今頃になって問題児が一人異世界から来るそうですよ? 作:神園龍一郎
天月と炎神の戦いに決着がついてから約10分後。
十六夜と黒ウサギはガルガボロの火山にたどり着いた。
「で、その炎神とやらはどこにいるんだ?」
「目的が違うのですよ十六夜さん。それにいたとしても絶対に戦わないでくださいと言いましたではありませんか」
「面白くねえな〜。それで、その新入りはここのどこかにいるんだろ?」
「Yes!そのはずですが…どこにおられるのでしょう…」
あたりをキョロキョロと見渡す二人。
どうやら人の気配はないようだ。
「ガルガボロの火山で取れる果実といえば山頂にしかございませんので、とりあえず登りましょうか」
「そうだな、ついでに炎神とやりあえたらいいな」
「まだ諦めてなかったのですかこのお馬鹿様っ!」
黒ウサギの愛用のハリセンが十六夜の後頭部を叩いた。
*
少し時間は遡り、ガルガボロの火山頂上にて。
「うっは〜、すげえな」
炎神との戦いに勝ち、火山の頂上に登った天月はその火山の火口の大きさに感嘆の声を上げた。
その大きさは目測だけでも東京ドーム1つ以上の広さがあった。
そして、その下では赤々としたマグマが溢れている。
そんな火口の側面に目的のそれはあった。
「あれがあの老人が言ってた果実か。まあ、さっさととって帰りますかな」
天月はフワリと宙に浮きその果実がなっている木に近づいた。
「見た目は林檎っぽいがこんな色の林檎は見たことないな。」
それもそのはず、その林檎は普通の赤とは違い、まるで燃える炎のように明るく、そしてマグマでもかけたかのように赤々とした林檎だった。
実際にちぎって取ってみると、やはり林檎自体が輝いていた。
「へ〜、なかなか美味そうだなこれ。俺用に一つ持って帰るか。」
そして、天月はもう一つ果実をとり、戻ろうとしたその時。
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
突然頭上から人が降ってきた。
とりあえず下はマグマなので受け止める。
「げふぅ!」
「あ、わりぃ」
受け止め方が悪かったのか降ってきた人の鳩尾に俺の腕が入った。
受け止めてわかったがどうやらこいつは女の子のようだ。
赤と黄色など明るい色で作られた半纏に身を包み、真っ赤な髪をした小学生高学年くらいの大きさの女の子だ。
その女の子は赤い瞳を涙目の状態で顔を上げ、訴えてきた。
「うぅぅぅ、さっき蹴られたばっかりのところに更に攻撃なんて貴方は鬼か!!」
「いや、だから悪いって謝ってるじゃ…え?さっき?」
突然その女の子が訳のわからないことを言い出したので思わず聞き返す。
「忘れたとは言わせないよ!さっきあたしと戦って地面に蹴り落としてくれたじゃない!」
「まさかお前…炎神?」
「今頃気づいたのか!そうだよ!あたしがお前を豪炎で苦しめた炎神だよ!」
「いや、別に苦しめられてないし」
「そんなぁ!嘘だ!あたし頑張ったんだもん!絶対苦しんでたはず!」
「いや、別にそれほど苦しくも「嘘だ嘘だ嘘だぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」」
ついに炎神は俺の腕の上で泣きながら暴れ出した。
「お、おい、危ないって」
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!」
すると突然炎神の髪が燃えだした。
「うわ、なんだこれ!」
そして、炎神の泣き声に呼応するかのように火山が震えだした。
下にたまっているマグマが音を立て騒ぎだす。
「おいおい、これってまさか…噴火するんじゃ…」
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!」
危険を察知した天月はひとまず火口から抜け出すため飛び上がる。
火口から抜け出しひとまず炎神を降ろそうとするが炎神の手がガッチリと天月の服を掴んで離さなかった。
「やべえ、やべえって!どうすりゃいいんだよ」
このままでは噴火に巻き込まれてしまう。
ヘルメスの靴は一人用のようで、炎神を担いだままではそれほど速度が出せない。
それに俺は大丈夫だろうが少女がどうなるかわからない。
炎神らしいがこの姿で噴火に巻き込まれるのは危険そうだ。
火山の震えが大きくなってくる。
「くそっ、こうなれば一か八か!」
泣き叫ぶ炎神を自分に向き直らさせ聞こえるように大きな声で炎神に向かって言った。
「いや〜、炎神は強いな!俺も本当にギリギリだったぜ!」
「ふぇ?」
炎神が泣くのをやめ、俺の声に耳を傾ける。
「本当に炎神は強いな!うん!強い!」
「そ、そうでしょ!そうでしょ!」
「おおそうだ!炎神は強い!」
褒められて喜んでいるのか、それに合わせて火山の震えがおさまっていく。
「もっと褒めてくれたっていいんだよ!」
「あ〜、えっと〜………炎神は強いな!」
普段人とあまり接していなかった天月にとって人を褒めたことがほとんどないせいか、さっきから強いしか言えていなかった。
「ふふ〜ん♪そうよ!あたしは強いのよ!」
そして、それで自慢げに無い胸をはる少女もまた馬鹿であった。
*
結局火山が噴火しなかったものの本当に危なかった。
まさかこの少女にそんな力があったとは。
「ところでお前、俺と戦ってた時と話し方が違うのな。なんでだ?」
「うっ!いや、その…なんというか…」
さっきまで自慢気にしてた少女が突然痛いところをつかれたようにしゅんとなってしまった。
「なにか理由があるのか?」
「えっと…あの…」
「なんだ?」
「その…いげ……だ…め…」
「なんだって?」
「い…威厳を出すためです…」
そう言った瞬間に炎神の顔が真っ赤になった。
ついでにまた髪が燃えだした。
「なるほどな〜」
そんな炎神をからかうようにニヤニヤしながら天月は言った。
「なっ、馬鹿にしないでよ!」
「いや〜?別に〜?(ニヤニヤ」
「嘘だ!その顔は絶対馬鹿にしてる!」
炎神がまた涙目になりながら言ってくる。
さっきみたいにまた火山が噴火しかけるとたまったものではないのでからかうのをやめにしようと考えたその時。
「人の気配がする…」
急に真剣な顔になった天月に驚く炎神。
天月は立ち上がりガルガボロの北に面する森に目を向けた。
天月の目には一人の学ランの男と緋色の髪にウサ耳の女が映った。