今頃になって問題児が一人異世界から来るそうですよ? 作:神園龍一郎
箱庭二一○五三八○外門。ベリベット通り・噴水広場。
「本当によかったのでございますか十六夜さん」
「よかったもなにも仕方ないだろ。俺じゃまだあいつには勝てなかったんだから」
ガルガボロの火山で天月とタイマンで負け、今黒ウサギと十六夜は噴水広場まで戻ってきていた。
「でも…あんな恩恵はじめて見たのですよ」
「それは俺も同じだくそったれ」
天月の得体の知れない恩恵によって結果として敗北してしまったい結局天月はノーネームに入らなかった。
「だが次やるときは絶対勝つ。二度目はない」
「Yes!次は絶対ノーネームに入ってもらうのですよ」
次の天月との戦いへの意気込みを決めながら十六夜は本拠地に、黒ウサギはアンダーウッドに戻るために分かれた。
*
「やっぱりこの世界はおもしれえな。ここに来てよかったぜ!」
十六夜に勝った天月はガルガボロの火山で十六夜と戦った後の場所を上空から見ていた。
地上には十六夜の拳によって作られた無数のクレーター。
だが一箇所だけ不自然になんの傷跡もない場所がある。
地をえぐるほどの十六夜の拳がふるわれたというのにその一箇所だけは異様なまでに不自然だった。
「あいつもなかなか面白い奴だったな。だが、俺を一歩も動かせられないようじゃまだまだだな」
そう、あの激戦の中で無傷だった場所には天月が立っていたのだ。
それも一歩も動かずに。
あの十六夜ですら一歩も動かすことができなかった。
「まあ、でも次やるときは楽しみだな。次は絶対に動かずには勝てないだろうし」
天月は不敵な笑みを浮かべ例の爺さんにとった果実を渡すためにふわりと飛び上がり駆け出そうとしたその時
「待ってよぉ〜」
後ろから聞き覚えのある声が天月を呼び止めた。
振り向くと炎神が少女の姿で飛んできた。
「なんか用か?」
「なんか用かじゃないよ!なんなの貴方!どんだけ強いのよ!」
「いや、まあ普通?」
「あれが普通なわけあるかぁ!」
少女の声とは思えないほどの大音量で至近距離で怒鳴られた。
「それに貴方のその恩恵はなんなの?貴方本当に人間?」
「当たり前だろ。俺はれっきとした人間だ」
「あんな戦い見せられたら人間かどうか疑っちゃうわよ」
火山の山頂から2人の戦いを見ていた炎神。
炎神からすればどちらも人間とは思えなかった。
「まあ、でも真実の果実を守ってくれたことは感謝するわ」
「あ、それなんだが…どうやらあの二人の目的は俺だったみたいでな」
「え?どういうこと?」
可愛らしく首をかしげる炎神に天月は説明を始めた。
5分後………
「てわけだ。わかったか?」
「まあ、なんとなくだけど…」
天月の説明を簡単にするとこうだ。
1.二人は果実ではなく天月に用があってここにきた。
2.天月は十六夜とコミュニティに入るかどうかを決めるために戦った。
3.結局天月はノーネームには入らなかった。
というわけである。
「で、貴方はこれからどうするの?」
「あ〜、それなんだか…どうすっかな〜」
頭を掻きながら考える天月に炎神が一つ提案する。
「これは提案なんだけどまず東に一度戻らない?そこで私の知り合いに貴方を会わせたいんだけど…」
「まあ、行く当てもないしな。わかった」
炎神の提案を受け入れひとまず東に戻ることになった。
東に向かって駆け出そうとするがそこで一つ疑問が浮かんだ。
「炎神はここにいなくても大丈夫なのか?」
「え?あたし?たぶん大丈夫なんじゃない?」
「たぶんって…」
曖昧な返事と無邪気な笑顔で返されてしまった。
すこし心配ではあるものの仕方なく炎神と一緒に東に向かって飛び出した。
*
二人が東に向かって飛び出した少し後。
ガルガボロの火山の麓に何もないはずの虚空に一つの黒い影が現れた。
その影はフラフラと天月と十六夜の戦った後を飛び回ると突然止まりもぞもぞと動き出した。
そして影は人の形になり色がついて行く。
そして一人の男となった。
「いや〜、派手にやりおったなあ。しっかしあのふたりん恩恵なかなかおもしれぇのぉ」
男は楽しそうにガハハハと笑う。
「まっちょれよぉ、わいがその恩恵、盗んでやるき」
すると男はまた黒い影となりその場から消えた。