今頃になって問題児が一人異世界から来るそうですよ? 作:神園龍一郎
謎の老人からの依頼を受け、南の世界の果ての火山に向けて飛び立ち20分。
ヘルメスの靴のお陰で目的地らしき場所にはすぐに着いた。
「しっかし何にもないなここ。ほんとにこんな所に果実のなる木なんてあんのか?」
周りを見渡しても草の一つも生えていない平地だ。
あるのは目の前にある火山。
後ろには森が広がっているがあの老人が言うには火山に生えていると言っていたので森の方にあるというのはまずないだろう。
「ここで止まってても仕方ねえよな…。とりあえず頂上まで行ってみるかか」
火山はそれほど高くはなさそうだ。
それに周りには生き物の気配はない。
頂上まではそれほど時間はかからないだろう。
天月は飛び上がり頂上に向けて飛び出した。
*
同時刻、箱庭二一○五三八○外門。ベリベット通り・噴水広場。
「やっとついたのでございますよ」
「ほんとに新しい奴が来たのか黒ウサギ」
「Yes!このウサ耳がバッチリと捉えたのでありますよ」
「で、そいつは何処にいるんだ?」
一度ノーネームの本拠地に戻りヘッドホンを探していた十六夜を連れここまできたが当の本人がどこにも見当たらない。
「何処に行かれたのでございましょうか…」
「箱庭の貴族(恥)なのに居場所もわからないのか?」
「誰が箱庭の貴族(恥)ですかこのお馬鹿様!」
スパァァァン!と黒ウサギのハリセンが十六夜の後頭部を叩いた。
「ヤハハハハ、とりあえず付近を手分けして探してみるか?」
「そうですね、そうしましょうか」
二手に分かれて付近を探そうと駆け出そうとしたその時、十六夜が少し離れたところに老人がいるのに気がついた。
「ちょっと待て黒ウサギ」
今にも飛び出そうとしていた黒ウサギのウサ耳を鷲掴みにして止める。
「な、何するんですか十六夜さん!痛いです!」
「あそこの老人がなにかしってるかもしれないぜ?ちょっと聞いてみないか?」
「とりあえず十六夜さんはその手を離してください!黒ウサギのウサ耳をもっと丁寧に扱ってください!」
「ヤハハハ、わるいわるい。癖でな」
「そんな癖今すぐ直してくださいこのお馬鹿様!」
本日二度目のハリセンの音が辺りに響いた。
馬鹿らしいやりとりはほどほどにして老人に声をかけた。
「おいじいさん。ここら辺で俺と同い年くらいのやつを見かけなかったか?」
「うむ?それならばついさっき銀髪の少年がここにきたぞい?」
「本当ですか!それで、その少年は何処へ?」
「南の世界の果てに果実を取りに行ったわい」
「なんですって!南の世界の果てといえば炎神様のテリトリーではございませんか!」
「炎神?俺がここに来た時に倒した水神と似たようなやつか?」
「Yes!ですが強さは水神様の遥か上をいく神格の保持者です。水神様は白夜叉様に神格を授かったのに対し炎神様はかの有名な帝釈天様から授かった神格を保持者なのです」
「へえ、面白そうじゃないか」
十六夜の目が新しいおもちゃを見つけたかのように目が光った。
今にも飛び出して戦いに行きたいとうずうずしているのが目に見える。
「ダメです十六夜さん。流石の十六夜さんでも一対一で挑めば無傷ではいられません!以前に倒した″黒死斑の魔王″よりも強いはずです!」
「かっ!そんなこと言われたらなおさら戦いたくなるじゃねえか!」
そう言うと十六夜は南に向けて全速力で走り出した。
「あぁ、お待ちください十六夜さん!」
それを追いかけるように黒ウサギも全速力で駆け出した。
*
火の粉を撒き散らしながら羽ばたき、天月を見下すように中に浮く燃える鳥。
その姿はかの有名な不死鳥や朱雀をおもわせる。
「貴様、我を目の前にして怯えぬか」
「怯える?たかが鳥ごときに何を言ってやがる」
「ふっ、威勢はよさそうだな。我も退屈しておったのだ。少し相手をしてやろう」
するど突然天月の手元に一枚の紙が出現した。
『ギフトゲーム名″炎神の試練″
・プレイヤー一覧 天月零
・ゲームマスター ″ガルガボロの火山の主″親指姫
・クリア条件 ゲームマスターの戦闘不能、もしくは降参
・敗北条件 プレイヤーの戦闘不能、もしくは降参
※舞台補足
・参加者、主催者は鉄則として、ガルガボロの火山の範囲から出てはいけない。
・主催者は鉄則として、ゲームテリトリー外への被害を出さないことを保証する。
宣誓 上記を尊重し、誇りと御旗とホストマスターの名の下、ギフトゲームを開催します。
″ガルガボロの火山の主″』
「なんだこれ」
「″契約書類″も知らぬのか貴様は」
「″契約書類″?」
天月は首を傾げながら呟く。
「まあいい、知ったところで貴様は我に敗北するのだ」
「とりあえずてめえを倒せばいいってわけか」
「我を倒すとほざくか貴様。炎神と呼ばれる我を倒せるものなら倒してみるがいい」
「炎神だかなんだか知らねえが…さっきから頭がたけえ」
天月が炎神を睨む。
ただそれだけなのに炎神は背筋がゾクリとした。
(何者だこやつは…。底知れぬ力を持っておる。なんという威圧じゃ…。このままではさすがの我も意識を持ってかれそうじゃ)
炎神は一度大きく翼を羽ばたかせ更に上空へと飛び上がる。
そして、翼から炎を羽をやりの雨のように天月に向かって振りかけた。
天月を中心に半径10mが炎の海に包まれた。
「ふっ、呆気ないものだな。やはり所詮は人間。我にはかなわぬ」
「へえ、面白いなおまえ」
「なっっ!!」
突如として天月のまわりの炎が消えた。
天月には傷一つ、服に焼け跡すらついていない。
「貴様、何をした」
「見ての通り火を消しただけだ」
「そんなこと貴様のようなだだの人間ができるわけなかろう」
それもそのはず、炎神の炎は帝釈天から授かったギフトによる炎。
並大抵のギフトでは消すことはおろか、近づくことすらできない。
「てめえの強さはこんなもんか?もっと俺を楽しませろ」
「くっ、ほざけ!」
炎神の燃える体が更に激しく燃えだす。
その炎は更に大きく激しくなりガルガボロの大半を埋め尽くした。
「いいないいなおい!楽しくなってきたじゃねえか!」
「この一撃、受け止められるものなら受け止めてみろ!」
炎神の雄叫びに応えて炎のが嵐のように巻き上がる。
竜巻のように渦を巻いた炎の柱が遥か高くまで大きくなる。
竜巻く火柱は全部で5本。
天月を囲むように唸りながら天月に襲いかかる。
火柱が地面の小石さえも燃やしながら天月を呑み込む!
「ははははは!どうだ人間!これが貴様と我の力の差じゃ!」
炎神は勝ち誇ったように笑い声をあげる。
「こんなもん効かねえよ!」
「なにっ!!」
突如として渦巻く火柱が全て消し飛んだ。
「馬鹿な!?」
驚愕する炎神。
炎神は全霊の一撃を消しとばされ放心するが、天月はそれを見逃すほど甘くはなかった。
「中々面白かったぜオマエ」
ヘルメスの靴で飛び上がる天月。
炎神に天月が近づいた瞬間炎神を包む炎さえも消し飛んだ。
炎が消えた炎神に天月の蹴りが胴体を打ち、炎神の巨体は地面に叩きつけられた。
そして炎神の意識は刈り取られた。
「俺の勝ちだな!はっはっは!」
天月は高らかに笑い声をあげ勝利を決めた。
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