今頃になって問題児が一人異世界から来るそうですよ?   作:神園龍一郎

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4話

「おい炎神。あいつらはお前の知り合いか?」

「え?どの人たち?」

「あそこにいる学ランの男とウサ耳コスプレの変人女だよ」

言われて炎神は天月が見ていた方に目を凝らした。

目を凝らす時に目の上に手をやっている仕草がやはり妙に子供らしい。

「う〜ん、学ランの人は知らないけど女の人の方は知ってるよ」

「誰だあいつは」

「″月の兎″っていって昔魔王に滅ぼされた種族らしいけど生き残りがいたみたいだね。それに髪が青っぽいからまだ若いね。箱庭の貴族って呼び名もあるよ。」

「へえ〜、意外と物知りなんだな」

「でしょ〜、私は物知りなんだよ」

自慢そうに胸を張っているが軽く馬鹿にされたことに気づかないところ、やはり馬鹿なのだろう。

「しかし、その箱庭の貴族ってやつがこんな世界の果てに何の用だ?」

「う〜ん、たぶん真実の果実を取りに来たのかな?」

「真実の果実?」

「今貴方が持ってるその果実だよ。3年に5日間だけなる果実なんだよ。確か今日で5日目だから取りに来たんじゃないかな?」

「なるほどな…」

「でも真実の果実は食べた人に特別な恩恵を与えるから簡単に人に渡しちゃダメなの。許された人にしか渡しちゃいけないの。だから私はここで番人として帝釈天様から命を授かりここにいるってわけだよ」

「じゃあ俺もとっちゃダメなんじゃないのか?」

「それは、(スパァァァン)」

炎神がなにか言いかけた瞬間二人組の方で何かを叩く音が響いた。

見てみるとどうやら男の頭をウサ耳の女がハリセンで叩いたようだ。

男の方は痒そうに頭を掻いていた。

「まあ、とりあえず。あいつらおい返せばいいんだろ?」

「え?」

「簡単に渡しちゃあいけないならあいつらをおい返せばいい。俺があいつらを追い払ってやるよ」

「で、でも…」

「なあに、心配すんなって。2人ぐらい余裕だっての」

「ちょっとま…」

周りの空気が突然糸を張ったような緊張感に変わった。

天月は2人の方に殺意の視線を向けている。

横にいるだけなのに今にも意識を刈り取られそうな感覚が炎神を襲う。

「離れてろ」

さっきまでの天月とはまったく別人のような冷徹さに炎神は即座にその場を離れた。

1人になった天月は楽しそうに唇の端を釣り上げて笑う。

「やろう、俺に殺意を向けられて逃げ出すどころか俺に敵意を向けてきてやがる」

それもそのはず、天月に殺意を向けられて逃げ出したり気絶しなかったやつは誰一人いなかった。

ましてや敵意を向けてくるやつなんて一人もいなかった。

こんなやつは初めてだ。

(本気の殺意をやってみるか…いや、だがそれじゃあ面白くない。こんなおもしれえ奴とやり合わねえなんて手はない)

天月はフワリと飛び上がる2人の方に向かって飛び出した。

 

 

 

 

「何ですか…これは…」

山頂の方から謎の殺意を向けられた十六夜と黒ウサギ。

「今までこんな殺意を見たことは一度もないのですよ」

黒ウサギの背中に冷や汗が流れる。

今すぐここから逃げたしたい。

今にも狂ってしまいそうな殺意の中、十六夜は楽しそうに笑う。

「へっ、面白いじゃねえか」

「え?」

「黒ウサギ、お前は下がってろ。足手まといだ」

反論しようと思ってもこの殺意の前では何も言い返せなかった。

黒ウサギはその場から飛ぶように森の方へ下がっていった。

「こりゃあ春日部やお嬢様の比じゃねえな。俺も無傷じゃいられないかもな」

黒ウサギの前では何もないように振舞っていたが内心は経験したことのない異常な殺意にたじろいでいた。

山頂の方から誰かが飛んでくる。

その影は近ずいてくるにつれ段々とはっきりと見えてくる。

年は同じくらいの男のようだ。

その男が近ずくにつれ殺意も段々と強くなる。

男は十六夜から少し離れたところに着地し十六夜を睨む。

十六夜もそれに対して睨む。

新たな問題児と箱庭の問題児が互いににらみ合い対峙する。

やるかやられるか、男と男の戦いの幕が今開こうとしていた。




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