【ニコ達を気絶させてトリシノ一人に戦わせる】
【エーテリアスをボコボコにしてトリシノにトドメを譲ろう!】
なるほどな……。
さあLets thinking time!(ネイティブ)だ!
まず前者は論外!
明らかに戦えないトリシノを一人で戦わせるなんて駄目だろ!
それにニコ達を気絶させるのだって、ニコ一人なら不意打ちでいけるかもしれないが、アンビーさんやビリーさんは別だ。ニコを落とした時点で即座にボコボコにされるだろう。
なんか二人とも立ち振る舞いがただ者じゃない感じがするんだよな……。
それに人を襲うとかそういうのは可哀想だし心が痛むので嫌だ!
まあそういうわけで、消去法的に
【エーテリアスをボコボコにしてトリシノにトドメを譲ろう!】
を選ぶことになるわけだが……。
うーむ、いくら過去に決着をつけさせるためとはいえ、こんな子供にエーテリアスを殺らせるのはちょっと……ねぇ?
甘い考えだと分かってはいるが、エーテリアスだって一つの命?みたいなもんだしそれに、やつらが元々人間だったかもしれないと思うと……。奴らか例外なく人間を殺しにくる化け物といっても、ねぇ? 一度死を経験したものとしてはあんまり……。
というかそもそもの話、まだ成熟していなくて、しかも自暴自棄になってる子供に、何かの命を奪う決断をさせるべきではないと思うんだよな。
うーむ、どうしたものか……。
ポクポクポクチーン
……! 待てよ? "ポクポクポク"で"チーン"が一つ付随するってことは、二倍の"ポクポクポクポクポクポク"にしたら"チーン"の数も二倍、つまり青青になる……?*1
あと書かれているのはトドメを譲るってだけで、別に絶対に殺させるわけではないんじゃないか?
つまりこの選択肢を選んで、俺が瀕死のエーテリアスをトリシノに譲った時に、なんとか説得出来ればやめさせられるはずだよな?
いやまあ、こんな事をするのは余計なお世話かもしれないが、それでもやらなきゃ納得できないからな。
このままトリシノがエーテリアスを殺したら、絶対に良くないものが残るだろう。命を奪うことを止めたいわけじゃない。せめて自暴自棄になっていない、しっかりとした意思のもとで決断をして欲しいんだ。わけが分からなくなっている間に事を終わらせても、きっと心は晴れないからさ。
何かの命を奪っても何の意味もないなんてのは一度死んだ身としては想像するだけで辛くて悲しい。
限りある命というものを
ま、他の生き物の命を奪うなんて、奪われる側からすればどんな理由があろうと理不尽にしか思えないけどさ。納得は全てにおいて優先するぜ!*2
後必要なのは
トリシノの、一人の人間の将来を大きく変えようとしているという事実と、他者の、エーテリアスの命を自分の都合で左右するという事実を受け止めて、それでも自分の納得のために選択する
……なんか、改めて整理すると結構傲慢なことやろうとしてるな、俺。
あと覚悟と書いてエゴって読むのは流石にイカしてる。*3
まあそれは置いといて……
やってやろうじゃねえかこの野郎!
……ピコン!
バッ! ダッ!
「ちょっ!?」
選択した瞬間、俺の身体はニコの手を振り払って三体のエーテリアス達に向かっていった!
フッ!
いきなり走り出すなんて聞いてない。
クロトSide out
「僕の話のせいで空気を重くしてしまったと思ったら三体のエーテリアス達が現れた、と思ったら、お兄さんがいきなり奴らに向かって走り出した……
これは一体何が起きてるんでしょうか?」*4
トリシノが混乱している間にも、事態は動いていく*5
「〜〜〜!」
クロトの進行方向にいた、左腕が剣の形の灰色で右腕は肘から先がない
「見切った!」
クロトは、振り下ろした刃を左足を軸にして身体を後ろに捻ることで躱し
ガキン!
「!?」
地面に当たった瞬間の
「オラァ!」ドゴン!
「〜!?」
「白刃取りだぜ……地に足つけるタイプのな!」(お、これは結構うまいこと言えたんじゃないか?)
「……今のは……どういう意味でしょうか?」
「俺には全然分かんなかったぜ! アンビーはどうだ?」
「むぅ、私にもよく分からないわ。本来は振り下ろされる刃を両手で挟んで捕らえる"白刃取り"という技を、足と地面を使って敵の刃を捕らえたという出来事から連想した発言と思われるけど……"地に足をつけるなんてタイプ"なんてわざわざ言う意味が分からない。一体どういうことなの?」
「謎だね……」ザザー
「俺はカッケェと思うぜ!」
「うーん、どういうことなんだろう?」
「あんた達、そこまでにしといてやりなさい……」
蔓延っていたのは困惑と同情
世知辛い世の中であった
「ヨシ! この調子で行くぜ!」
自身のユーモア的言動を事細かに言語化され、何が良いのかよく分からないと評価されていることなど戦闘に集中して聞こえていないクロトは、地面にめり込んだ刃を抜こうと必死で踏ん張っているティルヴィングの右腕を掴み
「サブミッションこそ王の技ァ!」
と、どこぞの魔法少女のようなことを叫びながら、そのまま左からティルヴィングの背後に回り込んで、掴んでいる右手が地面と水平になるように持ち上げた
そして
「痛かったら左手上げてくださいね〜」
と言って思いっきり後ろに引っ張った
ゴキリ!
「〜〜〜!?!?」
ティルヴィングの右肩が呆気なく外れた
「ヨシ! 左手を上げてないってことは痛くないってことだな!(ガバ推理)
それじゃあ関節を外した意味がないじゃねぇか! 今からお前には"痛み"を知ってもらうぞ覚悟しろ(豹変)」
「いや、地面にめり込んでるから上がんないでしょ……」
そんなツッコミは戦闘に集中しているクロトには届かない
「流石ニコ! IQ100の発想だな!」
そんなことはなかった
「まぁね! ……って、それ一般的な値じゃないの!」
「駄目なのか? えいっ! えいっ!」
ゴキリ! ゴキリ!
「〜〜〜!!! 〜〜〜!!!」
「いや、悪いことではないわね……」
クロトは会話をしながらもティルヴィングの右肩の関節を直し、もう一度外してしまった。
「う、うわぁ……」
「結構えげつない戦い方ね……」
「見てるこっちも痛いね……」ザザー
あまりに凄惨な光景に周りがドン引きしている中、クロトは掴んでいた右腕を離す
するとティルヴィングは、力無く膝から崩れ落ちて上半身から地面に倒れ込み、
イモムシのような体勢になった
そして
「クロルドはガラ空きの背中を見ると、つい踏んじゃうんだ☆(カスの教祖)オラァ〜☆!」
バキッ!
「ッ〜〜〜!?」
背骨が折れる音と共に、ティルヴィングは動かなくなった
これは約五秒程の出来事である
「す、凄い……! これが
「い、今どきの小学校ってあんなことができるような教育をしてるの?」
「いや、いくらH.A.N.Dと調査協会が開校に携わっていたとしても、卒業までの六年間で子供にあんな芸当をさせる教育は不可能よ」
「……確かに、コンクリートの地面に刃をめり込ませたり、一撃でエーテリアスの骨を折るような驚異的な身体能力を、こんな子供が手に入れるのは……」ザザー
「いいえ、そこじゃないわ」
「どういうことだい?」ザザー
「確かにあの子の身体能力は驚異的よ。だけどもっと凄いのはその技術。刃が最も強く地面に叩きつけられたタイミングで踏みつけることで深くめり込ませ、エーテリアスの身体の構造を利用して関節を外していたわ。」
「なるほど……」ザザー
「そして極めつけはあの背中への一撃」
「あれがかい?普通に思いっきり踏みつけたように見えたけれど……」ザザー
「いいえ違うわ。あのエーテリアスの姿勢……下半身は膝から下にかけて、上半身は胸部から頭が地面に接していたわ。その間の背中は地面から浮いていたでしょう?」
「うん? 確かにそうだね」
「しかも痛みを和らげるために全身に力が入っていた。その状態で背中に大きな衝撃を与えると、その力が地面に逃げずに直に背骨に伝わるし、力が入っていたことで背中が固定されて、更に衝撃が伝わりやすくなるわ」
「……! まさか!?」ザザー
「気付いたようね。流石はもう一人のプロキシ先生。そう、そのまさかよ。あの子の凄いところは……」
「一連の攻撃が、全て次の行動に繋がっていたのよ」
「まずエーテリアスの左腕を地面に固定、主要な攻撃手段を封じ、関節技を決めやすくしてそしてそのまま決めた。エーテリアスはその痛みに耐えきれずにイモムシのように崩れ落ち、容易く背骨を折られる体勢になった……。言葉にすればたったこれだけの動作ではあるけれど、それはつまり……」
「それだけ上手く状況を進める能力があるってことだね?」ザザー
「その通り。全部最初から考えてやったのか、それとも行動した瞬間に次の最適解を選ぶことを繰り返していったら結果的にああなったのか……。どちらにしろそんな能力を培うには、最低でも小学校六年間のカリキュラムを全て戦闘に関するものにする必要があるわね」
「成る程、普通の子供じゃあまず耐えられなそうだね。君が不可能と評したのも分かるよ」ザザー
「いいえ、そういう意味で不可能と言ったわけじゃないわ」
「じゃあどういう意味で?」ザザー
「だって小学校のカリキュラムが全て訓練とそれに付随する座学だなんてそんなの
多分絶対に何らかの法律に違反しているでしょう?」
「そうかな……そうかも」ザザー
「……」(皆んなあいつの言動については何も言わないのね……。クロルドってなんなの?)
約一名がまるで○ックスのリプ欄でよく見るシベリアンハスキーの様になっているのはさておき*7
残る二体
頭からエーテル弾を飛ばす、両腕がない人形エーテリアス、"アルペカ"と、鎌を持った人形エーテリアス、"サテュロス"は、残酷解体ショーの間に既に攻撃を仕掛けていた
アルペカはクロトから三十m程の距離を取り、サテュロスが鎌を地面と水平になるようにして左に構えながら駆け出すのと同時にエーテル弾を射出する
そしてサテュロスは自身の鎌の間合いにクロトを捉えたと判断し、思いっきり鎌を横に振った
「〜!」
エーテル弾と凶器
それらはほぼ同じタイミングでクロトに当たりそうになるが
「ッ!」
クロトはサテュロスのフルスイングをしゃがんで躱し
「ふっ!」ドン!
「!?」
立ち上がる勢いを利用して体当たりを食らわせ、飛んでくるエーテル弾の方へ押し出した
すると
ゴッ!
「〜〜〜ッ!!」
「!?」
とエーテル弾がサテュロスに直撃した
「おお」(上手いわね……。フルスイングが空振った結果、体幹が崩れていたサテュロスは、大人と子供程の体格差があっても
サテュロスが悶えている隙に、クロトは鎌の柄を両手で持ち、奪い取ろうと力を込めるが、サテュロスも負けじと必死に武器を握りしめて踏ん張る
が
「なんちゃって☆」
「!?」
クロトはそう言って武器を手放し、突然自身を支える力がなくなったサテュロスは、勢いよく背中から倒れ込んだ
そしてクロトは仰向けになったサテュロスの両足を掴み
「ぶっ飛べよ……絶望の彼方までな!(キメ*8顔)」
意味不明な言葉を叫びながら、アルペカに向かって勢いよく投げ飛ばした
「「〜〜〜!?」」
ドーン!
二体のエーテリアスは勢いよくぶつかり合い、砂埃が舞い上がった
「……あいつとあのエーテリアス、子供と大人ぐらい体格差あるわよね?」
「すごい力……」
「これが法律違反の教育の力……」ザザー
「掟破りの修行って、なんかカッコイイな!」
「いや、普通に大問題でしょ……」
程なくして砂埃が晴れた
そうしてあらわになったのは、仰向けに倒れたアルペカの上に、これまた仰向けに倒れたサテュロスが重なる形で撃沈している姿だった
「まったく……空から落ちてきた女の子とぶっ飛ばされた味方は、その両腕でしっかりと抱きとめてあげるのがマナーだぜ? ま、この太陽系を吹き飛ばすほどの勢いだったから無理かもしれないが」
「そうだったんですか!?」
「嘘に決まってるでしょ……」
「マジか! 嘘だったのかよ……!?」
「ビリー、あんたまで……」
純粋な少年みたいな感性を持った奴らはさておき*9クロトは倒れているエーテリアスたちに近づいて
「オラッ!」
「……ッ!」
武器を無理やりに奪い取り、二体の腹部が重なり合うように足蹴りをして位置を調整した
そして
シュッ!
奪い取った鎌の柄の先端部分を手刀で尖らせ
「今一瞬お兄さんの手がブレた気が……」
「……!」(速すぎる手刀……私じゃなきゃ見逃しちゃうわね……)
「フンッ!」
グサッ!
「「〜〜〜!?!?!?」」
重なっているエーテリアスたちの腹部に向けて思いっきり地面ごと突き刺し、その場に縫いつけた
ティルヴィングは背骨を折られ再起不能。アルペカとサテュロスは地面に串刺しにされて動けない
それはつまり敵対していた全てのエーテリアスが行動不能ということであり
「WIPEOUT! ってな」
Sideクロト
「「「……」」」
ふぅ……なんとか無事に戦いを終える事ができたけど、まだ緊張が解けないな。ぶっちゃけ俺にとってはここからが本番だ。果たしてこの方法でトリシノを説得できるかどうか。
「……!」(今の状態のエーテリアス達なら僕でも倒せるはず……!)ゴクリ
予想通り"今の状態なら僕でも"みたいなこと考えてるな? はぁ……まったく、これじゃあ俺、お前を説得するしかなくなっちゃうよ……。
お前の未来のために。
シュッ!
俺は突き刺さった鎌の柄を手刀で切断、持ち手が短い鎌にして、トリシノに差し出した。
そして俺は
「お兄さん?」
困惑するトリシノをしっかりと見据えて
「トドメを刺したかったらそうすればいい」
と真剣な声で告げた。
「……へぇ」(なんか考えながら誓ってると思ったらそういうこと? 一文の得にもならないことなんて良くやるわね)
「ん? 自分ではトドメを刺さないのか?」
「ビリー、多分そういうことじゃないと思うよ」ザザー
「……」(あの串刺しになったエーテリアス達、まるでこの前見た旧時代のヒーロー映画の主人公みたいな状態ね。……金属の爪を出したり高い回復能力を持っていたら厄介だわ。警戒しておかなきゃ……)
「 なんだか分からないけど、アンビーが*10良くないことを考えてるのだけは伝わったよ……」
ハイそこ〜! 今シリアスな場面なんだから邪魔しないでね〜!
「……いいんですか? あ、もしかしてクロトさんは僕のためにこんな残虐なことを?」
トリシノは変わらずに真剣な雰囲気を醸し出している。
ふっ、シリアスを貫いているのは俺とお前だけだよ……。ありがとな。
けど本当にごめん。
「それは素だ」
「そうですか……」
トリシノはなんだかガッカリした顔をした。
ちゃうねん。
前世で培った死を否とする倫理観と、襲い来る命の危機への対処の狭間でできた折衷案こそがさっきやった痛みと拘束が主体の戦闘スタイルやねん。
おっと話が逸れたな。本題に戻ろう。
「コホン。まあそれは一旦置いておこう」
「それもそうですね」
俺は説得を再開した。
「話を戻すぞ。お前にトドメを譲ってもいい。ただし条件がある」
「条件、ですか?」
その条件とは
「ああ
全裸になれ」
全裸になることだった。
そしてこれは伏線回収だ。*11
掟破り(法律違反)
一話のうちに伏線を張って回収するのは誰がなんと言おうと超絶技巧なんだ。
次回ケッチャコ!