"!!"は、かなり
"!!!"は、最上級
って感じで使い分けてます
「「テメェら誰一人!こいつには指一本たりとも触れさせねぇ!!」」
「ンナナ……(クレタ社長……クロトさん……)」
俺たちはボロボロのポンプを守るようにそう言った。
俺たちの前には仮面を被った犯罪者たちが大勢いる。
全く……どうしてこうなったんだろうな……(泣)
〜〜こうなる前〜〜
6年生になり、夏休みも目前になった俺は、放課後にいつも通りクレタと公園で遊んでいた。
「カバディカバディカバディカバディ……!」
シュババババ!
「あ、あり得ねぇ……!三人に見えるぞ!?
クロトは一人一体のはずだろ!?
世界の常識に反していやがる……!」
ふっ!どうやらクレタには俺のカバディステップが速すぎて三体に分身したように見えるようだな!
「ハッ!そうこなくちゃな!あたしも負けてらんねぇ!
うおおお!」
バッバッバッバッ!
「かばでぃかばでぃかばでぃかばでぃ……!」
!?
クレタのやつ、"今"限界を超えやがった!
たどたどしくも必死な姿がカワイイ!
と、つい可愛さの限界を越えたクレタに見惚れた結果、
「あ、」
シュッバッドカーン!
足がもつれて勢いよく転んでしまった。
「ク、クロトー!?」
クレタが驚きと心配が混じった声で叫んだ。
クレタを心配させるのは忍びないな……。
問題ないことをアピールするため、俺はすぐに何でもない様に立ち上がって言った。
「だ、大丈夫だ……うぅ……!気にすッ!……オェ……!気に、するな……。」*1
「いや気にするわ!」
「無理だって!無理があるって!お前の顔に"あと少しで死にそうなくらい痛いです"って書いてあるのが見えてるんだぞ!?」
「気にするな。」
「初めてだよ本当に人の顔に文字が見えるなんて!
ゴシック体で意外と見やすいんだな!
あと鏡文字で書いてくれてるからあたしから見たら分かりやすかった!
こんな時でもお前は優しいんだな!?
凄いぜクロト!?」
「気にするな。」
「お前がド派手に転んだ余波で公園中にデカい砂埃が舞ったんだぞ!?」
「気にするな。」
「人が転んだ時に鳴る音じゃなかったぞ!ビルの崩落と同じような大きさの音がしてたぞ!?」
「気にするな。」
「それにお前が立ってるそこ!クレーターが出来てる!なんかお前が宇宙から飛来してきた感じになってるぞ!」
「……気にするな。」
「なんだ今の間ァ!」
ワイワイガヤガヤ
〜しばらくして〜
「本当に病院行かなくていいのか?」
ひとまず騒動は収まったものの、クレタはまだ心配そうに俺に尋ねてくる。
それに対して右腕を上げながら
「大丈夫だ。鍛えているし、受け身をとったからな。」
と答えた。
勿論嘘だ。鍛えていても痛いものは痛い。
というか鍛えたからこそ痛い。
けれどクレタは信じてくれたようで
「はぁ、そんなもんかねー。ま、お前が言うなら信じるぞ。」
と言ってくれた。
「ああ、ありがとう。」
なんだか騙しているようで申し訳ねぇ!
うぅ、ごめんなクレタ。
でもあんな馬鹿な失敗なんかで心配してほしくないんだ。
まあなんやかんや言ったけど、この件はこれでうやむやになったな!
と俺が思っていると
グレタは突然
「だからまあ、これからあたしがやるのは余計なお世話なんだろうけど」
と言いながら俺の右腕に彼女の小さな手を近づけて
「痛いの痛いの飛んでいけー!ってな!」
と少し顔を赤らめて、照れくさそうにしながら笑ってそう言った。
夕焼けの空の下、
彼女の後ろで、夕陽がゆっくりと沈んでいく。
まるで時が止まっているかのように、俺にはその瞬間が永遠に思えた。
なんて事がありつつもそろそろ帰る時間だということで、俺とクレタは途中まで帰り道が一緒なので一緒に帰路についていた。
「今年の夏休みの宿題どうしようかな」(小学生レベルだから行けると思ってたけど、社会と理科がキツすぎる。まじでわからん。あと自由研究とかも何すればいいか分からん。どうしよっかな。)
「今まで通りあたしの家に来て姉貴たちに手伝ってもらえばいいだろ?」
「ありがたいが、いいのか?」
「もちろんだ!喜んで手伝ってくれるぞ。」
「グレースさんの自由研究は楽しいからなぁ。うれしいよ、ありがとう。」
「……まあ、な。」(お前はあの自由研究で会社の悲願である知能重機の完成に大きく貢献してくれたってのに、何も気が付いていないふりをして、頑なにあたしたちから報酬を受け取らない……。
"ただの自由研究ですよ?お金なんていりません。普通にグレースさん達の研究に使って下さい"なんて言ってな。
優しいお前のことだ、より多くの人を助けるためにその金を使って欲しいんだろ?ふっ相変わらずだよ、お前は。)
「?」(なんか意味深に笑ってる……。
グレースさんが褒められてうれしいのかな可愛いね^^)*2
〜〜〜
「アンドーさんって意外と国語が得意だよな。
分かりやすく教えてくれるし。」
「ま、あいつ自分の道具を兄弟って呼んで会話してるからな。」
「ふむ、……それは高い国語力の理由になるのか?」
「……そう言われると何とも言えねぇが。」
「だろ?」
「けどうちの会社の広報で現場監督もやってるんだ。
これは理由になるだろ?」
「ああ、確かになぁ」
なんて他愛もない会話をクレタとしていると
裾が所々破れている白いタンクトップを着て
そのタンクトップの上に肩の部分に白いふわふわしたものが付いているベストを着ていて
黒いズボン履いている
少し顔色が悪い強面のお兄さんが、
幼稚園児や保育園児と同じくらいの大きさのものを抱きかかえてコソコソと路地裏に入ろうとしていた。
【やばい誘拐だ!早く治安官さんに通報しなきゃ!具体的には三日後くらいに!】
【やばい誘拐だ!こうしちゃいられない!すぐに犯行を止めさせよう!】
後者しかないんですけど!?
三日後ってお前、手遅れだよ!
クソ!正直怖い、怖いがしょうがない!
覚悟を決めろ、俺!
〜三十分後〜*3
ようやく犯罪者と戦う覚悟が決まったぜ!
あと、何かの間違いの可能性もあるはず……!
選べ!
ピコン!
「間に合え……ッ!」
ヒュン!
俺はそう呟くとともに本気で走り出した。
「!?
おいクロト!どうしたんだ!」
バッ
本気を出した俺はあっという間にお兄さんの下へたどり着いた。
そして、何かの間違いかもしれない、というかそうであってほしいので声をかける!
「おいそこのお兄さん!ちょっと道を聞きたいんだが!」
と俺が話しかけるとお兄さんは
「!……い、いや、すまねえが今急いでるんだ。他の人に聞いてもらえ坊主。」
と、邪魔をするなと言う様な目で俺を見ながら焦った様に言った。
これは……ツーアウトってところか?
いやでもまだ子供を病院に連れてってるって線も……!
「ン、ンナ……!(た、助けて……!)」
「テメェ声出してんじゃねえ!聞こえちまうだろうが!」
いや、聞こえてますよ。
というかンナ?
お兄さんが抱えているのはボンプだったのか!
ボンプとは"虚狩り"という新エリー都に七人しかいないとても凄い人の一人、サンブリンガーさんによって造られたロボットである。
まるでデフォルメされたウサギの様な、ゆるキャラのような可愛い見た目で、大きさは保育園児や幼稚園児くらい。
高度な学習機能とAIを兼ね備えていて、道案内をはじめ、家事、育児、建設作業、パトロール、戦闘、様々なことをこなせるすごい存在だ。
そして特筆すべきはその言動で、まるで感情があるかのような言動をする。
というか多分普通に感情あると思う。
まあロボットって謳われてるけど、身体が機械でできてるだけの生き物みたいな存在で、単なる万能家事ロボットではなく、家族の一員として捉える人も少なくない。
話が逸れたが、お兄さんとボンプのやり取りを見ればこれは本当に不味い事態である可能性が大だ!
「あ!あっちに治安官が!」
「!?なにっ……!早くここから離れねぇと!」
「ま、嘘なんですけどね。*4だが間抜けは見つかったようだな。」
あぁこいつの動揺
「てめぇこのガキが!図りやがったな!」
しかもこの反応、スリーアウトか……。
「うるせぇ早くそのボンプを離せ」
「ハン!テメェの様なガキが何を言っても怖かねぇよ!」
さっきめっちゃ動揺してたけど……。
まあいい。
こいつが結構単純なタイプなことは分かった!
過去最高レベルに頭が回転している俺はこの後の言動が予想できる!
だから……!
「次にお前は"こうなっちまったらしょうがねぇ!テメェも一緒に来てもらうぜ!"と言う!」
先読みで動揺を誘うぜ!
「何を言ってんだこのクソガキが!テメェも一緒に来て貰うぜ!」
そう言うと犯罪者は抱えていたボンプを投げ捨てて
「ンナ!?(ぐえっ!?)」
俺に襲いかかってきた!
……あれ?
ヤバイヤバイヤバイ!
全然駄目だった!
恥ずかしい!滅茶苦茶!
何が次にお前は(キリッ)だよ!
うがぁぁぁぁあ!
つーかボンプをそんな雑に扱ってるんじゃねぇ!
過去最高の頭の回転(笑)
うがぁぁぁぁあ!
いや待てよ……?
ぶっ飛ばして気絶させれば前後の記憶が消えるのでは?。
どうやらまだ頭は回転を止めてないようだな!*5
「喰らえクソガキ!」
そう言って殴りかかってきた犯罪者の
拳を掴み
「な、なんだと!?」
思いっきりこっちに引き寄せて!
「うおおおおお!?な、なんて力dッ!?」
ドゴォ!
そのまま頭と頭をかち合わせてヘッドバットをぶちかました!
「〜ッ!!」
「!まだ意識があるようだな!」
気絶させなきゃ(使命感)
「い、いやまて、落ち着け!話せば分かる!」
なんか喚いているけど聞く耳持たん!
「うおりゃあああああああ!」
片手を繋いだまま、もう片方の手でこいつの顎を殴り抜ける!
「ま、まt」
シュン!
バタン!
犯罪者は崩れ落ちた。
「ゲームセットだぜ……。」
「ン、ンナ……(す、すごい……)」
「……。」(き、決まったぁ〜!カッコ良すぎるぞ!俺!)
なんて自分に酔っていると
「やっと追いついた!いきなり走り出してどうしたんだよ。」
そう言いながらクレタが走って来た。
俺の周りには白目を剥いて倒れている男と、ボロボロのボンプ。
「いや、本当に何があったんだ?」
フッ!説明しよう!
「実は、カクカクシカジカでな。」
「は?何言ってんだ?」
フッ!
すいませんでした……。
〜転生者説明中〜
俺が説明を終えると、クレタは尊敬の眼差しと共に
「なるほどな……!流石だなクロト!」
と言ってきた。
ふふふ、その尊敬の眼差しが気持ちいい!
いやあ鍛えててよかった!
これはクレタちゃんも俺に首ったけだな!*6
まあそれは置いといてそろそろ治安官に通報しようか。
そう思ってスマホを出したものの、不運なことに充電が切れていた。
Oh……。
しょうがない、クレタに頼もう。
「クレタ、治安局に通報してくれないか?」
「ああ勿論だ。」
〜少女通報中〜
「終わったぞ。
どうやら近くに治安官がいなくて帰宅ラッシュの時間帯だから1時間はかかるらしい。」
まじか……結構長いな。
「そうか、ありがとう。」
「ンナンナ!(ありがとうごさいます!)」
「へへへ、おう。」
「「「……。」」」
暇だ。
一時間はこの場を離れることができないからなあ……。
【初対面のやつには自己紹介が基本だよな!】
【きみ可愛いね!分解していい?】
選択肢ィ!
生きとったんかワレェ!
そのままいなくなっていれば良かったのに。
しかし今回は普通にありがたいやつがあるな。
後者とか誰が選ぶんだよw
Side技術者のお姉さん
「くしゅん!……風邪かな?」
Side out
さあて前者を選びますかね!
ピコン!
「俺の名前は
『クロト・タク』
年齢11歳」
「自宅は
新エリー都☆分街の
住宅地にあり…………
結婚はしていない…………」
俺は唐突に語り始めた。
「「?」」
あれ?なんかこれちょっと違くない?
クレタ達も困惑してるし……。
つーかまだ喋ろうとしてるんだけど!
「肩書は"☆☆☆小学校"の
6年生で毎日遅くとも
夜8時までには帰宅する」
「ンナ……(なるほど……)」
「知ってるぞ。」
「タバコは吸わない
酒は嗜む程度も飲まない」
「そりゃそうだろ」
「ンナンナ(嗜んでたら駄目だと思います)」
ワイトもそう思います
「夜11時には床につき
必ず8時間は睡眠をとるように
している……」
「へぇ、結構夜更かししてんだな(小並感)*7」
「ンナンナンナンナ?(あなた位の年齢ならもっと眠ったほうが良いと思いますよ?)」
いやぁ俺もそうしたいんだけどね……
「寝る前にあたたかい
水を飲み
2時間ほどの鍛錬で体を鍛え上げてから床につくと
ほとんど朝まで
熟睡さ……(気絶)」
「なるほどな……だから11時に寝てんのか。流石だと思うし尊敬するけどよ、それで体調は大丈夫なのか?あたしの前だからって無理して取り繕ってないよな?」
「ンナンナ……!(心配です……!)」
うぅ……!その心配が染みるぜ!
なんか泣きそうになってきた(泣)
「赤ん坊のように
疲労やストレスを
残さずに
朝 目を覚ませるんだ…
学校検診でも
異常なしと
言われたよ」
「なら良いんだけどよ……。
やっぱりお前、毎日死力を尽くして努力してるんだな。
あたしも見習わねぇと……!」
「ンナンナ……!(僕もです……!)」
へへへ、日々の努力を褒められて嬉しい!
いやあ一時期はどうなることかと思ったけど、結果大成功だな!
さて、いい暇つぶしになりそうだし、クレタ達にも自己紹介してもらうぜ!
「クレタ」
「ん?」
ジー(次はお前が自己紹介をするんだ、という視線)
「!」
「あたしの顔に何か付いてるのか?」
_(┐「ε:)_ズコー
全然伝わってなかったわw*8
「ゴホン……お前にも自己紹介をしてほしいんだが。」
「……ああ、そういうことか!
汲み取れなくてごめんな!」
いやまあ、おふざけみたいなもんだから謝られると申し訳ないっていうか……。
流石に謝ろう。
「いや、今のは俺が悪かった。すまない、気にするな。」
「……そうか。(すまねぇな。あたしが不甲斐ないばかりに、お前にそんなにシュンとした顔をさせちまった。
だが安心しろよ!次からはそんな思いさせねえからな!)」
ごめんね!
と謝っていると
「ンナ……(あの……)」
気まずそうにおずおずと、件のボンプが話しかけてきた。
おっと、クレタへの罪悪感ですっかり忘れてたぜ……。
ごめんね!
「ああ、あたしの自己紹介だったな!
あたしの名前はクレタ・ベロボーグ、クロト同級生で友達だ!
えーっと、年齢は11歳で、誕生日は8月10日、あとは……
なあクロトお前、他にどんなこと言ってたっけ?」
と、クレタは聞いてきた
いやぁ別にあんなに詳細に語らなくてもいいでしょ。
選択肢による特例だからね、あれ。
「いや、それ以上はいい。このボンプのことも聞きたいしな。」
あと友達に個人情報を詳細に語らせるのはちょっと……。
「?そうか。分かった。」
「ンナンナ!ンナ!(クレタさん!よろしくお願いします!)」
さてと、ここからが本題だな。
「俺たちの自己紹介は終わった。
次は君の事を聞きたいんだが、大丈夫か?」
「確かに、そういや何にも知らねえな。どうしてあの男に攫われたんだ?」
「ンナ!ンナナ……。(僕の名前は"ガラクタ"です!実は……。)」
え?ガラクタ?
すると、クレタも同じことを思ったようで
「お、おい、ガラクタって……」
と困惑したように口を挟んだ。
「ンナ?ンナンナンナ!(そうですよ?主にそう呼ばれていましたから!)」
「「……。」」
「それっt」バッ
これは……ただの誘拐ってわけじゃないかもしれないな……。
俺は何かを言おうとしていたクレタの口を塞いで、事態の詳細を知るためにガラクタに続きを話すように促した
「ンナ、ンナンナ(それで、こうなった経緯なんですが……)」
「ンナ、ンナンナンナ。ンナンナ(僕は、三カ月前に主が失踪してしまい野良ボンプとして生きていました。
しかし今朝その主と再会して)」
〜〜〜
「へ、へへ!ようやく見つけたぜ!お前こんなところにいたのか!」
「ンナ!ンナンナ!?ンナン……。(主!いきなり居なくなってどうしてたんですか!?そんなにボロボロになって……。)」
「うるせえ!」
ドゴッ
「ンナ!?(うわ!?)」
〜〜〜
「ンナンナ。ンナンナンナ。(三ヶ月振りに殴られました。
そして主がいなくなっていた理由と僕を探した理由を聞かされました。
曰く、"ヤバいところから金を借りてしまい返済のあてがなかったので夜逃げをした。僕を探していたのはその借金の溜まった利息分払うために売るためだ"、と。
そしてそうこうしているうちに、そこに倒れている人がやって来て)」
〜〜〜
「おい!このボロボロのボンプがテメェの"アテ"ってやつか?」
「は、はい!そうです!」
「ンナ!ンナ!(主!やめて!)」
「クソ!抵抗するんじゃねえ!俺がボコされるだろうが!」
ドゴッ!
「ンナン!?(うぎゃあ!?)」
「チッ!あんまり傷つけるんじゃねぇ!価値が下がるだろうが!」
「ひっ!す、すいません!」
「……まあいい。そいつはもらっていくぜ。」
「はい!勿論です!どうぞ!」
「ンナ!ンナ!(主!主!)」
「へへへ!じゃあな!お前はいいサンドバッグだったぞ!」
「ふん!まあこんなボンプでも解体して新品と偽って売ればそこそこの金になるな。」
〜〜〜
「ンナ、ンナンナ。(その後、クロトさんに助けてもらいました。)」
「「……。」」
俺とクレタは絶句していた。
正直、ここまでひどい事情があるなんて思わなかった。
もちろんボンプはロボットであり、その扱いは所有者に委ねられるものはである。
あるんだが。
流石にあんまりだろうが……!!!
クレタも同じ思いのようで
怒りを露わにした。
「なんだよそれ……!いくらボンプの扱いが持ち主の勝手だからって限度があるだろ!!!」
「ンナ……。(クレタさん……。)」
そして
「……なぁお前、あたしのところに来ないか?」
クレタは緊張した面持ちでそう提案した
だがボンプは
「ンナ!?ンナンナ!ンナンナンナ?(え!?そんなの申し訳ないですよ!メンテナンス代と修繕代、エネルギー代とか、色々あるんですよ?)」
とハッキリと拒否しているわけではないが、申し訳なさそうに、遠回しに遠慮しようとしている感じに返した。
まあ、確かにそういう反応になるか。
初対面の子供に養ってやるって言われても、申し訳なさとか色々あるだろうし。
しかしクレタはそんな懸念を見抜いたのか続けて言った
「あたしは白祇重工って会社の次期社長、まあ実質社長で、お前を雇うことができる。もちろん給料も出すぞ。」
「ンナ……ンナンナ。ンナンナ……ンナンナ!ンナ……(白祇重工……聞いたことがあります。なんでも不祥事があったとか……でもクレタさんに雇ってもらえるなら嬉しいです!嬉しいんですが……)」
ですが?
「何か気に入らねぇか?」
ガラクタは遠慮がちに
「ンナンナ?(僕がこんなに幸せになっていいんでしょうか?)」
と言った。
「……?」
クレタはその感覚が理解できなかったようだが、俺にはその感覚に覚えがあった。
旧都陥落を経て、家族を失った人達が大勢いるのに、俺は変わらずに両親と共に過ごせているからな。
少し状況は違うが、他人が不幸な状況にある中で自分だけが幸せになるのはなんだか罪悪感というか、違和感というか、申し訳なさというか、よくわからない感覚があるんだよな。
と思っていたが、このボンプの発言の真意はは俺とはまた別の、とてもクレタを思ったものだった。
「ンナンナンナ?(僕に同情して受け入れるってことは、クレタさんは僕みたいなボンプがいたら僕と同じように雇ったりするんでしょうか?)」
「あ、ああ。勿論だ!」
「ンナ……ンナナ。(だったら……僕は幸せにならない方が良いと思います。)」
……なんで?
流石の俺も予想外だった。
何がいけないんだ?
「え?なんでだよ。」
クレタも困惑した様に尋ねた。
するとガラクタは
「ンナンナ、ンナンナンナナ。(僕と同じような目に遭っているボンプも、僕より酷い目に遭っているボンプもこの目で沢山見てきました。)」
ああ、なるほど
つまりは……
「それは由々しき事態だが……。」
「ンナ、ンナンナンナ!(そう、沢山いるんですよ。
そして一度僕を受け入れてしまえば、クレタさんは優しいので際限なく彼らを受け入れていくことになります。十体、五十体、百体、千体と……それは確実にあなたの負担になるでしょうし、もしそれに耐えられず辞めてしまった場合、救われなかった子達から誹りを受けます。そんな光景を見たことがあります。僕は、あなたにそんな目にあってほしくない!)」
ってことで
「……い、いやでもウチは建設会社だからな!人手が増えるのは嬉しい限りだぞ!」
クレタはその主張に対してたどたどしく反論するが
違うんだクレタ……
それだけじゃあないんだよ……。
「ンナンナ。ンナ、ンナ。(それだけじゃありません。クレタさんならきっと、会社を大きくしていくと思います。)」
「お、おう、まあな。」
クレタは少し照れたようにそう返した。
まあ、嬉しいわな。
かく言う俺も友達が褒められて鼻が高いが、素直に喜べなかった。
ガラクタは更に続けた
「ンナンナンナンナ。(そして大きくなった会社に入るために努力する人も出てくるでしょう。でも僕はそんな人達に対して申し訳ないです。確かに僕の境遇は同情的かもしれませんが、それだけです。努力する子達の中には僕のようなボンプもいるかもしれません。それなのに何にもしていない僕が働ける、それは不公平だと思います。それに対して会社に悪印象を持つ人たちが出てくるでしょうし。)」
そこなんだよな……。
「……それは……その……。」
クレタは何も言えなかった。
「ンナ、ンナ、ンナンn……(なので、あなたの提案はとても嬉しいのですが、僕は辞退させていただきm)」
【グレースさん最高!グレースさん最高!さあ!クレタもグレースさん最高と叫びなさい!グレースさん最高イェイ!イェイ!】
【"じゃあ俺がここで解体して楽にしてやるよ"とこのボンプをバラバラにしたあとに言う】
え、まじで?このタイミングで?
選択肢さんよ……
頭おかしんじゃねえの?お前。(ドン引き)
両方ともこんな空気の中でできることじゃないだろ常識的に考えて。
前から思ってたけどやっぱりイカれてるぜ……お前。
で、気を取り直して選択肢を比べてみると……
【グレースさん最高!グレースさん最高!さあ!クレタもグレースさん最高と叫びなさい!グレースさん最高イェイ!イェイ!】
【"じゃあ俺がここで解体して楽にしてやるよ"とこのボンプをバラバラにしたあとに言う】
はぁ……。
これって前者しかないよな……。
中々イカれた言動だが、後者の方は超々イカれた言動だし。
なによりガラクタを解体してるのはエグい。
そんなこと絶対にしたくない!!!
チッ!覚悟、決めますかね……。
ピコン!
「ンナンn(僕は辞退させていただきm)」
「グレースさん最高!!!グレースさん最高!!!さあ!クレタもグレースさん最高と叫びなさい!グレースさん最高イェイ!イェイ!」
「「!?」」
ああ、やっちまった……(泣)。
「ク、クロト?大丈夫か?」
「ン、ンナンナンナナ……!?(も、もしかしてさっきあの人と頭をぶつけたから……!?」
うぅ、その心配が染みるぜ(泣)。
Side技術者のお姉さん
「くしゅん!……今日は早めに寝たほうがいいようだね。」
Side out
「!(いや待て!こいつ、また悲しそうな顔をしている……。あの時と同じだ!ということはあたしに何か伝えたいことが、気づいて欲しいことがあるんだな!)」
ん?なんだかクレタが難しい顔をしているな。
無理もないか。
考え込んでいる時に突然こんな奇行に走られたんだから。
ごめんな(泣)。*9
「……そういうことか!」
へ?
「ンナ?(はい?)」
クレタは何かに気が付いたかのように言う
「どうして突然姉貴の事を言ったのか、分かったぜ!クロト!やっぱりお前は最高だ!」
クソッ!何が何だか分からねぇ!
けど褒められるのは嬉しいからこのままいこうか!
「フッ!気にするな……!」
「ンナ?ンナ?(え?え?)」
「クロトが言いたかったのは、
"あたしだけで決めんな"って事だ。」
「ン、ンナ?(な、なるほど?」
フッ!
どういうことかな?
「あたしは確かに次期社長でかなりの決定権を持ってる。けどまだまだ未熟な小学生だ。だからお前の処遇はあたしの一存じゃあ判断しちゃいけねぇ!
お前と、姉貴達、そしてあたしを交えて議論すべきだったんだ!」
「ン、ンナ……!ンナナ……。ンナンナ(な、なるほど……!確かにそうかもしれませんね……。一生を左右する問題を僕たちだけで終わらせるのは些か早計が過ぎる。)」
ま、言われてみればそうだな。
まだまだ子供だし、大人の意見も聞くに越したことはないわな。
「姉貴の存在を持ち上げたのは、そんな頼りになる最高の存在が身近にいるんだから"頼れ"ってことだったんだ。
すげぇよ、クロトは……。」
なるほど!そういうことだったのか!俺!
そういうことにしておこうか!
別に間違ではないだろうし!
「フッ!気にするな!!」
「ン、ンナ……!!ンナナ!ンナ!(ク、クロトさん……!!力だけじゃなくて知恵もあるなんて!凄い!)」
HAHAHA!
そう!凄いぜ!俺は!
くぅ~!たまにはやるじゃねえか選択肢さん!
いや、あの選択をした俺が凄いのか!
HAHAHA!
だがクレタたちはまだ俺を褒める!
「ウェイ!ウェイ!クロト!凄いぞクロト!」
「ンナ!ンナ!ンナナ!ンナンナンナナ!(凄い!凄い!クロトさん!とってもすっごいクロトさん!)」
ふふふ!
「なんてったって力もあるし頭も回る!」
「ンナ!ンナ!(スゴイ!スゴイ!)」
い、いやぁそれほどでも……。
「しかも滅茶苦茶優しい!!」
「ンナ!ンナナ!(本当に!優しいです!)」
あ、あはは……。
「毎日鍛錬を怠らない努力家で!いつもあたしと遊んでくれる!」
「ンナ!ンナ!(カッコイイ!友達思い!)」
すいません!調子乗ってたけど居た堪れないです……!
違うんだクレタ!ガラクタ!
俺はただの選択肢に振り回されてる一般人なんだ!
お前らが思っているような男じゃないんだ……!
「フゥ!フゥ!クロト!」
「ンナ!ンナ!ンナナ!(ヘイ!ヘイ!クロトさん!」
うわああああああああ!!
〜十分後〜
「ま、クロトを褒めるのはこれくらいにしとくか。」
「ンナンナ(そうですね)」
(´・ω:;.:...
( ゚д゚)ハッ!
あ、危ない危ない……。
危うく罪悪感で塵になるところだった……。
「ははは!照れ屋さんだなクロトは!
ま、それはそれとして、まあ、あれだよ。」
あれ?なんのことだ?
「ンナ?(あれって?)」
「お前の発言にもハッとさせられたよ。あたしもまだまだ未熟だな……。」
クレタ……。
「ンナナ……。(クレタさん……。)」
「でも、それを踏まえた上で、あたしはお前を雇いたいと思ってる。ここで手を引いたら、失敗するよりつれぇと思う……。助けられなかった悲しみってもんがあるのさ。
ま!これからどう転ぶかは分からねんだがな!」
クレタ!
「ンナナ!ンナ!ンナナ!(クレタさん!いや!クレタ社長!)」
まあ何にせよ、これで一件落着だな!ヨシ!
「オイオイオイ……到着が遅えと思ったら。なんだ?ガキにやられたのか?
なっさけねぇ奴だなぁおい!」
「「「ギャハハハハ!」」」
随分とガラの悪い治安官さん達だなー(泣)*10
振り向くとそこには、倒れている犯罪者と同じ格好をした仮面を被った人達が沢山いた。
前衛的なファッションっすね……。
【ちょうどいい!腕試しに単身殴り込むか!】
【こんな挟み撃ちにされそうな狭い場所で戦えるか!クレタ達と一緒に逃げるぞ!俺は!】
後者ァ!!
ピコン!
「あ!あっちに治安官さんだ!」
「「「「な、なにィ!?」」」」
そして
俺はクレタの右手を掴み
ギュッ!
「……ふぇ?」
ガラクタを抱きかかえて
ダキッ!
「ン、ンナナ?……ンナ!(ク、クロトさん?……うわ!)」
「逃げるぞ!」
走り出した!
「……ハッ!クソガキが!誰もいねぇじゃねえか!って、いねえ!
逃げやがったな!追え!追え!」
そろいもそろって同じ嘘に引っかかりやがったなヴァカめ!
そしてとうとう、俺たちは空き地に追い詰められた。
「はあ、はあ、随分と逃げ足の速いガキだ!だが!もう逃げられねぇぜ?」
「くッ!」
〜〜そして冒頭に戻る〜〜
……長え!
ver1.6良かったですね。アンビーの過去は泣きそうになりました。
あとネタバレになるんですがヒューゴ君はペルソナ使いです。
それに主人公たちのパエトーンという名前の要素をちょくちょく回収してきてますね。
パエトーン君は原作(ギリシア神話)だと太陽暴走させて撃ち抜かれて死んでたけど、それになぞらえた展開がありそう。