さあて、啖呵を切ったはいいものの、こっからどう動くかね……。
敵の数は三十人、対してこちらは子供二人とボンプ一体で、そのボンプは戦闘モジュールを積んでいない非戦闘員だ。
これだけで考えると絶望的な状況だが、奴らの実力はその立ち振舞いから察するに俺が二発で倒した男と同じくらいだ。
つまり単純計算30×2で六十回拳を振るえば勝てる!
さらにクレタと共闘することを考えると、これまた単純計算で30×2÷2で、三十回拳を振るえば勝てる!
俺は一秒間に五回拳を振るえるから、大体6秒でケリがつくな!
つく訳ないだろうが!
クソッ!
現実問題数ってのは戦いにおいてとても重要だ。というか大体のことにおいて重要だ。
多数が相手だと俺が一人を倒している間に別のところから攻撃される、それを警戒する、普通より疲労が溜まり、なんやかんやあって死ぬ。
もう終わりだねこの世界(ガチ)
どうする?あの数相手に受けは敗北を意味する……!
だが攻めた結果、その隙にガラクタが攫われたら本末転倒だ!
何か……何かないか?*1
と膠着状態の中考え込んでいると
突然クレタが話しかけてきた
「おい、クロト。"ハリケーン"いくぞ」
!
なるほどその手があったか!
……けど
「いいのか?あれはクレタへの負担がデカいぞ?」
そんな俺の懸念を、クレタは笑って一蹴した
「ハッ!心配してくれるのは嬉しいが、あたしは大丈夫だ。なんてったって次期社長だし、お前の友達だからな!」
おお〜!
泣けるぜ……(嬉)
そこまで言ってくれるなんてな。
フフフ!じゃあいっちょ実行しましょうか!
「ヨシ!今からぶっ飛ばしてやるぜ!待っててくれてありがとな犯罪者ども!」
俺がお礼を言うと奴らは
「「「いいってことよ!」」」
と、気のいい返事をしてくれた
お、結構いい奴らなのかn「「「お前らのような生意気なガキが二人、小せえ脳みそを必死で動かしてよぉ?俺たちに勝とうと無駄に足掻いて、呆気なくボコボコにされる様を見るのが大好きだからな!」」」
俺の思い違いだったみたいだ。
……急に饒舌になりやがって。
みんな揃ってるのは何なんだ?
人それぞれの価値観はあるが、少なくとも俺達にとってはカス共しかいないようだな。
まあ気を取り直して
「……いくぞクレタ!」
「おう!」
そう言うと俺たちはお互いに向かい合って相手の手を指を絡めて繋ぎ、力をギュッと込めて握った。所謂恋人繋ぎみたいなもんだ。
「んっ……クロトの*2おっきくて温かいな……けど少し*3痛いぜ……。」
「……すまない。」
「へへ、気にするな、ってな。」
クレタは俺を安心させるようにそう言った。
「ん……もう、いいぞ?動いてくれ……。」
うおおおおおおおおお!!!
エッッッッッ!!!
い、いや、落ち着け!落ち着け俺!
こここ、これはただ手を繋いでいるだけだ!
やましいことは一切ない!
「「「さ、最近の小学生はこんなに進んでんのか……!?クソッ!」」」
その光景を見て、奴らは項垂れていた
「ン、ンナ……!(は、はわわ……!)」
カァーッ///*4
ガラクタは恥ずかしそうに顔を短い手で覆っているが、ガン見していた。
なにやってんだお前らはよぉ!?
子供同士が手を繋いでるだけだぞ!なにと勘違いしてるんだ!*5
お前ら意外とムッツリさんだったのか!?もっと危機感を持ちなさい!厳しいぞ!
まったく!
まともなのは俺だけか!?
「じゃあクレタ、動くぞ……!」
(デュ、デュフフフ、デュフフフフフフwンドゥフwwンドゥフwwンドゥフwwフカヌポゥwwwコゥーwwwクレタ殿との共同作業!これはもう実質結婚と言っても過言では無いのでは?*6)
「ああ!やれ!」
そして俺は自分のクレタと手を繋いだまま、両足を軸にしてその場で回り始めた。
グワン
グワン
グワン
グワングワン
グワングワングワン!
どんどん加速していき、クレタは遠心力で体が浮かんでいく!
グワングワングワングワン!
グワングワンシュウシュウシュウ!
「「「な、なんなんだあれは!?」」」
「ンナ!?(ええ!?)」
そして俺達は竜巻になった。*7
なっとるやろがい!*8
そしてこの状態で奴らに突っ込むぜ!
うおおお!!
「「「う あ あ あ あ」」」
〜三十秒後〜
「「ハァ……!ハァ……!」」
ハリケーンを解除して辺りを見回すと、犯罪者たちが力なく倒れていた。
「やったぞクロト!」
と言いながら、クレタは拳を俺に差し出した
「ああ!俺たちの勝利だ!」
コツン!
俺もそれに応えて、クレタの拳に俺の拳を合わせた。
ハッキリ言って俺たちは油断していた。だから気がつかなかったんだ。
倒れているのが二十九人で、一人足りなかったことに。
「何終わらせた気になってんだよ!クソガキ共!!」
「「!?」」
「ンナ……!?(うわあ!?)」
その声に振り返ると、そこにはガラクタを抱えた犯罪者の生き残りがいた!
グレタは悔しそうに言う
「クソ!まだ生き残りがいやがったか!」
それ、なんかあっち側のセリフっぽいな……。というか生き残りって、別に倒れてる奴らも死んでないからね?
いやそんなこと言ってる場合じゃない!
何とかしなきゃ!でもどうやって!?
「ヒヒヒ!お前らそこから一歩でも動いてみろ!その瞬間、コイツをぶっ壊す!!」
うるせぇ!優位になったくらいで調子に乗りやがって!
ああ!もう!モタモタしてると選択肢も来ちまうぞ絶対!アレは性格が悪いし!そうなればもっと面倒なことになるぞ!早くなんとかしなきゃ……
選択肢?
そうだ選択肢だ!
相手の動揺を誘ってからの不意打ち!それができるのはあの手しかない!
だが問題はこれをクレタが察してくれるかどうかなんだが……
ジー
「?」(クロトがあたしをみている……まさか、何か手があるってことを視線で伝えようとしているのか?
なる程な。フッ……お前は信じてくれるんだな?一度お前の意思を汲み取れなかったあたしのことを。
ああ、その信頼は間違ってない!
間違いなんかにするものか!あたしは誓ったんだ!お前に意思を察して!応えてみせると!*9うおおおお!
読み取れ!あたし!)
ジー(お……が……釘……から……その……クレタ……背後……ガラク……れ!)
「……!(もっと気合入れろおおお!)」
ジー(俺が相手の視線を釘付けにするから、その隙にクレタは相手の背後をとってガラクタを助けてくれ!)
「……!(伝わったぜ!その思い!)」
コクン
クレタは何かを察したように頷いた。
信じるぞ!クレタ!
そして俺は作戦を実行し始めた
「俺の名前は
『シブイマル・タロウ』
年齢21歳」
「自宅は
夢の国にあり…………
結婚はしていない…………」
「!?てめぇ、何を「肩書は"○*・小学校"の
6年生で毎日遅くとも
夜8時までには帰宅する」
まあ聞いてな!
「おい!ふざけてんのk「タバコは吸わない
酒は嗜む程度も飲まない」
「そりゃそうだろうが!ガキが!いい子ちゃんぶりやがって!」
ふん!ノッてきたな?
「夜11時には床につき
必ず8時間は睡眠をとるように
している……」
「あん!?んなもん普通だろうが!何自慢気に言ってんだクソガキが!」
どうやら子供と大人の違いを考慮できない、相手の立場になって考える共感性に欠ける人間のようだな。ま、だからこんなあくどい事やってんのか。
「寝る前にあたたかい
水を飲み
2時間ほどの鍛錬で体を鍛え上げてから床につくと
ほとんど朝まで
熟睡さ……(気絶)」
「チッ!良い子ちゃんアピールしたって無駄なんだよクソガキが!そんなもんが評価されて優遇されるのは学校だけなんだよ!残念だったな!現実を知れよクソガキが!」
あんた罵倒のレパートリーなさすぎるだろ……。ほぼほぼクソガキしか言ってないし。
まあ、すでにクレタはお前の背後に陣取ってるんだけどな。
ダメ押しだぜ!!
「次にお前は、"ああ!?クソガキが!いきなり何言ってんだ殺すぞ!"と言う!」
「ああ!?クソガキが!いきなり何言ってんだ殺すぞ!……ハッ!?」
今だクレタ!
「!(おう!)」
クレタは俺の視線に頷くと後ろから奴の玉を思いっきり蹴り上げた!
グチャ!
「〜〜〜!?」
バタン
男は泡を吹いて倒れた。
こ、こっえぇぇぇぇぇ……!!!
セリフ予測が決まった喜びなんか比にならない、圧倒的恐怖を感じた。
クレタだけは怒らせないようにしよう。
そう心に誓った。
あ、治安官さん呼ばなきゃ
〜10分後〜
治安官さんが到着して、慌てて駆け寄ってきた。
「き、君たち!大丈夫だったかい!?ケガは!?何かされたりしてないかな!?」
とても心配してくれている。
「い、いえ、大丈夫ですよ?」
「ああ、大丈夫だ。」
「ンナ!(大丈夫です!)」
……なんか落差が凄いな。
さっきまで接していた人たちとは大違いだ。人類の神秘を感じるぜ。
あとガラクタ、お前は全然大丈夫じゃないだろ。
「そうか……そこのボンプは大丈夫じゃない気もするが……。ゴホン、事件の経緯について聞きたいところだけど疲れているだろうし、なにより保護者の方が心配するだろう。明日にしようか。」
ああ、その気遣いが心に染みるねぇ。
"親"じゃなくて"保護者"って言うところとか特に。
じゃあお言葉に甘えたいんだが、クレタ達はどうだろうか?
「俺としてはありがたいんですが……クレタ、ガラクタ、お前達は?」
「あたしもそれでいいぞ。」
「ンナ。ンナナ。(僕は治安官さんに付いていきます。お二人の聴取が短くなると良いんですが。)」
ガラクタ!お前ってやつは……!(泣)
お前が一番ボロボロで被害者なのにこっちを気づかってくれるなんて……
ありがとう(泣)。
と俺が感激していると
クレタがガラクタについて少し緊張したように治安官さんに尋ねた。
「今後こいつの扱いはどうなるんですか?」
その質問に対して、治安官さんは安心させるように微笑んで
「うーん、まだ事件の詳細が分からないから何とも言えないんだけど、廃棄とかそんなことにはならないよ。」
と返し
「そっか……よかった……。」
それを聞いたクレタは、胸を撫で下ろして安堵した。
「あ、あと保護者の方々に連絡するために住所を教えてほしいんだけど。」
ああ、確かにそうだな。
"はい、勿論ですよ"と答えようとしたところ
【いやあ二度あることは三度あるって言いますからね!三度目の自己紹介、行きましょうか!】
【ボロン】
馬鹿がよぉ!!!
なんで今になって登場するんだよテメェ!
というかボロンってなんだよ!何をボロンするんだ!?*10
治安官さんの前だぞ!?クレタ達のまえだぞ!?アウトだろうが!!
うぅ……!(泣)
「俺の名前は『クロト・タク』「へ?」
年齢11歳……(泣)」
そんなこんなで
「ンナナ!ンナナ!ンナ!!!(クロトさん!クレタ社長!ありがとうございました!!!)」
「ああ……また会おう……!(泣)*11」
「おう!元気でな!お前の引き取りについて、姉貴たちといい方法を考えておくからな!」
ふぅ、なんとか一段落ついたな!
そんな余韻に浸っていると
クレタが声をかけてきた。
「クロト!帰ろうぜ!」
もちろんだよ。
そう思いながら
「ああ、そうだな。帰ろう。」
と返して、俺たちは帰路についた。
〜
「ちょっと遅くなっちまったから、姉貴たちも心配してるかもしれねぇな。」
「確かに……。なんか気まずいな。」
〜
そして俺は我が家に帰ってきた。
「た、ただいまー」ガチャ
んー、やっぱりなんか気まずいなぁ
「遅くなってごめn「「クロト!!!大丈夫だった(か)!?」」
俺が帰ってくると父さんと母さんは慌てて俺に駆け寄ってきた。
母さんは少し不格好にたどたどしく、
父さんはそんな母さんを支えながら。
旧都陥落で母さんは足を悪くしてしまったから、走るのが困難なのに……。
そんなに心配させてしまったのか。
「治安官さんから連絡があったぞ!犯罪に巻き込まれたって!」
「怪我はない?怖かったでしょう?ごめんねそばにいてあげられなくて……!」
うぅ、と、とにかく安心させなければ!
「だ、大丈夫だよ!父さん!母さん!俺が鍛えてるの知ってるでしょ?怪我一つないよ!ほら!」
俺がそう言っても駄目だった。
二人にとって鍛えていようが関係ないらしい。
「そうだな……お前は凄く鍛えてる。父さんはお前のそういうところを誇りに思ってる。けど、それがなんだ。お前が犯罪に巻き込まれていい理由になるものか。それに……」
父さんの言葉に母さんが続いた
「それに、あなたはまだ子供なのよ?いいえ、あなたが大人になっていたとしても、危険に巻き込まれるのなんて心配でたまらないわ。」
大きな愛だな……。
ああ、大好きな愛だ。
結局二人は俺を心配したままで、久しぶりに三人で一緒の部屋で寝た。
その日の夜、俺の目は少し腫れていて、二人のパジャマの裾は濡れていた。
温かかった。
その日からしばらくの間、一緒に寝るようになった。
尚クレタ宅でも似たようなことがあった模様。