。

 

 

放課後になり校門に向かうとまだ誰もいなかったので近くにいた野良……子狐?なんでこんな住宅地に子狐なんているんだ?

とりあえず何か遊び道具でも作ろうかと思い、クロス・アルケミーを出した途端後ろに飛んでこちらを威嚇してくる。

クロス・アルケミーに反応した?

 

「スタンド使いなのか?」

 

とりあえず身構えてみるがスタンドを出す気配はない。ということは何らかの力でスタンドを見ていると判断した方が良いだろう。敵意が無いことを見せる為にスタンドを戻した所でなのは達がやってきた。そちらの方に顔を向けると同時に子狐は逃げ出してしまった。一応、子狐のことは頭の片隅にでも留めておこう。

 

 

 

なのはに案内されて辿り着いたのは一軒の喫茶店だった。

 

「ただいま~」

 

店の扉からなのはが入って行くのでそれに続いて店に入る。カウンターには今では日常生活を送るのには問題が無い高町士郎がいる。

 

「いらっしゃい。君たちがなのはの友達かい。僕は高町士郎、なのはのお父さんだ」

 

「「「はじめまして」」」

 

オレを見て士郎さんは複雑な表情を見せる。おそらくは恭也さんから波紋のことや膝のことを伝えられているのだろう。

 

「君は、ジョジョ君であってるかい?」

 

「ええ、東条城矢と言います。友達からはジョジョと呼ばれてます」

 

「そうか、君には世話になったね」

 

「いえ、なのはが頑張ったからですよ。それより、何か怪我をされていたそうですけど大丈夫ですか」

 

さて、オレの意図を汲み取ってくれるかな。一瞬だけ殺気を士郎さんに送って見ると気付いてくれたようだ。

 

「はは、もう大丈夫だよ。なんならこれから道場でも行ってみないかい?そこで見せてあげるよ」

 

「そうですね、ぜひお願いします」

 

「桃子、店の方は任せたよ。僕はジョジョ君を道場に案内するから」

 

士郎さんはキッチンの方にいる女性に声をかけてからオレを道場に案内してくれた。その間、会話は一切無く終始無言だった。道場に着くと士郎さんは短い木刀を二本手に取り、オレと相対する。

 

「ジョジョ君、君のことは恭也からある程度聞いている。君は、その歳で裏のことを知っているんだね」

 

「ええ、切っ掛けは教えられませんが、そこそこ深い所まで覗いたつもりです」

 

「そうか、詳しくは聞かないでおくよ。それとは別に僕は君に聞いておかなければならないことがある。正直に答えてくれ」

 

「ジョジョの名にかけて」

 

「ありがとう。君にとってなのはは何なのか、それを答えて欲しい」

 

中々に難しい質問だ。明確な答えを出すにはオレが転生者であることを説明する必要も出てくる。どうする。

 

「そんなに難しく考えなくても良い。率直な答えを聞きたいんだ」

 

率直な答えか、それなら簡単だ。

 

「友達で守ってあげたい女の子です」

 

「……そうか、それが聞けて良かったよ、これからもなのはのことを頼む」

 

そう言って木刀を元の位置に戻す。

 

「ああ、そういえば恭也の膝のことだけど、やはり君から見てもどうにもならないかい?」

 

「そうですね、普通の生活を送るなら問題ないでしょう。ただ、リミッターを外す様な行為をすれば普通の生活を送ることすら難しいと思います」

 

「やはりか。僕が戦えるのなら良かったのだけど、無理は出来なくなってしまってね。恭也は自分がやらないといけないと思い込んでしまっている」

 

「以前忠告はしたのですが、やはり無理をしていますか。一度完全に折りますか?」

 

「そうなると恭也は生きる目的を失ってしまう。恭也にも誰か守るべき人が見つかれば良いんだが」

 

「ということは誰かを守る為に生まれた流派で?」

 

「そうだよ。そういう君の流派は?」

 

「オレのはなんていうか、開祖は自分たちが生き残る為に開発した物で、一度滅んだんです。その後、生命の探求を目的に蘇り今に至ります」

 

「生命の探求?」

 

「例えが余り無くて説明し辛いのですが、体内を流れる気を自然から吸収して応用すると言った所でしょうか。それにより本来消費するはずの気を抑え、一般人よりは老い難いと言った所です。まあ、極めれば極める程に力量不足を感じさせられる流派です」

 

「そうか。しかし、一度滅びたとはどういうことなんだい?」

 

「開祖達は天敵に負けたんですよ。書物だけは残されていてそれを元に蘇ったのが今の流派です。ちなみに天敵も歴史から姿を消しています」

 

「なるほど。すまないね、態々時間を取らせて。そろそろ戻ろうか」

 

「そうですね」

 

道場から喫茶店に戻るとアリサがなのはの胸元をじっと見ている。

 

「何してるんだアリサ」

 

「何でも無いわよ」

 

そっぽを向くアリサに首を傾げながらなのはの胸元を見てみる。そこには初めて会った日に渡した鏃のペンダントがある。何となく理解したオレはポケットから同じ物を二つ取り出して、アリサとすずかの首にかけてやる。

 

「願いを込めた矢は遥か彼方にまで飛び、そこに住む神々が願いを叶えてくれる。師匠が言ってた言葉だ。いつか願いを叶えて貰うと良い」

 

なのはに渡したときと一言一句違わずに告げる。

 

「願いを叶えて貰えるのは一度だけだ。オレはもう叶えて貰ったから持ってない」

 

ディアボロを倒す為の力を望んで、クロス・アルケミーに投げ入れた『矢』のことを思い出す。恐ろしい力だったが、頼りにもなると思った。そして、何の因果かこの世界にオレが自分で入手した『矢』が転がり込んで来ている。現在はクロス・アルケミーの能力で分解して保管している。これを使う日が来ないことを切に願う。

 

 

 

鏃のペンダントを渡した後、士郎さんが持ってきてくれたシュークリームに手を付ける。

 

「これは、すごいおいしいですよ。士郎さん」

 

想像以上においしいシュークリームにオレは驚いた。値段の方はだいぶ低く設定されているが、これなら十分なリピーターが付いているだろうから儲けは出ているだろう。

 

「そう言ってくれると嬉しいよ。お土産の方も用意してあるから」

 

「態々すみません」

 

前世でもここまでおいしい物を食べたことは無い。オレは久しぶりに笑顔を作れているだろう。

 

「ねえジョジョ。何か手品見せてよ」

 

「へぇ、ジョジョ君は手品が出来るのかい」

 

「まあ、簡単な物だけですけど」

 

「ならお客様達にも見せて貰えるかい」

 

「ええ、構いませんよ」

 

オレは即答で答えて店の中央に立つ。

 

「拙い芸ではありますがお楽しみいただければ幸いです」

 

そして何も無い空間から4枚のAを取り出す。その内のハートとダイヤをカウンターに置き、右手にクローバーを左手にスペードを持ち交差させる。すると両方の手にA以外に2のカードが現れる。それを数度繰り返しAからKまでを揃えてカウンターの上に置く。そこには既にAからKまでが揃っているハートとダイヤのトランプが置いてある。それに驚いている皆を放っておいてトランプをシャッフルしてから士郎さんに渡してカットしてもらう。それが終わるとカバンからタオルを取り出してそれで目隠しをする。トランプの束を持ち、一人一人の元に迷い無く歩いて一枚引いてもらい覚えてもらう。それを全員にしてもらった後、指を鳴らす。そうするとトランプは姿を消す。目隠しを外さずにポケットからトランプのジョーカーを取り出す。その行動に気付いたのか皆がポケットを、ポケットが無い人はカバンを調べるとそこから先程引いたはずのトランプが出てくる。目隠しを取り外して一礼をすると拍手が送られる。それにもう一度一礼をしてからなのは達の元に戻る。

 

「こんな物でいかがでしょうか、お姫様」

 

「うん、なかなかに良かったわよ」

 

それからも適当に雑談をしてからお土産をもらって家に帰り、平凡な日を送って行く。だが、それも長くは続かなかった。

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。