魔法少女リリカルなのは STAND BY ME 作:ユキアン
目の前には二つの小さな壷。それは両親だった物だ。オレの傍には泣いているいつもの三人とその家族がいる。オレは二つの骨壺を抱えて大人達に頭を下げる。
「本日はお忙しい中、お集り頂きありがとうございます」
「ジョジョ君、無理をしなくていいんだよ」
士郎さんが気遣ってくれる。それでもオレは言わなければならない。
「こんな、こんな不可解な死を遂げた両親の為にありがとうございます」
オレの両親は、全身の血を抜かれた状態からバラバラにされて殺されていたらしい。子供のオレには見せられないと判断して遺体はすぐに火葬された。そしてその話を聞いた親戚は誰一人集らず、ここにいる人だけが集り葬式を行なった。
葬式を終え、士郎さん以外が帰った我が家でオレは士郎さんにある相談を受けた。
「ジョジョ君、君さえ良ければ僕たちと暮らさないかい。言い辛いことなんだけど、親戚の方は君を引き取ることを嫌がっているみたいなんだ」
「そうでしょうね。誰もこんな死に方はしたくないでしょう。その話、受けさせて貰います。ですが少しの間待っていただきたい」
「どうしてだい?」
「両親を殺した奴らを狩る必要があるので」
「君には心当たりがあるのかい!?」
「……吸血鬼、我が流派の天敵ですよ。最もあちらの天敵も我が流派ですが」
「君一人で大丈夫なのかい?」
「ええ、ですが情報が足りない。士郎さん、裏の情報屋を知りませんか?お金はいくらかかってもいいので優秀な情報屋を紹介してくれませんか。事は一刻を争う事なんです」
「そんなに危険な事なのかい」
「奴らの増え方は2種類、一つは吸血鬼の血を入れられる。もう一つは『石仮面』を使う事です」
『石仮面』
これもジョジョの世界のキーアイテムの一つだ。この石仮面を被り、他人の血を石仮面にかける事で骨針が伸びて脳に突き刺さる。それにより吸血鬼に変貌する。そして、その吸血鬼はその上位存在である『柱の男』達の餌でしかない。そもそも石仮面は『柱の男』達が餌を手に入れる為だけに作った物だ。
もし本当に石仮面が有った場合、それは『柱の男』達も存在するという事だ。その場合は速やかに倒さなければならない。完全生命体になられる前にだ。
「弱点は日の光か我が流派のみ。それ以外の物でダメージを与えてもすぐに回復する。奴らをこのままにしておくわけにはいかないんです」
「分かった。紹介しよう。だけど約束して欲しい。必ず生きて帰ってきて欲しい」
「もちろんですよ。オレはまだ死ぬ気は無いですから」
士郎さんに紹介してもらった情報屋の所に転がり込んで4日目に状況は動き出した。
「情報が入ったよ。貴方の言う石仮面を入手したと思われる人物が何人かの武闘派を連れて動いてる」
「場所は」
「海鳴市の月村邸ね。これが地図」
月村?地図を確認するとすずかの家と同じだ。どういうことだ?
「追加料金を払うから月村家に関しての情報をくれ」
「確か、夜の一族とか言われる吸血鬼の家系よ。まあ吸血鬼と言っても映画とかに出てくる奴の劣化版ね。血を吸っても相手が貧血になる位で普通に陽の下も歩けるし。精々が力が少し強いとか、怪我が治り易いとかそんなのよ。ちなみに石仮面を持ってるのも月村家の男よ。お家騒動って奴かな」
なるほどね。あとは直接確認するしかないな。
「助かった。少し色をつけさせてもらうよ。それから柱の男についても頼む」
大振りなダイヤを3個程手渡してドアに向かう。
「たしかイタリアとメキシコだったわね。探しておくわ。料金はもらってる事だし、今後ともご贔屓に~」
ドアから飛び出し波紋とスタンドを使いビルから飛び降りる。地面に降り立つと同時にバイクとライダースーツを錬成し、クロス・アルケミーを身に纏い、ライダースーツを着せてバイクを運転させる。
「間に合ってくれよ」
全速で夜の街を駆け、ようやく海鳴市に入った所で異変に気付く。月村邸から煙が立ち上っている。間に合わなかったのか!?
バイクを捨てて波紋とスタンドを使い一直線に月村邸に向かう。ライダースーツをクロス・アルケミーと同じマントと仮面に錬成し直し月村邸に降り立つ。
「なんだ貴様は!?」
月村邸に降り立つと石仮面を手にした男が何かを喋っているようだが無視して辺りを見渡す。すずかに、そのおねえさん、メイドが二人と恭也さんが怪我こそしているが無事に生きている。
「間に合って良かった」
波紋で声を調整して老人の様な声を出す。恭也さん達だけならともかくすずかには正体を知られたくない。
「あとは任せなさい」
「無理だ、あいつらはすぐに復活する。逃げてくれ」
恭也さんがオレを止めようとするがその手を払う。
「君はお嬢さん達を守ってあげなさい。大丈夫だ、私は吸血鬼退治の専門家だ」
こちらの様子をうかがっていた一人がオレに飛びかかってくる。
「山吹色の波紋疾走(サンライトイエロー・オーバードライブ)」
タイミングを合わせたカウンターを顔面に叩き込み、元の位置に強制的に戻す。
「ここからは女性には見せたくない。君はお嬢さん達を屋敷へ」
オレが殴り飛ばした男を指差すと恭也さんは理解出来たのか他のみんなを連れて屋敷へと引き返してくれた。
「さて、石仮面を何処で手に入れたのか、洗いざらい喋ってもらうぞ」
既に絶命している男を抜いて7人の男を見る。煙が立ち上っている以上、あまり時間をかけるわけにはいかない。ここは一気に仕留める必要があるな。
クロス・アルケミーにとある糸を錬成させて男達に向かって伸ばす。相手は高が糸と侮り躱しもせずにこちらに向かってくる。
「緋色の波紋疾走(スカーレット・オーバードライブ)」
石仮面を持っていない6人の男に巻き付いている糸に波紋を流す。この糸は少々特殊で波紋を100%伝達させる性質を持っている。波紋を流され、灰となって散って行く男達を一瞥し石仮面の男を拘束する。
「3秒だ。その仮面を何処で手に入れた」
「な、なんなんだお前は」
3秒経ったので首をへし折る。この程度で死なないのは熟知している。
「また3秒だ」
とは言っても3秒で喋れる状態にまで再生出来ない事も知っているので両腕を折り、石仮面を踏み砕く。
「3秒だ」
そのまま延々と拷問を続ける。不死身とはイコール無敵ではない。少なくとも今はそのせいで延々と痛めつけられているのだから。
「そろそろ答えてくれると嬉しいのだが、どうだろう?喋る気になってくれたかね」
10分程痛めつけた後にようやく一息をつけさせてやる。
「あっ、変なババア、から買った」
「ほう、どこで?」
「エジ、プト」
「そうか、ではゆっくりと休みたまえ」
波紋を流してやり楽にしてやる。
それにしてもエジプトか。エンヤ婆がいるのか?となると本格的に『矢』の方も探した方が良いな。まさかジョースター一族とかディオもいるのか?けどSPW財団は無いみたいだからどうなのだろう?もしかしたらキーアイテムだけが有るのかも知れない。とにかくオカルト関係の方の専門家も集めた方が良さそうだな。
「やれやれ、ひとまずは終わったか」
このまま此所を去っても良かったのだが、一応確認しておく必要があるだろうと屋敷の中に入る。
「このままの格好で失礼するよ」
クロス・アルケミーの格好のままオレは客間に通される。客間にはすずかを除いた全員が身体のあちこちに手当ての後が見える。
「いえ、この度は助けていただきありがとうございます」
「礼はいらんよ。私は私の目的が在って此所に来たまでだ」
「それは吸血鬼退治ですか」
「そうだ」
そう言うと恭也さんが立ち上がって小刀を二本構える。だけどその姿を見て確信する。
「その壊れた膝で何をしようと言うのかね。いや、それどころか立つだけでも辛いだろう」
以前から忠告していた膝はオレが見る限り、普通の治療ではどうにもならないレベルになっているのが分かる。
「そんな事関係ない。オレは、忍を守るだけだ!!」
ああ、成る程。遂に見つけたのか、守るべきものを。ならお祝いをしてあげる必要があるな。
オレはソファーから立ち上がり恭也さんの鳩尾に手刀を突き刺す。
「がはっ」
「そのまま肺の中の空気を1cc残らず全て吐き出したまえ」
全ての空気を吐き出し終わったのを見計らい手刀を引き抜く。
「苦しいだろうが少しの辛抱だ。そうすれば」
「ぐわぁあ!?」
「君は再び戦える」
恭也さんは膝を抱える様にしゃがんだ後に、驚きを露にする。
「膝が、治っている!?馬鹿な」
立ち上がり、軽く膝の運動を行なっている様子を見る。ふむ、問題ないようだな。
「それが人間の神秘の力という物さ。しかし、私が行なったのはただの治療だ。次は無いと思いたまえ」
再びソファーに座り話を続ける。
「私は確かに吸血鬼退治の専門家だが、それはあの『石仮面』によって吸血鬼になったものしか狩らんよ。一応確認しておくがあの石仮面を被ったり、血をかけられたりしとらんよな」
「あ、ああ、大丈夫だ」
「ふむ、なら私は帰らせてもらうとしよう。もう会う事は無い事を祈るよ。ああ、もしも再び奴らが現れたときの対策を教えておこう。奴らは陽の光、紫外線に弱い。それこそそこらで売っている紫外線ライトですら浴びれば灰になる。念のために持っておくと良いだろう」
「そんな物で!?」
「そんな物さ、世の中は。もう会わない事を祈っているよ」
今度こそ立ち去ろうと「待って下さい」すずかに呼び止められる。
「どうかしたのかい、お嬢ちゃん」
片膝を付いて仮面を視線の高さに合わせる。よく見れば渡したペンダントが無い。オレが渡したあのペンダントを三人は何時も身につけている。外すのも精々が体育の時間位しか見ていない。ならば今、なぜペンダントをしていないのか。簡単に答えは出る。願いを込めて投げたのだろう。あの状況ならそうしていてもおかしくはない。
「あの、名前を、名前を教えて下さい」
何かに縋る様に、涙をこらえながらオレに質問をしてきた。泣き顔は見たくないな。名前を借りるぞジョセフ。
「私の名前かい?私はジョセフ、ジョセフ・ジョースター。友人は私をジョジョと呼んでいる」
その名前にすずかと恭也さんが驚いている。まあ、そうだろうな。
「あの、東条城矢君を知っていますか」
「その子がどうかしたのかね」
「その子が、あのジョジョに憧れてて、その、最近お父さん達が死んじゃって、落ち込んでて顔も見れなくて、それでその、あの」
それ以上言わせずに頭に手を置いてやる。
「その子もジョジョの名を継ごうとしているのなら、一人で立ち上がってくるさ。だから待っていてあげなさい。きっと立ち上がってくれるさ」
「……はい」
ここまでオレの事を心配してくれていたとは思ってもいなかったな。明後日にでも学校に顔を出しに行くか。おそらく心配してくれているなのはとアリサにも何か詫びの品を用意しておこう。今はすずかのフォローを考えなければ、ああ、ちょうど良い物を思い出した。本物だと危険だから『矢』のペンダントと同じく形だけの偽物だが、ちょうど良いだろう。
「もし、その子が立ち上がったのなら君からこれを手渡してあげてくれないか」
マントから真紅の宝石のペンダントを取り出して、すずかに手渡す。
「これは?」
「これはジョジョの名を正式に名乗れる証。愛する者を失っても、誰かを守ろうと立ち上がる者の証明さ」
「これが、ジョジョの証明」
「そうさ。ジョジョの名の意味を知るというのなら、彼も私と同じ力を持っているという事だ。それを渡せば、彼は完全に立ち直ってくれるはずだ」
「……分かりました。ありがとうございます」
「うむ、彼の事は頼んだよ」
今度こそ月村邸から立ち去り、情報屋の元に戻る。
「すまないが更に追加の依頼だ。『石仮面』を売ったと思われるババアがエジプトにいるらしい。こいつの居所を頼む」
「またぁ~?さすがに私一人じゃこれ以上無理よ。他の同業者に回しても構わない?」
「できればオカルト関係に詳しい奴の紹介も頼む」
「はいはい、連絡がつき次第紹介してあげるから。どれか片付くまでこれ以上依頼を持ってこないでよ」
「分かったよ。これは前金だ」
トランクに敷き詰めた金塊をトランクごと渡す。
「できれば現金の方が良いんだけどね。まあ良いわ」
「すまんな。ではそろそろ帰らせてもらうよ」
「はいはい、毎度あり~」
情報屋を後にして誰もいない自宅に戻る。途中のコンビニで買ってきた弁当を食べてから士郎さんに電話をかける。
「もしもし、東条城矢です」
『ジョジョ君か、もう大丈夫なのかい』
「ええ、とりあえずは片付きました。当分は大丈夫なはずです。明後日には学校の方にも顔を出す予定ですので」
『そうか。なら明日の朝に荷物を取りに行くからそれまでに纏めておいて貰えるかな』
「わざわざすいません。では、お待ちしております」
電話を切り、クロス・アルケミーにダンボールを錬成させ、その中に自分の私物を錬成させる。時間にして5秒足らずで引っ越し準備完了である。何もやることのない時間が出来てしまい、思考がネガティブになる。
「またオレの家族が居なくなってしまった」
最初の人生はオレが死んだから関係ないが、前世ではリサリサが亡くなって一人になり、結婚してまた家族が出来て、妻が殺されてまた一人。今世でも両親は殺されて一人。長生きなんて、転生なんて好んでしたくないな。オレは後何回家族を、愛する者を見送れば良いんだ?
「だめだ、寝よう。考えると悪い方にしか行かない」
シャワーを浴びてからジャージに着替えてベッドに倒れる。