魔法少女リリカルなのは STAND BY ME   作:ユキアン

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レクイエム

 

 

 

クロス・アルケミーをACT2からACT1に戻し、ナイフなどの補充を行なう。それが終われば再びACT2に戻す。今まで郡体型のスタンドとやりあったことはないが、先程のそこそこの威力の衝撃波だけでも十分戦果を期待出来ることが分かった。

 

「さてどうする?」

 

呼吸を整えたプレシアにそう問いかける。

 

「そうねえ、確かにカバードの能力を暴かれたのは痛いと思うわ。ならば戦闘方法を変えるだけよ」

 

そう言って現れたカバードは先程までよりも屈強になって姿を現す。

 

「これがカバードの全力よ」

 

殴り掛かってくるカバードのスピードは変化していないが、そうなると単純にパワーが上がっていると判断した方が良さそうだ。スピードが変わっていないのなら対処は簡単だ。クロス・アルケミーを纏い、波紋で強化した肉体を十全に扱い全力で懐に飛び込む。相変わらずプラズマランサーが飛んでくるが十分に対処出来る速さで、カバードにも捕まらない様に動き続ける。戦闘の方はやはり得意ではないみたいだな。このままなら押し切れる。

ついに全力の一撃がプレシアのシールドを砕くことに成功する。追撃をカバードで防御しようとするが、それをACT2の衝撃波でバラバラに吹き飛ばす。

 

「もうカバードは怖くない。諦めてフェイトを解放しろ」

 

「最初に言ったでしょう。あれは私の所有物よ。どうしようが私の勝手よ」

 

ここに至ってもフェイトを物扱いにする。いや、実際に物なのだろうな。一応確認しておくか。

 

「……少しだけ質問に答えろ」

 

「何かしら」

 

「お前の目的は大体予想が付いている。おそらくはフェイトともう一人の少女の肉体を交換するつもりなのだろう。フェイトはその為に作られたクローン。間違いないな」

 

「そう、その通りよ。その為の儀式を開発し、あれとアリシアの成長差を揃えた。後は魔力さえあれば全てが上手くいく。私は失うはずだった未来を守りきれる。貴方には分からないでしょう。自分の目の前で愛する子が失われていく絶望を!!こんな未来を私は認めない。そんな時に私はスタンド能力に目覚めた。運命に立ち向かえという様に、私は対象の時間を遅らせるスタンド能力に目覚めた。誰にも邪魔はさせない。何も知らない奴に、邪魔なんかさせない!!」

 

「分からねえよ。オレはな、愛した人が知らない所で殺された。お前とは違い、運命に立ち向かうことすら出来なかった。オレには復讐することしか出来なかった。そこでオレは足を止めてしまった。だけどな、いつまでも過去に囚われ続けることをオレは許さなかった。友の為に立ち上がり、助けを求める人に手を差し伸べてきた。その全てをクロス・アルケミーはオレの傍に立って見届けてきた。オレは東条城矢、ジョジョと呼ばれる者だ。ジョジョとはヒーローの名だ。目の前で助けを求める者を救ってみせる」

 

互いの思いを知り、オレは決心する。プレシアも救いを求める一人だ。オレは彼女達一家を救ってみせる。

 

「もう遅いわ。気付いてないようだけど既に儀式は最終段階まで進んでいるわ」

 

「なんだと!?」

 

「甘かったわね。いざという時の為に用意しておいた保険がここまで役に立つとは思わなかったわ」

 

ちっ、何が原因か分からない以上プレシアをどうにかするしかない。だが、言葉では止められない。力では時間がかかりすぎて間に合わない。ならば理不尽な運命を乗り越えれる力を使うまでだ。

 

「ACT1」

 

ACT2からACT1に戻し『矢』を錬成させる。

 

「クロス・アルケミーよ、全てを制せ」

 

『矢』をクロス・アルケミーの胸に突き刺す。『矢』はどんどんとクロス・アルケミーに沈み込んでいく。全てを飲み込んだクロス・アルケミーが真の姿を表す。マントと仮面を脱ぎ捨てたクロス・アルケミーは、オレと瓜二つで天秤を両手で抱えた姿を見せる。

 

「まずは儀式を止める」

 

天秤が傾き、クロス・アルケミー・レクイエムが一度手を翳すと平行に戻る。同時に世界が改変される。

 

「そんな!?一体何が起こったというの」

 

「プレシア・テスタロッサ、オレは運命に立ち向かうことは出来なかった。だが、運命を乗り越える力をオレは手にしている。それがクロス・アルケミー・レクイエム。僅かな対価で莫大な結果を引き寄せることが出来るオレの奥の手だ」

 

「一体何をしたの」

 

「簡単なことだ。儀式が行われていたという時間を抜き出させて貰った」

 

「何よその能力は!?それじゃあまるで神じゃない」

 

「神、か。確かにそう見えるだろうな。まあそれはどうでも良い。貴様の企みは全て潰させてもらう」

 

「や、やめて!!」

 

「もう遅い」

 

再び天秤が傾き、悲しそうな顔をしながらクロス・アルケミー・レクイエムが二度手を翳すと平行になる。目に見える変化としてカバードが消え去る。

 

「アリシア、アリシア」

 

プレシアがオレの事を見向きもせずに、アルフの方に向かう。アルフは何がどうなっているのか分かっていないようだが、とりあえず戦闘は終わったと判断して結界を解除する。

 

「アリシア、嫌ぁ、アリシア。死なないでアリシア」

 

オレがクロス・アルケミー・レクイエムにさせたことは二つ。

一つ、プレシアのスタンド能力の消失。つまり、アリシアを死から遠ざけることは出来なくなった。再びスタンド能力に目覚めるまで。

そして二つ目は

 

「……お、母さん?」

 

「アリシア!?無事なの、アリシア!?」

 

アリシアの治療だ。何処が異常なのかは判断出来なかったのでとりあえずはフェイトと同じ様にしておいたが問題ないだろう。とりあえず、これでプレシアを救うことは出来たはずだ。フェイトに関しては今の状況では無理だ。

役目を終えたクロス・アルケミー・レクイエムから『矢』を取り出す。再びクロス・アルケミーは見慣れた姿に戻る。

 

「アルフ、フェイトを休ませていろ」

 

「あ、ああ。あんたはどうするんだ」

 

「オレの事は良いから」

 

「分かったよ」

 

未だに意識を取り戻さないフェイトを抱えてアルフが出て行くのを見送る。

 

「プレシア・テスタロッサ、これでジュエルシードは必要無くなった。そう判断しても良いな」

 

「ええ、そうなるわ」

 

「そうか、他のことに関しては、後日話し合いで決着を付ける。今は運命に打ち勝てたことを喜ぶが良い。明日まで、庭園を借りるぞ」

 

「構わないわ」

 

この部屋に来る為に作った階段を上り、そこで限界が、対価の支払いが行われる。体内で幾つもの破裂音が聞こえてくる。

 

「やはり無理をしすぎた」

 

血を吐き捨てて壁にもたれる。時間の巻き戻しに、スタンド能力の剥奪、死ぬ一歩手前の少女の治療の三つの対価に加えて、『矢』の力を扱いきれなかった代償。持っていかれた対価はACT1用の素材の有機物系を9割とACT2用の運動エネルギーの全て。扱いきれなかった代償として内臓の幾つかが破裂したのだろう。

 

「やばいな、これは。即死じゃなかっただけ儲け物か?」

 

クロス・アルケミーに残っている素材で身体の治療をさせるが材料が殆ど足りていない。とりあえず無事な部分から材料を奪い、致命傷を塞ぐ。後は波紋と治療魔法で誤摩化すしかない。通路に仰向けに転がる。

 

「あ~、疲れた。やっぱり子供の体は辛い」

 

精神的にはまだまだ行けるが、身体が着いてきてくれない。それが実感出来る位に危ない戦いだった。このまま眠りたいが、硬い通路の床で寝るよりも庭園の柔らかい芝生の上で眠りたいので気合いで体を起こして再び階段を上っていく。途中何度も倒れそうになり、クロス・アルケミーにオレを抱えさせて移動して芝生の上に寝転がる。手入れがちゃんと施されているのか中々寝心地が良い。これで太陽の光が浴びれれば言うことなかったのだが、生憎と空は、というか宇宙か?なんか黒っぽい紫の空が広がっている。まあいいや、寝よう。こんな時だけはクロス・アルケミーの存在が鬱陶しい。意識を完全に落とせば自立行動をするなんて厄介にも程がある。意識を軽く落として体を休める。

 

 

 

 

 

 

 

「起きて、お願い。起きて!!」

 

慌てている誰かに体を揺さぶられ意識が覚醒する。目を開けると、そこにはフェイトが居た。いや、アリシアか?

 

「ママが、ママが倒れたの!!お願い、助けて」

 

プレシアが!?

すぐに飛び起き、痛みに膝を付き、血を吐く。予想以上に身体が回復していない。

 

「貴方もなの!?」

 

「オレは大丈夫だ。それより、プレシアは何処に居る」

 

あまりやりたくはなかったが無機物系の素材から人工臓器を作り出して移植する。これで普通に動く分には問題ないはずだ。

 

「こっち」

 

アリシアに案内されてプレシアの元に辿り着く。ベッドに寝かされているプレシアは今もまた血を吐いていた。

 

「おい、プレシア。しっかりしろ」

 

顔色がかなり悪い。呼吸も脈もかなり浅い。とりあえず、うつ伏せにして吐血が呼吸の妨げになる事を防ぐ。

 

「プレシア、何が原因だ」

 

意識がハッキリとしていないプレシアに問いかける。原因が分かれば対処法が分かるかも知れない。だが、プレシアがそれに答えてくれない。

 

「くそっ、勝手にここに在る物を使わせてもらうぞ。とりあえずは素材の確保だ。アリシア、食料庫はどこだ」

 

「えっと、分かんない。ここが何処なのかも」

 

「何だと!?くそ、一刻を争う時に。転移魔法が使えれば、そうだアルフだ」

 

急いでアルフに念話を送る。

 

『アルフ、今すぐに地球に帰してくれ』

 

『何でだよ。明日になればユーノが迎えにくるんだろう』

 

『プレシアが倒れた。オレも結構ヤバい状態でな、急いで医者に治療してもらわなければならない。お前がオレの事もプレシアのことも嫌っているのは分かる。だけど、オレはともかくプレシアを助けれるのはお前だけだ。頼む』

 

『……嫌だ。あんただけならともかくババアが死ぬのなら私にしてみれば嬉しいことだ。フェイトも悲しむだろうけど、私はババアを許さない』

 

『……そうか、分かった。お前の意思を尊重しよう。代わりと言ってはなんだが食料庫が何処にあるかだけ教えてくれ』

 

『ババアの部屋を出て左の突き当たりだ』

 

『分かった』

 

念話を終えてアリシアに向き合う。

 

「ここでプレシアに声を掛け続けろ。手を握って、出来るだけ大きな声で」

 

「うん」

 

「すぐに戻る」

 

部屋を飛び出して食料庫に向かう。扉を開けて中の物を物色する。

 

「碌な物が無いな。ほとんどサプリしかない。ええい、人工臓器でなんとかするしかないのか」

 

ある程度使えそうな物に波紋を通してからプレシアの部屋に戻る。

 

「戻ったぞ」

 

「あっ、ママがこれをって」

 

部屋に戻るとアリシアの前にモニターの様な物が浮かび上がっている。モニターにはカルテらしき物が表示されているのだが、文字が読めない。英語とドイツ語が交じった様な文字なので大体は予測できるが詳しいことまでは分からない。しかも、どう見ても異常がある部分の存在をオレが知らない。つまりリンカーコアが原因だ。最悪にも程がある。打つ手が無い。摘出しても良い物なのかも分からない。どう異常が出ているのかも分からない。細かい期間で調べている所を見ると殆ど気合いで生きていたのだろう。アリシアを救う為だけに。

 

「親の執念か」

 

「……そう、よ」

 

辛そうにしながらもプレシアが体を起こそうとする。

 

「……プレシア」

 

「アリシア、少しだけ二人きりにさせてくれないかしら。大事なお話があるから」

 

「えっ、うん。待ってるね」

 

アリシアが部屋から出ていき、プレシアと二人きりになる。

 

「勝負の前に言っていたわね。何を聞きたい?」

 

「……色々と聞きたいことはあったけど、一つだけ。これしか方法は無かったのか」

 

その問いにプレシアは首を縦に振る。

 

「私には時間が無かった。だからこそあれを、使いたくもなかったフルクローン技術にまで手を出すしか、アリシアを救う手が見つからなかった」

 

「つまり、治せないのか」

 

「ええ、リンカーコアは魔導士にとって第二の心臓とも言える物よ。それが壊れている以上、どうしようもないわ」

 

「摘出すればどうなる」

 

「普通なら魔法が一切使えなくなる程度でしょうけど、私の場合、摘出のショックに耐えられないわ」

 

となるとレクイエムによる治療しか無いな。だが、今のオレに耐えきれるか。

 

「東条城矢、貴方に頼みがあるのだけれど聞いてくれるかしら」

 

この状況から考えられる頼みなど一つしか無い。

 

「断る。言ったはずだ、オレは目の前で助けを求める者を救ってみせると。残される者の気持ちを理解しろ!!」

 

「残念だけど、もう限界みたいなのよ。アリシアと、フェイトを、私の娘、達のことを、お願い」

 

プレシアの体から急速に力が抜けていく。迷っている暇はない。

 

『アルフ、すぐにプレシアの部屋に来てくれ』

 

「クロス・アルケミー・レクイエム!!」

 

『矢』を使いレクイエム化させ、プレシアの治療を行う。

 

「あっ」

 

今回はすぐに対価の支払いと反動が来る。左腕は肩口から、左足は膝から下が、残っていた生身の臓器と血液がごっそりと無くなり、右目が見えなくなる。さらにはリンカーコアが欠けたと思われる痛みが走る。急いで止血だけを行なった所で限界が来た。意識が落ちる寸前に見えたのは、涙を流すクロス・アルケミー・レクイエムの姿だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

城矢に呼ばれてババアの部屋まで向かうと部屋の前にフェイトにそっくりな子、ババアが言ったことが本当ならフェイトのオリジナルに当る子が部屋の前に立っていた。

 

「どうしたんだい、こんな所で」

 

「ママが倒れて、今お兄ちゃんとお話ししてるの。ねえ、ママ死んじゃうの?」

 

「さあね。私には分からないよ」

 

心の中では死んでもらいたいけど、それをこの子の前で言うべきではない事位分かっている。とりあえず部屋に入ろうとした所であることに気付く。扉の向こうから血の臭いがする。それもここまで臭うということはかなりの出血量だ。

 

「あんたは離れてな。絶対に部屋の中を見るんじゃないよ」

 

「どうしたの?」

 

「いいから」

 

一刻も早く部屋の中を確認したかったがフェイトと同じ年齢の子供には見せるわけにはいかない。少し離れた部屋に待機してもらい、ババアの部屋に入る。

 

「うっ!?」

 

扉を開けるとそこにはベッドに倒れているババアと、左腕と左足が無くなった城矢が血溜まりに倒れている。見るからに瀕死な城矢を救う方法は私には無く、ババアならあるかもしれない。城矢が死ねばフェイトは悲しむだろうし、あの白い少女も悲しむことになる。何より、この状況を産み出したのは私が原因でもある。最初に頼まれた時に地球に転移させていれば他に手があったはずだ。一度だけだ。一度だけこいつの為に意志を曲げよう。

 

「おい、目を覚ませ」

 

倒れているババアを揺さぶる。

 

「う、うぅ……死んで、ない?」

 

「何言ってるんだい。それよりあんたなら城矢を何とか出来るはずだろう」

 

「何が!?ちょっと、一体何が起こってるの」

 

「知らないよ。念話で呼ばれたと思ったらこの様だ。とにかく、城矢を助けれるのはあんただけだ。私も手伝うから、なんとしてでも助けてくれ」

 

「下の研究室に連れて行きなさい。体を調べないことにはどうすることも出来ないわ。できるだけ揺らさずに慎重に運びなさい」

 

「あいよ」

 

言われた通りに慎重に抱きかかえて違和感を感じるがそれを無視してババアの後を追い、研究室に向かう。途中、ババアが一度立ち止まるがすぐに歩き始める。たぶん、城矢との戦いでの消耗が激しいだけだと思い、何も言わない。

 

「そこのベッドに寝かせて」

 

研究室に入り中央に設置されているベッドに城矢を寝かせる。ようやく気付いたが右目からも出血している。おそらくは失明しているだろう。ババアが色々と機材を動かして城矢の体を調べていく。その結果を後ろから覗いてみる。

 

「なんだよこれ!?本当に生きているのか」

 

「辛うじてね。本当にギリギリよ。生きる為の最低限以外の余裕なんて無いでしょうね」

 

モニターに表示された城矢の体は人と言っていいのかが分からなかった。臓器らしき人工物が幾つかと心臓、それ以外の物が見当たらない。違和感の正体はこれだった。

 

「これは、私にもどうしようもないわね」

 

それはそうだろう。だけど、それじゃあ城矢を待っている人が悲しむことになる。

 

「頼りたくはないけど、あいつに連絡するしかなさそうね」

 

「あいつ?」

 

「私にクローン技術であるプロジェクトFの原型を渡してきた男よ。あいつなら、なんとか出来るはず」

 

そう言ってババアがその男に連絡を取り始める。

 

『やあ、久しぶりだね。君の方から連絡が貰えるとは思っても居なかったよ』

 

「単刀直入に言わせてもらうわ。この患者を治せるかしら」

 

ババアが先程の診察データを送り、モニターの向こうの男がそのデータを見ている。

 

『ふむ、よく生きているね。足りない臓器や手足は機械で補うことになるがそれでも良いのならなんとか出来るだろう』

 

「そう、報酬はプロジェクトFの完成データで良いかしら?完成データと言っても類似率は95%前後だけど」

 

『完成させていたのかい?ということは君の願いは叶ったのか。羨ましいことだ』

 

「そういうことよ。それで、引き受けてもらえるのかしら」

 

『本来なら報酬が足りないと断らせてもらう所だが、お祝いも兼ねて引き受けさせてもらおう。娘をやるので彼を預けて欲しい』

 

「癪だけど礼を言っておくわ」

 

『では5分後に』

 

通信が切れ、ババアがイスに体を預ける。

 

「聞いての通りよ。彼を抱えて入り口に向かいなさい。私に出来るのはここまでよ」

 

話はそれで終わりとばかりに目を閉じるババア。腹は立つが今は城矢の方が大事だ。再び城矢を抱えて部屋から出ていく。入り口まで行くと薄紫色の髪の女が待っていた。

 

「そちらの彼が患者でよろしいでしょうか?」

 

「ああ、そうだよ。絶対に助けてやってくれ」

 

城矢を預けて頭を下げる。城矢を受け取った女も頭を下げてから転移する。

私に出来るのはここまでだ。後は信じてもいない神に祈るだけだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

フェイトの使い魔が出て行くのを見送ってから、手元の機材を動かす。

 

「治っているわね。治るはずが無いのに」

 

モニターには先日まで表示されていた物が無くなり、異常なしの一言だけが表示される。

 

「運命を乗り越える力、それの対価があの体なんでしょうね」

 

あの時、彼は確かに言っていた。

 

『僅かな対価で莫大な結果を引き寄せることが出来るオレの奥の手だ』

 

僅かな対価。あの姿が、儀式の時を戻し、私のスタンド能力を無くし、瀕死のアリシアを救い、同じく死ぬ直前の私を救う為の対価と考えるなら、確かに僅かな対価だろう。高が子供の体の半分で成せたことだとすれば奇跡に近い。

力は失ったが、他の物を取り戻すことは出来た。だけど、素直に喜ぶことが出来ない。何故と問えば答えは簡単に返ってくる。

フェイトの存在だ。

あの娘は目的を持って私が作り上げた子。死なせてしまうことは確定していた。だからこそ、その時になって躊躇わずに済む様に物として扱った。アリシアの最低限の記憶を持たせ、リニスには私の代わりに愛情を注がせた。それが私があの娘に出来る全てだった。

だけど、そんな運命すらも彼は壊し去った。自らの体と引き換えに。彼にとっては私すらも助けを求める者の一人でしかなかったのだろう。

私にとっての対価は二人の娘に向き合うことだろう。その結果、嫌われようともしかたのないことだ。だけど、それでも私の愛が変わることはない。

イスから立ち上がり部屋を出る。二人が何処に居るかは分からないけど捜さなければならない。これは私のけじめだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

「実に素晴らしいとは思わないかいウーノ」

 

「はい、魔力も殆ど持たない子供がここまでの力を持つとは」

 

「ああ、人の可能性とはまだまだ残っているようだ」

 

「では」

 

「出来る限りのデータを取らせてもらおう。それが終わり次第、彼には私の出来る限りの力を持って治療を施そう。いや、それだけでは足りないね。どうすれば良いと思う?」

 

「そうですね。見た所デバイスを所有していないようです。お作りになられては?」

 

「それは良い考えだ。さすがにリンカーコアを持たない者に魔法を使える様にすることは出来ないが、増幅することはできる。彼が何処まで行けるのか、試してみるもの良いかも知れない」

 

保存用のカプセル内で眠る少年を眺める。未だ幼い彼が成長した時、それほどの力を携えているのか、楽しみでしかたがないね。

 

「彼がその気なら娘をやるのも面白いかも知れないね」

 

 

 




これにて無印本編終了です。
次回は無印エピローグ的な物を予定しています。
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