今頃になって問題児が一人異世界から来るそうですよ? 作:神園龍一郎
炎神に連れられてとある店に着いた。
商店の旗には、青い生地に互いが向かい合う二人の女神像が記されている。
「この旗は″サウザンドアイズ″の旗よ」
「サウザンドアイズ?」
「ええ。四桁の門、三三四五外門に本拠地を構える箱庭で知らない人はいないギルドよ」
「へ〜。そのサウザンドアイズってギルドは強いのか?」
天月は真っ先に思い浮かんだ率直な疑問を炎神に問いかけた。
「強いってもんじゃないわよ。あたしでも敵わないわ」
「は〜、そんなに強いのか…」
炎神を一瞬で倒した天月は、
(あれ?それほどでもないんじゃないか?)
と思ったが、そう言うと炎神が泣きそうなので敢えて言わなかった。
「今回はこの店を任されているサウザンドアイズ幹部の白夜叉様に貴方を会わせたかったの。だから先に白夜叉様に挨拶してきたってわけ」
「なるほどな」
店の前で話していると店の中から女性店員らしき人物が出てきた。
「炎神様、お待ちしておりました。白夜叉様から奥にお連れするよう言われましたので」
「わかったわ。ほら、行くよ」
女性店員に連れられて和式の中庭を進み、縁側で足を止める。
「白夜叉様、炎神様とお連れの方がお見えになりました」
「うむ、入れ」
障子の向こうから少し幼いがどこか大人びたなんとも矛盾するような声が聞こえてきた。
障子を開けて中に入る。
部屋の中は香の様なものが焚かれており、風と共に二人の鼻をくすぐる。
個室というにはやや広い和室の上座には着物風の服を着た真っ白い髪の少女が座っていた。
「そやつがおんしが言っておった男か?」
「はい、そうです白夜叉様」
白夜叉と呼ばれる少女は天草を爪先から頭まで眺めると、
「ふむ…とりあえず座れ」
いつの間にか女性店員が置いた座布団の上に座るように促された。
「とりあえず自己紹介しておこうかの。私は四桁の門、三三四五外門に本拠を構えている″サウザンドアイズ″幹部の白夜叉だ。この炎神とは少々縁があってな。昔からの炎神の友の美少女と認識しておいてくれ」
「そんな、白夜叉様。友などとは…」
「ずいぶん腰が低いなお前…」
店に入る前とは態度が大違いである。
「俺の名は天月零。本当かは知らんが黒ウサギというやつからこの世界に召喚されたらしい。炎神とは戦った仲だ。よろしく頼む」
「ふむ…」
再び白夜叉は天月を見つめる。
視線は頭からだんだん下がってきてある一点で止まった。
そして白夜叉は「ほう…」と小さい声で言った。
「おんし、この炎神にギフトゲームで勝ったようじゃな」
「なんでわかったんだ?」
白夜叉が手に持っている畳まれた扇子で俺の左手を指した。
「その指輪じゃ」
見るといつの間にはめられたのか、天月の左手の薬指に赤く光る指輪が付いていた。
「なんだこれ?いつの間についたんだ?」
自分の左手を見ながら天月が呟く。
隣ではなぜか炎神が顔を赤くして俯いた。
「それは特殊な恩恵での、隷属の意が込められた指輪なのじゃ」
「隷属?」
「まあ、つまりだの…」
白夜叉はそこで一旦区切り真っ赤な顔で俯く炎神を見る。
「つまりその炎神がおんしの奴隷であるということじゃ」
「え……」
訳が分からないといったように天月が固まる。
その意味を理解しようと脳が働くが理解できない。
「分からないようじゃからもう一度言うが…炎神はおんしの奴隷じゃ」
炎神の方を見るとさっきよりも顔が真っ赤になっており髪もチリチリと燃え出している。
「はあああああああ!?」
再度言われて意味を理解した天月は当然驚く。
「え!?なんでだよ!俺お前に何かしたっけ?!」
「ギフトゲームに勝ったではないか」
白夜叉の冷静な返答が返ってくる。
「いや、確かに勝ったけど!勝ったけど、ただ勝っただけで負けたやつは奴隷になるのか!?」
「まあ、ゲームによるが…そういうこともある」
「なんでだよおおお!」
何が好きでこんな見た目小学生の女の子を奴隷にしなくてはならないのだ!
「まあ、とりあえず落ち着かんか」
「少し時間をくれ…」
そう言うと天月は店の外に飛び出していった。
*
しばらくすると息を切らした天月が帰ってきた。
「なるほど…つまり炎神は俺の奴隷だということか」
「さっきからそう言っておるのだが…」
白夜叉は疲れたようにため息をつく。
「まあ、とりあえずこの話は置いておこう。話が進まねえからな」
「うむ、それでは話を進めようかの」
「頼む」
少しおちついた天月は座布団に座りなおした。
「今回炎神がおんしを連れてきたのは恩恵の鑑定をして欲しいとのことなのじゃ」
「鑑定?」
「まあ、私は専門外どころか無関係もいいところなのじゃが…炎神に頼まれたからの。じゃが…」
白夜叉は勿体振るように一旦言葉を区切り
「わしは強いやつしか鑑定はせん」
そう言い、天月を見つめる。
「炎神を倒したというのじゃから強いというのはわかっておる。じゃがどの程度か私にも見せてもらうぞ」
「へえ、俺を試そうってか?」
天月はニヤリと笑い白夜叉を見つめ返す。
「いい目じゃ。じゃが私も時間がなくてな。簡単に済ませてもらうぞ」
「いいぜ、試されてやるよ」
白夜叉は立ち上がり中庭に出た。
すると足元に転がっている石一つを拾い上げた。
「ルールは簡単じゃ。今から私がこの石を投げ、手で掴む。おんしはどっちの手に石が入っているかを当てればよい。どうじゃ?簡単じゃろ?」
「ああ、わかりやすくていいな」
「うむ、じゃあゆくぞ」
白夜叉が石を上に投げた。
その石は最高点まで達すると重力にならい加速しながら落ちてくる。
そして、白夜叉の目の前にきた瞬間、石が消えた。
「さあ、どっちじゃ」
白夜叉は拳を天月の方に突き出し不敵な笑みを浮かた。
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